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2018年08月21日

廿日目、あるいは簡単すぎるテスト〈LŠSS2018〉(八月十七日)





 テストは聴解10問×2、読解10問×2、文法問題20問×1、作文20点の合計80点満点、時間は90分。最初は聴解問題で、プシェロフのコメンスキー博物館の特別展示についてのニュースだった。正誤問題が5つに、正しい言葉に直す問題が5つ。悩んだのは、チェコスロバキア独立以来100年の展示だというのが正しいかどうか。内容から言えば正しいのは推測できたけれども、ニュースの中ではその点については触れられず1950年以降の街の様子について展示されていることが語られていた。この問題どっちも正解にしたとか先生は言っていたけど……。もう一つは博物館の名前をコメンスキー博物館にするか、ヤン・アーモス・コメンスキー博物館にするかで、二回目でコメンスキーしか使われていないことを確認した。一回しか聞かなくても問題のない内容であった。
 読解もさして難しいものはなく、最初間違いになっていたのも先生の祭典間違いだったし、文法問題も完了態と不完了態で一問だけ悩んで完了態を選んで間違えたけど、それは他がみんな不完了態だから一つぐらい完了態にしておこうというテスト慣れしたあざとい手段が失敗に終わったに過ぎない。この時点で残り時間は60分弱だっただろうか。


 三つのうち選んだのは、「人生で最も影響を受けた人」というテーマ。こういう作文、テーマをそのまま書くよりも、少し限定してやった方が書きやすい。ということで、チェコ語を勉強し続けている自分に最も影響を与えた人について書くことにして、黒田龍之助師にご登場願った。チェコ語を勉強し始めたのは別だが、あきらめずに続けることができたのは師の著書のおかげである。そんな話を書いたわけである。語数としてはちゃんと数えてはいないけれども、400は超えていたのではないかと思う。こんな文章100や200の言葉では絶対に書ききれない。繰り返しになるけど、上級になると時間さえ十分あれば語数は多いほうが書きやすくなるのである。

 テストが終わった後、サマースクールの事務局では映画「プペンド」を見ながら採点が終わるのを待つという計画を立てていたようだが、結局クラスのほとんどのメンバーとビールを飲みに行ってしまった。最初は映画を見に行くつもりで、シモナと二人でアリツィアとジョバンナの後ろをついて階段を下りたのだけど、二人が学校を出て寮のほうに向かったので、映画を見るなら上に行くはずだったということに気づいた。
 校舎の中に戻ったところで、ドイツ三人組とばったり出会い、今更映画見に行ってもしょうがないからビールを飲みに行こうとシモナが言いだしてみんなでリーグロフカに足を向けた。合言葉は「シモナに続け」である。久しぶりに昼から、いや午前中からビールをのんだ。他のクラスの人も何人か一緒に来ていたのかな。

 そこでアナとシモナの間に座ってあれこれ話をしたのだけど、アナがチェコ語を勉強し始めてたった二年しかたっていないという事実が判明して、シモナと二人で嘘だろと声を上げてしまった。スロバキア人のシモナがチェコ語を勉強するのは初めてで、一番上のクラスにいたのは腑に落ちないものはあってもよく理解できる。でもドイツ人のアナが、たった二年で、しかもチェコ語だけを集中的に勉強したことはないというのに一番上のクラスで問題なく勉強できていたのは、まじで「Ty vole」である。話を聞いてみると、チェコとの国境地帯の出身で子供の頃からチェコ側に家族の友人知人がいて、多少のチェコ語との接触があったらしいし、チェコ語の中に多いドイツ語起源の言葉が結構勉強の助けになったのだという。それでもやっぱり「setsakramenctsky」語学の才能のある人なんだろうなあ。
 語学の才能と言えば、イタリアのジョバンナはチェコ語以外にロシア語もできるようである。昔の日本のチェコ語学習者の多くと同じようにロシア語を身につけてからチェコ語の勉強という道をたどったのかもしれない。ただ、ジョバンナのチェコ語にロシア語の影響が現れたのは4週間の間に、1回か2回に過ぎないのである。この子も、また語学の才能にあふれた人なのだろう。非才の身としてはただただ羨むのみである。

 ビールを一杯だけ飲んで学校に戻る。校舎の前で採点を終わらせた先生はタバコを吸っていた。そこでみんな問題なく合格だったと知らされたけれども、正直うちのクラスにあの簡単なテストに合格しない人がいるとは想像すらできなかった。教室に戻って自分のテストを確認したのだが、全員90パーセント、下手すりゃ95パーセント以上の得点で合格。

 最高得点はシモナで、チェコ語の正字法についての本を賞品としてもらって大喜びしていた。ほとんどすべて理解できるスロバキア人には正しく書くのが一番大変らしい。二番手はフェルディナントで賞品は自家製のスリボビツェ。誰かが、多分ユスティナ(違ってたらごめん)が、準備よく人数分持ち込んでいたプラスチックのコップで乾杯。この時点で、この日の午後は使い物にならなくなることが確定した。

 その後、どうしても外せない用があるというジョバンナ以外の7人で昼食を取りに出かけ、サマースクール最後の一日が終わった。インガやフェルディナントたちは午後からホモウトの醸造所に出かける予定があったけれども、一週目に参加したこちらは、土曜日の修了式に出る以外は、もう何もすることがない。覚めてほしくない夢の中にいるような気分(レストランで誰かが使っていた表現)で家に帰って昼寝をしてしまった。
2018年8月20日14時15分。








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