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2018年08月28日

廿一日目、あるいは祭りの後の〈LŠSS2018〉(八月十八日)




 学校のすぐ近くで日本から来ている方とばったり会ったら、一人はハイヒールで苦労しながら石畳の上を歩いていた。これ以外はスニーカーしかないというから服と合わせるには仕方がないのだろうけど、大変そうだった。日本人は、特に体格が小さめの人は靴買うのも結構手間がかかるからなあと、自分の履いている靴が、こちらに着て最初に買った靴で、靴屋で勧められた子供物の靴だったことを思い出してしまった。あの時は、なんて小さい足なんだろうねえ、これじゃ大人物は無理だわと、にこやかに笑われたのだった。以来子供物の靴は買っていないけれども、女物の靴には何度か手を出す羽目に陥っていた。ジョギングシューズも男物のつもりで買って履いていたら、何年かたって箱に女物と書いてあるのに気づいたし……。まあ一目で女物とわかるデザインじゃないからいいんだけどね。

 話を戻そう。修了式はコンビクトの中にある礼拝堂で行われた。コンサートなどにも使用されるため、礼拝堂にはあまりそぐわない座り心地のいい椅子がしつらえられてあるのがありがたい。中に入るとうちのクラスからは同じ部屋に宿泊しているインガとシモナがすでに来ていた。その後ろの一番後の席に陣取る。次第に人が集まってきて、珍しく予定通りに開始された(と思う。時計忘れたんだった)。
 修了証の授与は最初は下のクラスから順番に行われているようだったので、うちのクラスはまとめて最後かと思っていたら、一つ下のクラスとごちゃまぜに名前が呼ばれた。なぜか一番最後に名前が呼ばれたのだけど、成績順ではありえないから同じグループ内のアルファベット順だったのだろうか。修了証と自分の写っていない集合写真、それに記念のチェコの食べ物詰め合わせをもらって席に戻る。受け取るときの礼のしかたとか、それぞれ個性があって、日本人は日本人だなあと思わされるところもあった。

 修了式が終わると別れの時間である。週の半ばぐらいから精神をむしばみ始めた喪失感は、修了式が終わっても収まることはなく、しばらくの間は高まり続けるに違いない。幸いなのは寮に住んでいないことで、これで他の学生達と一緒に寮に住んでいたら、一人、また一人とオロモウツを出ていくのを見送り、そして誰もいなくなったという喪失感で週末どころか何週間か使い物にならなかったに違いない。そう、ちょうど二回目、三回目のサマースクールの時のように。
 礼拝堂を出た所の廊下で、同級生たちと再会を約して、自分のメールアドレスを共同で使っているセズナムのアドレスに送ることを約してお別れ。他にも日本から来た方々や、ポーランドのルカーシュ、イタリアの先生、ドイツのポーランド人なんかのお世話になった人に声をかけて、コンビクトを後にした。コーヒー飲んでいかないかとか誘われはしたのだけど、ずるずると引き延ばすと寂寥感が高まるだけだし、ここは自分が先に姿を消すことで見送られる立場になるほうがいい。笑顔の中にさみしさを垣間見せる連中にじゃあなと手を挙げて、本当に本当のサマースクールの終わりである。

 まだもう少し、フェルディナントのリクエストでビールのCMを共用のメールアドレスに送りつけたり、チェコの映画やテレビドラマでチェコ語の勉強に役に立つものを薦めたりなんてことはするだろうけれども、一緒に同じ教室で勉強したあの濃密な時間は戻ってこない。土曜日の午後はそれで何もする気になれず、この記事を書くのも放置してしまった。多少復活したのは日曜日の午後のことで、途中まで書いてあった木曜日の記事に無理やりけりをつけて投稿した。これで一つの区切りがついたのか、月曜日になってあんなに進まなかった筆がやっと進むようになった。

 サマースクールの顛末で書いておくべきことと言えば、修了証に記されていたレベルがB2になっていたことだろうか。当初の話では、教科書はB2と書かれたものを使うけれども、内容のレベル、追加する教材から考えるとC1レベルになるから修了書はC1レベルの物になると言っていたはずなのだが、テスト簡単だったからなあ。あれでCレベルとか言われたら、ちょっと申し訳なくなってしまう。個人的にはレベルなんざどうでもいいことだったけど、気にする人もいたかな。気になるのは二週間で帰国したカロリーナとリュバの修了証のレベルがどうなっていたかだけど、いまさら考えても詮無きことである。
 祭りの後の寂しさは、いつになったら消えるのだろうか。
2018年8月21日12時35分。








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