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2021年02月04日

もうめちゃくちゃ(二月朔日)



 バビシュ政権の迷走が止まらない。長官のフリニチカを、スキャンダルがあったものの留任させた新設のスポーツ庁だが、なぜか二人の副長官が解任された。新たに任じられたのは二人とも女性だったが、女性登用という意図があるようでもない。そもそも、チェコは選挙で選出される国会議員や、その議員の中から選ばれることの多い大臣は女性の割合が低いが、省庁の高官には女性はかなり多いのである。
 野党側はこの副長官の交代に関して、説明を求めているが、政府側は具体的な説明をしていない。野党側から辞任、もしくは解任を強く求められているフリニチカの立場を強化するための人事異動なのか、フリニチカを監視させるためなのかはわからないが、長官の交代を選挙が半年後に近づく中、混乱をもたらすだけだとして拒否したのに、副長官は交代させるというのは、意味が分からない。

 それから、最近迷走が止まらなくなっている厚生大臣にもまた交代のうわさが流れている。しかも後任は、バビシュ首相が名目上兼任して、実務はプリムラ一ヵ月厚生大臣にやらせるというのだから、さらに意味不明である。それなら、最初から解任、もしくは辞任の強要はせずに、対策が終了した時点で解任すると約束でもして、無理やり留任させたほうがはるかにましだった。
 ブラトニー厚生大臣の迷走ぶりが酷いのは確かである。感染症対策チームの部下たちが次々に辞めていって機能しなくなりつつあるようだけど、やめた人の話では、パートタイム契約で始めたけど、それでできる仕事じゃなかったとか、仕事を始めてから辞めるまで大臣とほとんど話す機会がなかったとか、医者としてはともかく、組織の運営者としてはあまり優秀ではないことが露呈した。状況が状況なら問題にはならなかったのかもしれないけど。

 大臣が批判されている理由の一つは、スーパーマーケットなどの営業は許可されているにもかかわらず、生活必需品とみなされない一部の商品が販売禁止になっていることと関連する。その一部の商品の販売禁止自体が意味不明なのだが、その一部の商品の指定に関しても、子供向けの服や靴は追加で販売許可にするなど大臣自らが混乱を広げている。
 子供向けというのがまたあいまいで、対象は日本の中学生ぐらいまでになるのだろうか。ただそんな子供たちの中には、うらやましいことに体格のいい子供もいて、普通の子供服や子供用の靴では小さすぎるという子供もいる。そんな大きな子供を持つ親からの批判を受けたブラトニー大臣は、子供向けでなくても、このサイズまでなら販売してもいいとか言い出した。
 これには、ブルノの病院の元同僚たちも、お前が口を出すことではないだろうと批判の声を上げた。仲間褒めとか、同僚のかばい合いの多いチェコでは珍しいことだが、さすがに黙って見ていられなくなったものと見える。専門家の意見を聞く前に、条件反射的に思いついたことを口にしているのではないかという疑いもあって、しばしばバビシュ首相が厚生大臣の言うことは信じないでくれという、信じられない発言をすることもあるほどである。

 一月の下旬にも、ファイザー社がワクチンの供給を一時的に減らすと言い出した際に、厚生省から各地のワクチン接種期間に、ワクチンの新規の接種、予約の受付を停止するようにという指示が出されたらしいのだが、厚生大臣は即座にその必要はないと否定した。その厚生大臣の発言に対して、またバビシュ首相があれこれいちゃもんを付けていたので、実際どういうことだったのかさっぱり理解できなかった。
 その結果、地方によって対応が変わり、予約されたワクチンの接種を取り消したところもあれば、供給量の減少を見込んで最初から予約の数を減らしていて予定異通りに接種を進めているところもあるらしい。相変わらず、チェコは政治家や役人の無能を現場の人間が何とかごまかしているのである。現場がそこまで優秀ではないと、政治の混乱が直接反映されて、どうしようもないことになってしまう。

 政治家の仕事ってのは、細かい規制の対象を云々することではなくて、大枠で何を優先するのか、優先順位を決めていくことだと思うのだけど、チェコの場合にはあまりに具体的なことにこだわりすぎて何を優先しようとしているのかさっぱりわからない。日本もマスゴミの報道に振り回されてわけのわからないことになっているようだけど。
 チェコで唯一、評価できるのは、教育、特に義務教育の学校での授業を復活させようと奮闘している文部省ぐらいである。チェコ社会でも今のままでは現在の小中学生、特に小学校の低学年が教育の面で失われた世代になるのではないという危惧を感じている人が多いのを追い風に、命が大事とか健康が大事という耳ざわりのいい言い訳にひるむことなく、学校での教育の再開を優先させようとさまざまな提案をして厚生省側と交渉している。やっぱ、現状は学問する権利が侵害されているわけだから、非常事態宣言が出ているとはいっても、文部省、まっとうな教育関係者としては見逃せねえよなあ。
2021年2月2日24時。










2021年01月29日

だからスポーツ選手崩れは(正月廿六日)



