初めての祝日だからか、新聞にもちょっとした特集のような記事が出ていて、それによると、ヨーロッパでは、金曜日も月曜日も休みというところが多いようだ。意外なことに、スロバキア以上にカトリックの強いポーランドでは、金曜日が祝日になっていないらしい。それから、金曜日は休みになっているが、月曜日は祝日ではないという国もあって、これも意外だった。イースターだからと言って月曜日を休みにしなければいけないわけでもないのだ。
それで思い出したのが、日本においてもまれに見る愚策であった「ハッピーマンデー制度」である。名称からしてあれなこの制度も、月曜日にこだわらなければ少しはましだったのではなかろうか。金曜日を祝日にしても、政策の目的(これもどうかとは思うが)である三連休を増やすというのは実現できるのだから。
チェコで、「大きな金曜日」が祝日とされた理由は何なのだろうか。一つ思いついたのは、祝日の数を増やすこと自体が目的だったのではないかということだ。以前日系企業で通訳をしたときに、日本から来た人たちがぼやいていたのが、チェコの休日の少なさだ。しかも日本のように振り替え休日がないので、週末が祝日になると祝日が一日減ってしまう。イースターの月曜日は、唯一の確実に休日となる祝日だったのだ。それに金曜日を追加しようということだったのかもしれない。
施行初年度の今年は、サマータイムが始まる週末と重なったこともあって、非常にありがたい。金曜、土曜の休みでこれまでの疲れをある程度癒したところで、日曜日からサマータイムが始まり、次の月曜日まで仕事に行かずに体をサマータイムに慣らすことができる(ことを期待している)。エネルギー節約の面からもそれほど効果はなく、健康上害があるかもしれないといわれ始めたサマータイムが存続するなら、イースターの週末にサマータイムが始まるという制度に変えて欲しいものである。
ここで、チェコの祝日にどんなものがあるのか紹介しておこう。
まずは一月一日である。しかし、この日が祝日になっている理由は、新年の最初の日だからだけではない。1993年にチェコとスロバキアが、いわゆる「ビロード離婚」(最近は聞かなくなったなあ)をしてそれぞれ分離独立したのが、一月一日だったのだ。2000年からは、それを記念した祝日ということになっている。
次は、五月まで飛んで、五月一日。言わずと知れたメーデーで労働者の日ということになるのだろう。現在でも共産党や労働組合がプラハで全国集会を開いている。
その一週間後の五月八日も祝日である。各地に五月八日通りという名前の通りがあるのと同じで、第二次世界大戦のヨーロッパにおける戦争が終了したことを記念した日である。ドイツが降伏した日と言ってもいい。共産主義の時代には、ソ連の公式見解を受けて五月九日が、第二次世界大戦が終わった日として祝日になっていた。ソ連軍がプラハに侵攻して、チェコスロバキアが解放された日という意味あいもあったのかもしれない。
次の祝日は七月で、学校に通っている人たちにはまったくありがたくない祝日である。五日が九世紀に、ビザンチン帝国から大モラバ国のスラブ人にキリスト教と文字を伝えたツィリル(キリル)とメトデイの兄弟を記念した日で、六日はチェコの宗教改革者ヤン・フスが火刑に処された日として祝日に指定されている。
九月二十八日は、チェコの守護聖人である聖バーツラフが暗殺された日ということで祝日になっている。時々この日をチェコの独立記念日だという人がいるが、実際にはチェコの国体の日とでもいうべき日である。現在のチェコ共和国の独立記念日は、スロバキアと分離独立した一月一日だし、チェコスロバキア第一共和国が1918年に独立したのは、次の祝日となっている十月二十八日のことである。
十一月十七日は、ビロード革命のきっかけとなった学生達たちのデモが起こった日であることを記念して祝日とされている。最近国会では、この祝日の名前を「国際学生の日」に変えようという動きもあるらしいけれども、祝日でさえあれば名前などどうでもいい。ただ、理解できないのは、チェコだけで休みになる祝日の名称に「国際」という名前をつけようという言語感覚である。政治家や官僚なんてどこの国でもそんなものというところだろうか。
最後は冬至のお祭りを起源とするクリスマス関係の祝日で、十二月二十四日から二十六日の三日間が祝日になっている。ここも冬休みと重なるのでありがたみはあまりない。
ちなみにイースター関係では、イースター前の水曜日が「醜い水曜日」、木曜が「緑の木曜日」、土曜日が「白い土曜日」と呼ばれている。
3月26日13時30分。
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