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2017年05月11日

ソボトカ内閣倒れず?(五月八日)




 最初に謝罪の言葉を口にして、辞表の提出ではなく、これからのことについて相談しに来ただけだとソボトカ首相は言った。ゼマン大統領はそれを聞いて、昨日の夜首相の秘書官から辞表の提出に来ると連絡があったんだぞと強調した上で、辞表の提出ではなく相談なんだったら記者たちの前にいる必要はねえやと、ソボトカ首相がまだしゃべろうとしているのを無視して、儀式の会場を後にしたのだった。

 ソボトカ首相が、ゼマン大統領に相談しようとしたのは、辞表を提出した場合に政府全体の辞表として捉えるのか、首相個人の辞表として捉えるのかを確認したかったからだという。首相が内閣総辞職の計画を発表したときに、ANOの閣僚達は辞任する理由がないから辞表を提出する気はないと言っていたけれども、チェコも議院内閣制を取っている以上は、首相が辞任したら、首相が指名した閣僚もみな自動的に辞任扱いになるんじゃないのか。少なくとも市民民主党のネチャス首相が政権を放り出したときには、ゼマン大統領も内閣総辞職として対応していたはずである。
 何だ、この茶番は? とすでにこの時点で思っていたのだが、翌五日の金曜日にはさらなる茶番が待っていた。ソボトカ首相が辞表の提出を撤回したのである。理由としては、ゼマン大統領が、「ブレスク」という日本の「夕刊フジ」みたいなのと組んでやっているインタビュー番組(見たことはないけれども多分ネット中継)で、首相が辞表を提出した場合には、首相個人の辞任として受け取り、他の閣僚は留任させると発表したことを挙げた。

 それで、火曜日の時点では、バビシュ財相に同情が集まる恐れがあるという理由で否定していたバビシュ財相の解任を大統領に提案することを明かした。チェコの法律上閣僚の任命権は大統領にあるため、首相が解任すると決めただけでは解任できないのである。ただ、大統領にあるのは任命の権利だけなので、首相の決定を大統領がひっくり返すことはないはずである。少なくとも今まではなかった。
 ソボトカ首相は、事態をできるだけ早く収拾するために、五月九日までに解任の手続きをするようにという日付入りで解任を求める書類を作成して大統領府に送付したらしい。それに対して、大統領側は、解任の決定をするのは大統領の権利であって、首相が手続きの締め切りを設定するのは間違っていると言い、その点についても検討が必要なので、決定は早くとも二週間後になると言い出した。今週末はリベレツ地方を訪問し、来週の半ばからは中国を訪問するため時間がないらしい。
 首相側は、次のように反論している。2014年のソボトカ内閣成立以来、これまで数度にわたって大臣の交代を行ってきたが、その際大統領に解任を求めて提出した書類には、この日までにという日付が入っていたが、問題にされたことは一度もない。それなのに、今回だけ問題にするのはおかしいのではないかと。

 大統領は、今度は、これまでは、解任要請の際に後任候補が決まっていたけれども、今回は後任の名前が挙がっていないから、バビシュ財相を解任した後、財相不在になる可能性がある。それが問題なのだとかなんとか言い出した。
 その結果、首相は、バビシュ財相の公認を推薦するようにANOに申し入れたようである。その際、経済の専門家であることとか、バビシュ財相の経営していたアグロフェルトに関係のない人物であることとか、細かな条件をつけていたようだ。マスコミの報道では、候補として現在事務次官を務めている女性の名前が挙がっているが、現時点では未確認情報の域を出ていない。

 今回の首相と大統領の確執は、どちらかと言うと、ゼマン大統領の分が悪いかなという感じではあるけれども、バビシュ財相も含めて、目くそ鼻くそを笑うレベルの争いという印象を与えることは否めない。ソボトカ首相が、バビシュ財相が財相であることが許せないと言うのなら、最初から解任の手続きを取っておけば、ここまで問題がこじれることはなかったのだ。選挙のことを考えで墓穴を掘ったわけだ。社会民主党もANOも、どちらもポピュリスト的であるという点では大差ないという所以である。

 だからといって、野党の市民民主党や、TOP09、共産党なんかが支持に値するかというとそんなこともない。これ以上を泥仕合を長引かせないように、下院の解散総選挙を求めてはいるものの、その時期をめぐって、それぞれに好き勝手なことを言って妥協点を見つける努力すらしているようには見えない。これで責任ある野党とか言われても笑うしなかない。
 七月八月の学校が夏休みに入る時期に選挙を行うのは無理だとかいう意味不明な理由で、共産党が六月末、市民民主党が九月初めの選挙を主張しているけれども、間を取って七月末の選挙で野党の間で合意を達成して、決して一枚岩ではない社会民主党の中から賛同者をつのって、与党の解散はしないという決定をひっくり返すぐらいのことはやってみせてほしいものだ。少なくとも合意を目指す姿勢だけでも見せてくれればと思うのだが、現実は自分たちの主張を声高に叫ぶだけで、既存政党への失望からバビシュ党であるANO支持に走った人々の支持を取り戻せるようには見えない。

 さて、大統領と首相の泥仕合は、すぐには終わりそうにない。それはチェコにとっては幸せなことではあるまい。外国人にとっても、最初のうちは笑ってみていられたが、すでにうんざりである。思い返せば、ゼマン大統領が始めて大統領選挙に出馬した2003年、国会で行なわれた投票の第一回投票で、社会民主党の一部の議員の裏切りがあったために、決選投票にも進めないという惨敗を喫して恥をさらしたのだった。ソボトカ首相も、当時反ゼマングループに属していたのだろうか。そうするとゼマン大統領にとっては、今回の嫌がらせは、復讐の意味も持っているのかもしれない。

 バビシュ財相に関しては、今年の二月まで所有していた新聞社のムラダー・フロンタの記者と会って、社会民主党の閣僚のスキャンダルを記事にする時期について話し合っている様子を録音したものが公表されるという新たな展開があった。誰が録音し誰が公開したのかも含めて、今後どうなるのかが見ものである。
5月8日23時30分。






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