 ミラン・フリニチカというと、元アイスホッケー選手で、チェコリーグだけでなくアメリカのNHLでも活躍し、チェコ代表としては長野オリンピックの優勝メンバーの一人で、世界選手権でも三度の優勝を誇っている。数あるチェコのゴールキーパーの中でも、有数の実績を誇るのだが、現役引退後、なぜか政治の世界に足を踏み入れ、2017年の下院の総選挙でANOから出馬して当選し、下院議員に就任した。

 同じ選挙では、スキーのジャンプのヤンダも市民民主党から出馬して当選しているし、アイスホッケー出身なら、すでに2000年代にシュレーグルが社会民主党から下院議員に選出されれているから、プロのスポーツ選手が下院議員になるのは、初めてというわけではない。シュレーグルはその後、政界の恩師であるパロウベク元首相と共に社会民主党に反旗を翻して、独自政党の設立に参加したり、その新政党を離れて社会民主党に戻ったりとわけのわからないことをしている。
 フリニチカが、ヤンダ、シュレーグルと違うところがあるとすれば、それは下院議員をつとめながら、バビシュ政権によって新設されたスポーツ庁とでもいうべき役所の長官に就任して、積極的に活動をしているところだ。規制、規制でにっちもさっちもいかなくなっているスポーツ界を代表して、政府と交渉して規制緩和を求めたり、最近はチェコ代表レベルのスポーツ選手に優先的にワクチン接種を求めるような発言もしていた。それで、スポーツ界では一定の支持を集めているのだが、人気スポーツの調査で、サッカーが下位に沈むという意味不明なアンケート結果を発表して物議をかもすなんてこともあった。

 そのフリニチカが、スポーツ選手出身の政治家らしく、お馬鹿なスキャンダルを起した。非常事態宣言下で営業が禁止されているホテルで行われた秘密のパーティーに参加しているところをゴシップ紙「ブレスク」に撮影されてしまったのだ。去年の秋に当時のプリムラ厚生大臣の辞任につながるスキャンダルも「ブレスク」紙上に発表された写真だった。普段は芸能人のあることないこと書き散らすメディアだが、たまに政治家や官僚のスキャンダルを報道して首を取ることがある。現在は芸能活動も規制されていて標的にかけるから政治家が重点的に狙われているようである。
 秘密のパーティーは北ボヘミアのテプリツェで当地の政界に大きな影響力を持つ実業家の誕生パーティーで、元首相のパロウベク、元下院議員のシュレーグルも参加していたらしい。フリニチカ自身は語っていないが、スポーツ選手的なつながりで先輩のシュレーグルに誘われて、ことの是非も考えずに、のこのこ出かけていったというのが真相じゃないかと見ている。

 元首相のパロウベクにいたっては、営業していないはずのホテルに宿泊したという情報もあるのだが、シュレーグルと二人で、パーティーではなく仕事上の交渉に出向いたのだという見苦しい言い訳を重ねている。シュレーグルも当選したときは、政治の素人であることを生かして面白いことをしてくれるかもと期待したのだが、すぐに完全にパロウベクに取り込まれて、古いタイプの政治家に成り下がってしまっていた。
 それに対してフリニチカは、下院の会議に出席して、「これが自分の最初の過ちではないし、最後の過ちでもなく、今後も間違え続けていくだろう」と語り、今回犯した過ちは言い訳のきかないもので、その責任を取って辞任することを他の議員の前で発表するために会議に出席したと語って辞任した。辞任の弁としては悪くない印象を与えたけど、アドバイザーが着いているんだろうなあ。

 その一方で、スポーツ庁の長官に関しては、スポーツ界の反応を見たいとして辞任を拒否している。バビシュ首相もフリニチカを強く批判して、最初は長官の職も解任するとか、人人させるとか言っていたのだが、前言を翻して選挙も近いこの時期に長官が交代するとスポーツ界に混乱を巻き起こすとして解任はしないと言い出した。
 スポーツ界の反応としては、同じく下院議員のヤンダが痛烈に批判して辞任を求めているのに対して、アイスホッケー協会や、ホッケー界の英雄ヤーグルはフリニチカ支持を表明している。サッカー界では協会はフリニチカ支持で、スパルタとスラビアは反フリニチカと態度が分かれている。

 フリニチカがこの秋の選挙で再び議員の座を目指すのかどうかは知らないが、せっかくスポーツ界から政治の世界に足を踏み入れて、スポーツと関る要職についてスポーツ界の代弁をしているのだから、長官の職は継続してもいいと思う。えらそうに批判している政治家たちの多くだって、これまであれこれ問題を起こしてきていながら、国会議員の職にしがみついているのだから。
2021年1月27日23時。










2021年01月26日

国会のお仕事(正月廿三日)



