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2017年08月20日

接頭辞の迷宮序(八月十七日)




 そういえば、最近、チェコ語をネタにした文章を書いていない。ただ完了態と不完了態の区別を完全に説明するのは難しいので、ちょっと違う話にさせてもらう。以下、多分チェコ語を知らない人には意味不明の文章になることが予想され、いやチェコ語ができる人にも意味不明になるかもしれないので、事前にお詫びをしておく。

 さて、この動詞の完了態と不完了態というのは、日本人がチェコ語を勉強し、ある程度文法事項を身につけた後でも、実際に使うときに悩まされる問題の一つである。完了態は日本語で動詞の現在形を使うような場面で使用し、不完了態は「ている」形を使うような場面で使用するといえば言えるけれども、日本語での使い分けもそれほど厳密なわけではないので、それをもとに外国語を使用するのは無理である。


 ただ、確実にしてはいけないことは、動詞「být」の未来を表す形と完了態の動詞を同時に使うことである。動作の完了を意識しつつ、その動作が完了するのがかなり先のことである場合に、ついつい完了態の未来形などという存在しない形を使ってしまっていたのだけど、最近は毎日チェコ語で生活しているおかげか間違えなくなっている。

 チェコ語の動詞には、完了態と不完了態がペアをなしているものが多く、両方まとめて覚えることが求められる。辞書なんかでも一括して掲示されているほどである。大抵は、「与える」という意味の「dát(完了態)」「dávat(不完了態)」のように形が似ているので、おぼえやすいことが多いのだが、中には「取る」という意味の「vzít(完了態)」「brát(不完了態)」なんていう「v」と「b」の発音の区別がつかない日本人に対する嫌がらせとも思えるような組み合わせもある。
 これなど完了態の「vzít」が、なかなか使えるようにならなかった。わかっちゃいるんだけど、とっさに出てこなかったんだよなあ。「vzít」が、一人称単数で「vezmu」になるなんて、反則だろう。まあ、「brát」も「beru」で原形をとどめていないという点では大差ないんだけどさ。

 この基本となる完了態と不完了態の組み合わせを覚えておくことは、実際に使うときには間違えることがあるにしても、非常に大切である。チェコ語では動詞に接頭辞を付けて微妙に異なる意味の新しい動詞を作り出すことが多いのだが、完了態か不完了態ともにつけることができ、元の動詞に基づいて完了態か不完了態かが決まるのである。
 簡単な例を挙げておけば、与えるに「p?e」を付けると「p?edat(完了態)」「p?edávat(不完了態)」ということになる。意味としてはどちらも「手渡す」ということになる。「p?evzít(完了態)」「p?ebrat(不完了態)」は逆に「受け取る」という意味になる。もちろん意味の範囲は日本語の動詞のそれとは微妙に異なるので、別の意味で使われることもあるわけだけど。

 それから、不完了態しかない動詞にも接頭辞はつけられる。一番よく例に挙げられるのが、「(歩いて)行く」という意味の「jít」であるが、接頭辞を付けて「p?ejít」にすると、「(道を反対側に)渡る」という意味の完了態の動詞が出来上がる。さらに、「jít」の部分を「chodit」が形を変えた「cházet」に代えて、「p?echázet」にすると不完了態の出来上がりである。
 外国人にとっては、接頭辞を付けた形の完了態、不完了態のほうが区別しやすい面もあるので、こちらから基になった動詞の完了態、不完了態を判別するという手もあるかもしれない。そして、同じ接頭辞が使われる動詞にはある程度共通の意味が追加されるので、接頭辞自体の意味を知っておくと、見たことのない新しい動詞でも、何とか意味が推測できることもある。大外れになることもあるし、使ってみたらおお笑いされることもあるんだけど、そういうのも語学の醍醐味ってやつである。あえて間違うことを楽しむ姿勢ってのは、語学には欠かせないと思うのである。

 本題の接頭辞の話には入れなかったけれども、以下続くと思う。
8月18日17時。





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