現在の中央駅は旧市街を出てすぐのところにあって便利なのだが、拡張の余地がないのが嫌われているのか、駅の跡地を再開発してぼろもうけを狙っている連中がいるのか、駅の移転の話がくすぶり続けている。そのため、チェコ鉄道も、そのあとを受けて鉄道網と駅舎の管理をするようになった国営企業も、駅の回収になかなか手を出せないでいた。すぐに移転で廃止することになる駅舎や、ホームに改修の資金を投じる意味はあまりないのである。その結果、ブルノの駅はモラビアの中心都市の玄関口にはふさわしくないほどに老朽化していた。
さすがにこれ以上放置すると電車の安全な運行にも差しさわりが出るということだったのだろう。一昨年の夏だったかに大々的な改修工事を行ない、一時はブルノ行きの電車は中央駅ではなく、郊外の駅どまりで、そこから代替バスで中央駅まで乗客を運ぶということをやっていた。ブルノ発の電車も中央駅から郊外の駅まではバスだった。その情報が、チェコなので、十分に広報されておらず、大混乱を巻き起こしていたのは記憶に新しい。
この改修工事で移転の問題にはけりがついたのかと思っていたら、そんなこともなく、以後も延々と時間とお金をかけて検討が続いているようだ。移転するにしても、しないにしても、とっとと結論を出してくれんかねというのが、よそ者の考えである。個人的には今の駅は、スチューデント・エージェンシーのバスターミナルにも近くて便利なので、移転はしないほうがいいと思う。
さて、予断はさておき、選挙の結果である。ブルノもプラハと同様に、小さな政党、政治団体がたくさん候補者を立てている。その数は22、そのうち当選者を出したのは、6つの団体である。5つの政党がほぼ同じ数の議席を確保したプラハとは違い、ブルノでは上位2党と、下位4党の差が大きい。定数は55である。
ANO 18
市民民主党 14
キリスト教民主同盟 8
海賊党 6
社会民主党 5
オカムラ党 4
この結果が出てすぐは、上位2党が連立を組むものと予想された。2党あわせて32議席だから、過半数を獲得しているし、2党だけであれば、しかも比較的政策の方向性の似ているANOと市民民主党だから、いくつもの党を集めて細かいところまで条件を刷り合わせていくのに比べたらはるかに楽なはずである。事実、開票結果が出た直後のインタビューでは、ANOの市長候補ボクシャール氏も、市民民主党のバニュコバー氏も前向きな発言をしていたのである。気になったのは、どちらの党からだったかは覚えていないが、他の党も与党に入れてさらに大きな連立与党にしたいという声が聞こえていたことである。後の展開を考えると、市民民主党だったのかなあ。
それが、翌日になると、市民民主党の主導で、ANOを排除した市政府組織のための話し合いが始まり、現時点では市民民主党、キリスト教民主同盟、海賊党、社会民主党の4党で連立を組むことになりそうである。海賊党以外の3党は、現市長でもあるANOのボクシャール氏と連立を組むことで合意に達していたという情報もあって、ANO側からはひどい裏切りだという声が上がっている。
このANOからの批判に、バニュコバー氏は、正式に交渉をした結果の合意ではないのだから、裏切りには当たらないと主張すると同時に、選挙の結果から有権者のANOに市政を任せたくないという意志を感じたと語っているのだけど、ANOが第一党になっていることを考えると、強弁としか言いようがない。ここもクラドノと同じで、なんとしても市長になりたいというバニュコバー氏の野望から出た挙じゃなかろうか。
その後、交渉が完全にまとまって、バニュコバー氏が市長になることが決まったというニュースが流れてこないのは、今回の裏切りで、他の党が市民民主党を、市民民主党のバニュコバー氏を信用し切れていないからではないかと思う。ANOが海賊党に協力の要請をしたという話もあって、このまますんなり4党連立で決まりというわけには行かないようである。
ブルノ市政とは関係ないが、気になるのは、ANOのボクシャール氏が、ANOを左派政党として位置づけるような発言を繰り返していることで、中央でバビシュ氏がANOは左派政党ではないと強く主張しているのと対象的である。組織が大きくなり、地方組織も拡充されてきた結果、プラハの件もそうだが、中央と地方の齟齬が見え始めたと考えてもいいのだろうか。ANO自体に問題ありだったとしても、他党の様子を見ていると、しばらくはANOが第一党の時代が続きそうである。新しさで唯一対抗できそうな海賊党は、都市部だけでなく田舎にまで理解を広げるにはもう少し時間がかかりそうだし。
2018年10月14日14時10分。
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