 現在のチェコの国会は、非常事態宣言を延長するかどうかとか、予算案とかを、延々審議して採取的には共産党に譲歩して支持を引き出して、政府案が通るというのが通例になっていて、与党のANOと社会民主党の意見が分裂したとき以外は、多少議論が白熱して、たまには乱闘騒ぎになることはあっても、予定調和な結論に終わることが多い印象である。
 非常事態宣言によって、国会での審議も簡略化されている部分もあるらしいし、普段以上に、政府案は通りやすく、野党案は否決されやすくなっている。だからこそ、野党側も非常事態宣言の必要性は認めながら、政府が延長を求めるたびに制限を課そうとして抵抗するのである。チェコの政治家は非常事態宣言の持つ意味がわかっていて、与党はそれを悪用しようとし、野党はそれを防ごうとしているのである。

 翻って日本の状況を見ると、野党が非常事態宣言=緊急事態宣言を求めて騒ぐという異常な事態になっていたようだ。報道を通してみる限り、マスコミも含めて、宣言さえ出れば人出が減って感染の拡大も収まると考えていたとしか思えず、その不見識ぶりには頭を抱えるしかない。非常事態宣言は、簡単に言えば憲法の効力を部分的に停止するためのもので、これがあるから本来は憲法で認められている国民の権利、移動の自由、学問の自由などを制限することができるのである。
 だから緊急事態宣言だけを出しても、具体的な国民の自由を制限する法令を出さなければ状況が変わるはずなどないのである。それに例の学術会議の問題で学問の自由が云々と叫んでいた連中が緊急事態宣言を求めるというのは矛盾でしかないことに気づけないのだろうか。小中高校を休校に追い込み。大学の対面授業を禁止するという明らかな学問の自由の侵害を可能にするのが緊急事態宣言なのである。学問の自由がそんなに大切なら、感染症如きを原因に簡単に侵害を許すなよ。チェコでさえ、日本よりもはるかにひどい感染状況の中でも、文部省はあらゆる手を使って学校での授業の再開を求めて厚生省と交渉しているのにさ。
 春の学校の閉鎖自体にもぎりぎりまで抵抗したし、勉強する習慣をつけなければいけない小学校の1、2年生に関しては、犬システムの危険度が5の段階でも教室での授業を再開させた。受験を控えている学年、つまり最終学年の授業も近いうちに再開される予定である。大学に関してはそれぞれの大学にある程度任されているけど、残念ながらほとんどすべての大学がオンラインでの授業になっている。ただ、非常事態宣言を利用してオンラインでの課程が認可されていない大学でも、オンライン授業、試験を可能にする法律を通している。

 話を戻そう。予定調和なチェコの国会で、問題になっている法案がある。すでに可決されたのか、審議中なのか、よくわからないのだけど、非常事態宣言を利用してドサクサまぎれに略式の審議で可決しようとしているのは間違いなさそうだ。このチェコの農業、食品産業を守るためと称する法案は、別名アグロフェルト支援法案とも呼ばれているが、国内のスーパーマーケットなどの食品販売店に、販売する食品の50パーセント以上をチェコ原産のものにすることを義務付けるもので、将来的には75パーセントにまで拡大することを計画しているという。
 加盟国間の移動の自由とか、単一市場とかいうEUの理念の根幹をなす部分に真っ向からけんかを売っているようなこの法案を提出したのはオカムラ党らしい。反EUを党是とするだけに、EUの理念に反するような法案を出しても不思議はないのだが、同時にバビシュ首相の経営していた(名目上は手は離れていることになっている)アグロフェルト社が農業、食品産業を中心にしていることから、EUの助成金がもらえなくなりそうなアグロフェルト社を救済するための法案じゃないかとも疑われているのである。

 同時に、チェコ原産というのをどのように規定するのかも、どのようにチェックするのかも判然としない法案で、EUからの禁止命令が出なかったとしても実行不能の法律になるのは街がいないと思われている。EUの規定では、コーヒーや紅茶などチェコでは作れないものに限らず、原料をチェコに持ち込んでパッケージングしただけのものでも、チェコ産と表示できることになっているから、いくらでも詐欺的な手法でチェコ産の食品の割合を増やせそうである。
 農業団体などでもチェコの農業を支援したいというのはありがたいけど、ほかにやりようがあるだろうという批判が出ている。これまでも農務省などの主導でさまざまなチェコ産であることを示す表示の使用が導入されたけど、どれもこれも運用が中途半端なのと、種類が多すぎるのとで、あまり成果は挙がっていないようである。この法律が成立しても同じことになりそうな気がする。

 個人的には、食品よりも、服とか、靴なんかにチェコで縫製されたという表示を、製品の中を見なくてもわかるような表示を義務付けてほしいとは思う。同じような製品だったらチェコものを選びたいし、バテャのオンラインショップのように表示されていると非常に嬉しい。チェコの産業を支援したいという気持ちはないわけではないのだ。
2021年1月24日22時30分









2021年01月25日

国会で乱闘?(正月廿二日)



 昨日の木曜日のことだったと記憶するが、うちに帰ったら7時のニュースが始まるところだった。うちのが、国会で喧嘩したのがニュースで流れるはずだと、料理の手を止めてテレビの前に立っていた。大乱闘でも起こったのかと思って、ちょっと期待してニュースが始まるのを見ていたのだが、最初のニュースではなかった。

