先週の第一回の投票で当選が決まった選挙区は二つ。一つはキリスト教民主同盟の元フセティーン市長で現ズリーン地方知事のチュネク氏が君臨するフセティーン選挙区。市長時代にあれこれスキャンダルを起したこともあって全国的な人気はなく中央での評価も低いのだが、ズリーン地方では絶大な人気を誇っている。新興で地方組織が全国隅々まで万全とはいえないANOや海賊党など最初から候補者を立てなかったぐらいである。
二つ目が、今年の一月の大統領選挙で第二回目の投票に進出し、予想以上にゼマン大統領を追い詰めたドラホシュ氏が当選を決めたプラハの第4選挙区。大統領選挙と同じく無所属での出馬だと思っていたら、キリスト教民主同盟、緑の党、市長連合、TOP09の4党の共同候補者として擁立されたようだ。ドラホシュ氏が大統領選挙で大健闘した理由の一つは、特定の政党のひも付きではない無所属の候補だったことにあるはずなので、今回政党の色が付いたことが、今後の政治活動にどう影響するか見ものである。
二回目の投票に進んだ候補者の数は、ANOが10、市民民主党が10と上位2党が拮抗したが、市民民主党主導の連立候補2人を入れると、第一回投票では市民民主党が勝者だったといってもよさそうである。しかもANOの候補で一位で進出したのが一人しかいなかったのに対して、市民民主党の候補の多くは一位、もしくは僅差の二位で二回目の投票に進出したのである。二回目の投票では反ANO勢力が結集する可能性があることも考えると、ANOは1議席獲得できれば御の字で市民民主党が最多の議席を獲得するのは確実という状況になっていた。かつては二回目の投票で反市民民主党の動きがあったことを考えると時代は変わったものである。
二回目の投票の結果、勝者と呼ばれるのは予想通り市民民主党。二回戦に進んだ10の選挙区のうちの9選挙区で議席を獲得し、さらに市民民主党主導の連立候補も二人とも当選しているから、実質的には11議席獲得したことになる。改選前からすると5、ないし7議席増である。この結果を、市民民主党が一度失った有権者の支持を取り戻しつつあると考えるのは、投票率を考えるとまだまだ早いだろう。
ANOも予想通りたったの1議席の獲得に終わっているが、大きく議席を減らして敗者とみなされているのが、6年前の改選で13という半数近い議席を獲得していた社会民主党で、今回は共産党の候補との戦いとなったカルビナー選挙区の1議席しか獲得できなかった。二回戦に進出した候補者は5人いたのだけどね。共産党はカルビナーで社会民主党に敗れた結果、ビロード革命以降では初めて上院の議席を完全に失った。
新政党では、オカムラ党は議席を獲得どころか、二回戦に候補者を進めることさえできなかったが、海賊党はプラハで1議席獲得している。地域政党としては、オストラバの市議会選挙でANOに続いて第二党になって連立を組んだオストラバクという政治団体の候補者が、もちろんオストラバの選挙区で、ANOの候補を破って議席を獲得、より正確には前回獲得した議席を守っている。
改選後の上院全体の勢力は、社会民主党が13議席、市民民主党からの当選が12議席だが、他の政党の協力を得て当選させた候補を入れると16議席で第一党となる。第二党になりそうなのは、キリスト教民主同盟の11+4=15議席で、緑の党と共同で当選させた議員がいることを考えると、こちらが上院の第一党になる可能性もある。市長連合は7議席だが、相乗りで当選した議員が何人かいるし、ここも第一党になる可能性があるらしい。慣例から言ってこの三つのうちのどこかの党から上院議長が選出されることになる。一部ではドラホシュ氏の名前も挙がっているのだが、どうだろうか。
政権与党のANOは今回の1議席を加えて全7議席。社会民主党と合わせて、与党全体でたったの20議席ということになった。上院の選挙は、政党の人気よりも候補者の人気によって結果が左右されるところがあるから、無所属の議員や、地域政党、個人政党から出馬して当選する議員がかなりの数存在する。この政党に依存しすぎない姿が、上院の存在意義なのであろう。日本の参議院と同じで不要論が絶えないチェコの上院であるが、所属政党のしがらみのない無所属や地域政党所属の議員が今後も増えるようなら、存続させる意義はありそうだ。下院は、どうしても政党間の不毛な争いの場になりがちだから、不毛な争いに巻き込まれなければ上院の存在は貴重なものになる。
プラハの選挙区からはドラホシュ氏以外に、プラハ第2選挙区でヒルシュル氏、第12選挙区でフィシェル氏という二人の大統領選挙で健闘した候補者が出馬し、第一回投票は40パーセント以上の得票で一位で通過し、第二回投票でも圧倒的な差で当選を決めている。ドラホシュ氏もそうだが、大統領選挙で獲得した知名度と人気を活用した結果だといえよう。問題は、この二人に、キリスト教民主同盟の会派入りのうわさがあることで、上院の存在意義を考えるとやめたほうがいいと思うんだけどね。今後の決断次第で、次の大統領選挙に出る気があるのかわかるかもしれない。大統領選挙で健闘できたのは、無所属で政党臭が全くしなかったからだろうし。
なんてことを書いたのだけど、実は無所属の議員もどこかの会派に入らなければならないとかいう縛りがあるのかもしれない。その場合でも、大統領選挙で名をあげた三人が入るのは、次の大統領選挙のことを考えても、勢力の大きな政党の会派ではなく、無所属の議員が集まって作る会派であるべきだとは思う。
あれ、また無駄に長くなってしまった。気になる選挙区の結果はまた明日。
2018年10月14日17時15分。
【このカテゴリーの最新記事】
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image