 二つ目か三つ目のニュースとして流された映像を見て、落胆することになった。喧嘩とは言ってもマイクの奪い合い程度で、殴り合いをしたわけでも流血沙汰になったわけでもなかったのだ。これなら以前、医師会の総会かなんかで、元医師会長で当時厚生大臣たっだダビット・ラートが、演説中の会長(違うかも)の頭を後ろから引っぱたいて、「俺は臆病者じゃない」とか喚いていたののほうがずっと衝撃的だった。
 今回のは、下院での審議の際に起こったことだというので話題になったのだろうけれども、その昔の日本の、ヤクザまがいというか、ほぼヤクザそのものの衆議院議員たちが起していた乱闘のことを知っていると大したことねえよなと思ってしまう。やるならやるでもう少し派手にやらないと、見世物にもなりゃしない。ラートの件はビデオが拡散され世界中に恥をさらすことになったのだが、今回の件は、それほど世界の注目は集めないのではないかと想像する。

 ところで、何について喧嘩になるまで熱心に議論していたのかというと、さっぱりわからなかった。恐らく大して重要なことではなかったのだろう。だからニュースの冒頭で扱われることもなかったのだ。政治家どもが貴重なはずの国会の審議の時間を、意味不明な戯言の繰り返しで無駄氏にしているという点では日本もチェコも大差はない。

 念のためにうちのに聞いてみたところ、どうもオカムラ党の内紛、オストラバを中心とするモラビアシレジア地方で選出された国会議員たちが除名された件とかかわりがありそうだという印象を受けた。先ず、オカムラ党の国会議員が演壇に立って、マスクをしないまま演説をしていたのがすべての発端だったようだ。国会での審議だというのにTシャツで登壇したというのもあれだけど、政府の規制に反対しての演説だったのかな。
 それに対して、TOP09の議員が、この非常事態宣言下でマスクをしないで演説するのはエチケットに反するのではないかとやったらしい。個人的には、日本人が花粉症を防ぐためにマスクをしたり、咳がちの風邪をひいたときに他人にうつさないようにマスクをしたりするのを笑っていたヨーロッパの連中がこんなことを言うのには反感を持ってしまうのだけど、発言事態はまあ間違いではない。

 そこに、なぜかオカムラ党を出て無所属になっているボルニーという議員が出てきて、マスクをしないでわけのわからないことを言い出した。よくわからないのはオカムラ党を追い出されたはずなのに、オカムラ党の議員と同じTシャツを着ていたことである。こっちはその上に背広を羽織っていたから少しはましなのかな。下はジーンズだったけど。
 何でも自分は人民によって選出された議員だから自分が正しいと思うことをしていいはずだとかゼマン大統領を思わせるようなことを言ってマスクをしないことを正当化していた。それに誰かに喧嘩を売るような発言をしていたようにも聞こえたのだけどよくわからない。こんな議員が出ると人ではなく党を選ぶ比例代表制ってのは欠陥だらけのシステムだとしか思えない。最低でも党を離れたら議席も失う制度にしないと、選挙の意味がなくなる気がする。

 それはともかく、審議の場にふさわしくない発言だというので、議長役を務めていた下院の副議長が演壇のマイクのスイッチを切ると、議長席に押しかけてそこのマイクで話そうとして押し合いになり副議長の援軍に駆けつけた議員たちとちょっとばかり喧嘩っぽいことになっただけである。体格のいいボルニー氏を押しのけるのは大変で、椅子で頭をぶん殴ろうかと思ったとか言っている議員もいるようだが、やればよかったのにとしか思えない。どうせたいした仕事していないんだから、せめて有権者を楽しませろよという話である。
2021年1月23日22時30分










2021年01月01日

規制強化を巡る喜劇(十二月廿九日)



 犬システムによる危険度評価が、4を越えて最悪の状態とされる5に入ってからも、規制レベルは4に強化しただけで、しかも4であれば禁止されるはずの、生活必需品以外を販売する店の営業は継続されていたのだが、クリスマス商戦を終えた日曜日から、規制レベルを5にあげると共に、これらの小売業者の営業も禁止されることになった。

 一部では、新規の感染者が増え続け、入院患者や集中治療室に入る患者の数も増えている中、なかなか規制強化に踏み切らず、強化した後も犬システムには存在しない例外を認めたことを批判する向きもあるが、一方では規制を強化してレストランの営業を再度禁止したことを強く批判する声もあるわけで、規制強化を先送りしていたこと自体は悪いとは思わない。
 問題なのは、規制強化のやり方が恣意的で場当たり的に見えることだ。これでは何のために犬システムを導入したのかわからない。その意味では、規制レベルを4にあげた際に、レストランなどの飲食店を例外の対象からはずし、営業禁止、否、持ち帰り窓口だけの営業許可にしたのも、ちぐはぐな感じでいただけない。

 せっかく、犬システムを基に規制緩和をすることができたのだから、その時点で、クリスマスまでは、状況が悪化しても、商業を守るために、小売店やレストランの閉鎖など規制の再強化はしないと決定しておけばよかったのだ。その上で、犬システムの危険評価が悪化しないように国民に協力を求めれば、ここまでの混乱は起こらなかったのではないかと思う。厚生大臣が何を主張しようと、今の政府では、クリスマス前に規制を強化して小売店の営業を禁止するなんて決定ができたはずがないのだから、最初から規制を強化しないことを決定しておいたほうがましである。
 クリスマスの後には、バーゲンセールが始まるわけだが、クリスマス前のプレゼントを求める客の購買量にははるかに及ばないはずである。だから、この時期に生活必需品を販売する店以外の営業を禁止しても、クリスマス前に営業禁止にするほどの影響は与えない。大晦日や元日がもともと営業しないところが多いことを考えると、最初からこの時期は規制を強化して、営業禁止の対象を最大にすることを決めておけば、混乱も少なかっただろうに、散々引っ張った挙句に、クリスマス直前になって規制強化を決めるのだから話にならない。

 今回のクリスマス開けの規制強化では、さらに意味不明な決定がなされた。これまで、スーパーマーケットなどの生活必需品を販売するお店では、入店人数以外の規制は課されていなかったのだが、生活必需品に指定されるもの以外の販売が禁止された。つまり、大きなスーパーで扱っているさまざまな商品のうち、服や、本などの販売が禁止されたのである。これは衣料品店や書店などから同じ商品を扱っているのに、片方だけ販売禁止というのは不公平だという批判に引きずられての決定だろうが、政府の方針の一貫性のなさ、いや方針のなさの反映にしか見えない。
 何を生活必需品とするのかの指定にも大きな混乱があり客が店ともめたりもしているようだし、規制が強化してから出かけたビラでは、入店制限にかかるほどの人は入っていなかったようだが、場所によっては人間距離2メートルなんて完全に無視して人がたくさんたむろしていた。みんな意味不明な規制の緩和と強化の繰り返しにうんざりして、どんな規制が現在有効なのか気にしなくなっているのだろう。規制に関する発表のやり方がまともなら、ここまでひどいことにはなっていないと思うのだけど、チェコの政府も日本と同じでひどいからなあ。

 EUで承認されたワクチンの接種も始まったけれども、ここでも混乱が見られるし、しばらくはこの感染状況が改善されそうもない。規制があってもなくても、半ば引きこもり的な生活を送っている人間には、生活上の変化はあまりないのだけど、精神的にはやはりゆとりがなくなっているのを感じる。日本だと自殺する人も増えているんだろうなあなんてことを考えてしまう。
 クリスマス開けに客が減ったら、十月末に行きそびれたおっちゃんの店に寄って、何か買うものがないか探してみるつもりだったのだけど、二月(三月かも)に延期である。それまでに閉店なんてことにならないことを祈ろう。
2020年12月30日11時。










2020年12月07日

バビシュ首相からのクリスマスプレゼント(十二月四日)



 スロバキアでは十月の末から十一月の半ばにかけて、二度の、場所によっては三度の週末を使って、感染の疑いの有無に関らず全国民を対象にした、希望者を対象にするという名目での半ば強制的な大規模検査が行われた。その結果、少なくとも一時的には新規感染者の数を減らすことができ、批判にさらされていたマトビッチ首相は一息ついたようである。

 その成功? に触発されたのか、オーストリアでもウィーンや、チロル地方などで、希望者を対象にした大規模検査が始まったらしい。この二つの大規模検査には、これまでの精度は高いけれども結果が出るまでに時間のかかる検査の変わりに、精度が低い代わりに十分ほどで結果の出るアンチゲン(抗原?)と呼ばれる方法が使われている。オーストリアではこの簡易検査で要請になった人に関しては、これまでの方法で再検査をして本当に陽性かどうか確認することにしているという。
 チェコでも最近になって、このアンチゲン検査の導入が進められていて、各地の老人ホームなどでは、職員と入居者の検査が義務付けられたという。ただし、政府が各施設に配布するはずだった検査用のキットが期日までに届かず、対応に苦慮しているなんてニュースも流れていたのは、チェコのチェコたる所以である。この老人ホームでの検査が、一回きりなのか、繰り返し行なう予定なのかは知らない。

 それに続いてバビシュ首相が、希望者全員を対象に無料でアンチゲン検査が行えるようにすると言い出した。その理由が、クリスマスに普段は離れて暮らしている家族が安心して会えるようにというものだった。日本のお正月やお盆のように家族が集まって過ごすのがチェコのクリスマスなので、それまでに陰性であることを確認できれば、自分が感染する恐れも、感染させる恐れもなく家族と会えるだろうと考えたらしい。
 当然、専門家の間からは、検査の精度を問題にする声はもちろん、検査から時間が空けば、陰性が陰性であり続ける可能性が下がることを指摘する声が上がっている。実際チェコテレビの科学担当のアナウンサーの実体験によれば、僅か数時間の差で、陰性が陽性になったらしい。この人は専門家ではないけれども、知識のある人だったから、一度の陰性で大喜びをせずに、念のために時間を置いて検査を受けて、陽性が確認できたが、一般の人だと陰性の結果が出たら、これまでの慎重な生活態度を変えかねない。

 検査の数を増やすことで流行の拡大を押さえ込みたいのなら、一回の大規模検査で終わるのではなく、何度も繰り返さなければならないのは、サッカーリーグの感染対策を見れば明らかだとおもうのだけどねえ。毎週一回検査を実施していてさえ、集団感染が発生して隔離に追い込まれるチームがいくつも出てしまうのである。ヨーロッパリーグに出場しているリベレツなんて、週に二回検査を行っていたはずなのに、一度に十人以上の選手が陽性判定を受けて欠場を余儀なくされている。
 だから、希望者全員を対象に検査を行ったとしても、気休めにしかならないと思うのだけど、今の状況では気休めさえもありがたいと考えるのだろうか。木曜日からの規制緩和で、感染状況が再び悪化することが予想されているから、自分だけでも陰性であることを確認したいという人も多いのかもしれない。とまれ、先ずは、学校の先生たちを対象に希望すれば無料で検査が受けられるようになった。そして18日からは全国民を対象に無料で検査が提供される予定だという。最近評価だけでなく人気も落としつつあるバビシュ首相から国民へのクリスマスプレゼントというところか。チェコ人じゃないからもらえるかどうかわからないけど、正直もらいたいとは思わんなあ。

 スロバキアでは二回の大規模検査で減った感染者の数が、また増加傾向に転じているらしい。それでクリスマス前にもう一度とマトビッチ首相が言い出したようだが、検査の実務を担当した地方公共団体からはやめてくれという悲鳴が上がっている。検査を繰り返すことで感染を押さえ込むことができるのはその通りでも、それが経済的負担、人的負担に見合うのかどうかはまた別問題である。
2020年12月5日20時。










2020年12月02日

連立解消寸前(十一月廿九日)



 バビシュ首相のANOとハマーチェク内務大臣が党首を務める社会民主党の連立政権は、その成立以来、両党の意見の対立で何度も解消の危機を迎えてきた。社会民主党内の閣僚ではない有力政治家が下野を求めて声を上げたのも一度や二度のことではない。そのたびに、どちらかというと社会民主党側が妥協することで連立が継続してきた。
 春の緊急事態宣言が出ていたころも、当初の先がまったく見えなかった最悪の頃は、政府全体が一致して行動をしている印象がなくはなかったが、感染者の数が減り始め、規制緩和が日程に上るころになると、主導権をどちらが握るかの争いが始まり、例によってメディアやSNSを通じて、それぞれが見解を発表して、意見が一致していないことを衆目にさらしていた。

 そしてその対立は、最も重要な来年度予算の編成とその国会での審議でも、最悪の形で現れた。チェコの政界では、かつて市民民主党が政権をになっていた時代に導入された所得税の制度を改正することが懸案となっていた。これは、給与所得に直接税率をかけるというものではなく、所得額を元になんだからよくわからない「スーパー・フルバー・ムズダ」というのを算出して、それに税率をかけて税額を決定するというもので、市民民主党さえ廃止を主張していた。
 バビシュ政権もこの税制の改正を政策の一つとしていたのだが、ここまで実現できていなかった。それを現在の経済危機の状況で、経済的な対策の一環として実現しようというところまでは、政府内で一致していたのだが、改正後の税率に関してANOと社会民主党の意見が合わず対立していた。ANOは給与所得に対して一律15パーセントを主張し、社会民主党はそれでは国家の収入が減りすぎるとして19パーセントを主張していた。どちらも大幅な減税になるという点では変わりはない。

 そして、与党二党は、事前の話し合いで合意に達するという努力を放棄し、そのまま予算案を下院に提出し、それぞれが修正案を同時に提出するという、ありえないだろうと言いたくなるような挙に出た。そして、市民民主党とオカムラ党の支持を得た15パーセントの修正案が可決され、社会民主党側の反発を呼んだ。市民民主党は税率15パーセントというのはもともと自分たちの案だから賛成するのは当然だといい、社会民主党は市民民主党の案だから賛成できないんだとか言っていた。
 同時に、与党が対立して混乱していたせいで、海賊党の提案した控除案などのいくつかの減税案が可決された結果、来年度の税収が1300億コルナほど減ると試算されている。ただでさえ大きな赤字で予算が組まれている上に、これでは大変なことになると、バビシュ首相とシレロバー蔵相は、次に予算案を審議する上院に対して、下院で可決された予算案をそのまま承認しないように求めている。何やってんだかである。

 社会民主党だけでなく、ANOと市民民主党が可決させた15パーセントという税率に反対している人たちが、一番問題にしているのは、地方公共団体の収入が激減することである。チェコでは、住民の支払った所得税の一部が地方公共団体に分け与えられることになっていて、それが収入の大半を占めるのである。当然、すでに来年度の予算を、今年の税制を基に立てているところが多く、この時期になって収入が大きく減るような減税をされるのは、迷惑以外の何物でもなかろう。
 今回の予算案と共に可決された減税案が実施されれば、給与の額は変わらなくても、手取りの額は毎月数千コルナ増えるらしいから、個人的にはありがたいと思わなくもないけれども、その程度の額で、ギリシャのように国が破産なんてことになったら割に合わない。バビシュ政権の悪いところは、極端に走りがちなところである。現実的な線で考えたら少しの減税でも喜ばれたと思うのだけどなあ。

 来週からの規制緩和についてもANOと社会民主党は対立していて、緩和を進めたがるANOの閣僚に対して、ハマーチェク内務大臣が反対しているようである。結局数の論理で、ANOの主張する規制緩和が行われることになった。ただし月曜日からではなく、木曜日からカテゴリー3の規制に切り替わるらしい。つまり、食料品や薬など生活必需品以外を販売する店も、レストランなどの飲食店も規制はあるものの営業が再開されるのである。
2020年11月30日16時。









2020年11月27日

阿呆はANOのみにあらず(十一月廿四日)



 十月下旬に、就任して一月ほどだったプリムラ厚生大臣が、辞任に追い込まれたのは、営業が禁止されているはずのレストランで、ANOの副党首だったファルティーネク氏と会合を持ったことが原因だった。レストランなどの飲食店の閉鎖を決定した人間が、自らルールを破るとはどういうことだという批判が、野党だけではなく、与党内からも巻き起こったのだった。
 もう一方の主役であるファルティーネク氏も、あちこちから批判を受けて、下院のANOの会派の長と、ANOの副党首の役職を辞任したんだったかな。辞めたのは前者だけだったかもしれないが、プリムラ氏とは違ってあっさり辞任していた。ただ、その後、逃げるように外国に休暇に出かけ、一般の国民に外出の制限を科したばかりだっただけに、バビシュ首相からも批判されていた。

 これで終わっていれば、ANOの政治家、政治家以外でもANOの選んだ大臣は、国民の事を無視して好き勝手なことをしているという結論になって、反バビシュの野党勢力にとっては、万々歳だったのだろうけれども、ここは流石のチェコである。そんな簡単でつまらない結論で終わることはありえないのである。

 まず、ANOに続いて、政治家というものが如何に自分を特別視し、国民に対する規制がおこなれていても自分はその対象にならないと考えているという事実を明らかにしたのは、TOP09の実質的なリーダーであるカロウセク氏だった。二週間ほど前のことになるが、プラハの持ち帰り用の窓口だけで営業していたレストランの中に入っていって、店主と談笑しながらビールを飲んでいたらしい。
 カロウセク氏は長年の友人の経営するレストランに昼食を買いに来たついでに、店の中に入れてもらって話をしながらビールを飲んだだけだとか語っていたと記憶するが、この時期は仕事と買い物以外で外出することが禁じられており、週末などに会いにいっていいのも家族だけという制限がついていたはずだから、この言い訳は通用しない。結局開き直ったような謝罪のコメントをして幕引きとしていた。

 実は、最初にカロウセク氏が政府の規制に違反するような行動を取ったというニュースを見たときには、意図的に、バビシュ政権を批判するために敢えてやったのかと期待したのだが、そんなことはなかった。この人も口ではえらそうなことを言うけれども、結局つまらない既成の政治家の一人に過ぎなかったのである。カロウセク氏とバビシュ首相は、ことあるごとに対立して犬猿の仲とは言われるが、いわゆる同属嫌悪という奴で、本質的には似ているのではないかと見ている。カロウセク氏のほうが政治家としては洗練されているけれども、それがいいことで有権者の支持につながるとは限らない。

 続いて愚行をさらしたのは、カロウセク氏の場合と違って、自らSNSでさらしたのは、キリスト教民主同盟の党首でオロモウツで反バビシュの旗を振り続けているユレチカ氏である。明らかに自宅ではない、飲み屋かどこかで誇らしげにビールに口をつけようとする自分の写真をSNSに掲載したらしいのである。これも抗議のために意図的にやったというものではなく、問題にされていることがわかるとすぐに謝罪のコメントを出していた。
 プリムラ氏や、カロウセク氏のようにマスコミにすっぱ抜かれたというのならまだわかるけれども、これでは、自分がバイト中にアホなことをやるさまをSNSで公開する日本のアホ学生と同じレベルではないか。キリスト教民主同盟、こんなのが党首で大丈夫か? この人オロモウツ地方の地方議会の選挙でも当選しているはずなんだけど、心の底からやめてほしいと思う。

 ANOとバビシュ首相がどんなに駄目っぷりを示しても、批判する層は急進化するものの、一定の支持を得続けている理由のひとつが、この既存の政党の政治家たちの体たらくにあるのである。バビシュ首相から反バビシュのメディアだとして批判されることもあるチェコテレビですら、プリムラ厚生大臣には辞任を求めておいて、自分たちは自らを罰するのに謝罪しかしなかったなんて皮肉を言われていた。
 だから、ANOの次は海賊党だと確信しているのだが、ANOの劣化が予想以上に早いのでどうなることやらである。来年の下院の総選挙で、市長連合ことSTAN党と選挙協力をすると言い出したのも、期待よりは不安のほうが大きい。
2020年11月25日11時。









2020年10月26日

さすがチェコ(十月廿三日)



 昼ごろだっただろうか、衝撃的なニュースが飛び込んできた。衝撃的ではあったけれども、同時にチェコだからなあとか、きわめてチェコ的だという印象を持ったことは否定できない。鳴り物入りで任命され、武漢風邪の流行を押さえ込むことを期待されたプリムラ厚生大臣が、就任からわずか一ヶ月ほどで解任される可能性が高いというのである。
 原因は、「ブレスク」という夕刊紙が公表した写真にある。その写真は水曜日の深夜に撮影されたもので、プラハのビシェフラットにあるレストランから出てくるプリムラ氏と、ANOのナンバー2であるファルティーネク氏の姿を捉えていた。プリムラ氏に至ってはマスクも着用していなかったのである。

 プリムラ厚生大臣の主導する感染症対策で、レストランは通常の営業を禁止され、持ち帰りようの食事の販売しかできなくなって久しい。それも午後8時までしか許されていないのである。それなのに禁止したはずの厚生大臣が、規則を破って営業していたとしか思えないレストランから深夜に出てくるのはどういうことなのか。それに、屋外でのマスク着用も水曜日の朝から義務化されていたはずである。
 プリムラ氏は、繰り返し人々が武漢風邪を軽く考えるようになって、規制を守らないのが感染症の拡大に歯止めをかけられない最大の原因だと言うのだが、図らずも本人がその実例を示すことになってしまった。深刻な表情で対策を発表していながら、実はそんな対策は不要だと考えていたのか、自らを特別視して自分は規制を守らなくてもいいと考えたのか、いずれにしてもきわめてチェコ的な、チェコの政治家にありがちな振る舞いである。

 この写真の発表を受けて、さすがにバビシュ首相も庇うことはできず、プリムラ氏に辞任を求め、辞任しないなら解任すると最後通牒を突きつけた。朝の時点では辞任の可能性をほのめかしたプリムラ氏が辞任を拒否すると、バビシュ氏はゼマン大統領に解任を求める手続きを取った。しかし、プリムラ氏の任命は即日行ったゼマン大統領だが、今回は即刻の解任を認めず来週の火曜日まで時間を求めた。鍼灸などの中国の伝統的な医療のチェコへの導入の推進役だったプリムラ氏は、中華共産帝国に朝貢するゼマン大統領とは相性がよく、大統領が解任を拒否する可能性もありそうだ。
 バビシュ首相は、すでに後任の人選を進め、候補者とされるブルノの病院の小児病棟の長と交渉を済ませており、来週の木曜日には信任の厚生大臣を発表したいと考えているようである。もともとは即刻解任、即刻任命をもくろんでいたのが、ゼマン大統領の反対にあって計画変更を余儀なくされたのである。対策に遅れが出る可能性もあるけど、できる限り規制の強化をしたところで結果が出るのを待つ時期なのは不幸中の幸いである。

 もう一方の当事者であるファルティーネク氏は、自分の非を認めてANO党の役職、副党首だったかなを辞任した。同時にカルビナー地方で行われることが計画されている全住民の検査の計画について事情を聞いていたのだと説明をした。疑問なのは、どうして水曜日の深夜という時間に、プラハの閉鎖されているはずのレストランで会合を行ったのかということだが、納得のいく説明はなされていない。その後オストラバの病院の院長も同席していることが明らかにされたが、それが深夜の会合の理由になるとは思えない。

 ちなみにプリムラ氏が辞任を拒否している理由は、規制違反は一つもしていないというものである。言い訳を聞いてもレストランの営業については、どう考えているのかよくわからないのだが、マスクを着用していなかった理由については、他の人と2メートル以上はなれていたから問題ないのだという。
 確かに屋外でのマスクについては、人間距離が2メートル以上とれない場合という条件が付いているのだった。しかし、写真を見ると2メートル以内に誰かいるようにも見えるし、人とすれ違う機会の多い街中を歩くときには、瞬間的に周りに人がいなくてもマスクを着用することを勧めるという話もあったはずなんだけどなあ。

 バビシュ首相は、自分が選んだ部下達に足を引っ張られていると思っているのかもしれないが、チェコの武漢風邪流行を軽視する風潮を産んだのは、明らかに夏の政府の無対応だった。バビシュ首相自身、バカンスはチェコ国内でなどというキャンペーンを実施しながら、自分は国外に出かけていたのだから自業自得である。
 それにしても、久しぶりに流石チェコ、やってくれるぜと思わせてくれる事件が起こって、ちょっと嬉しい。
2020年10月24日17時30分









2020年10月24日

最悪の結果が……(十月廿一日)



 プリムラ厚生大臣が就任して以来、矢継ぎ早に規制が強化されてきてはいるものの、感染の拡大を止められないでいるチェコでは、更なる規制の強化がうわさされていた。最近は政治家達が、日本と同様ロックダウンなる外来語を使い始め、バビシュ首相はロックダウンだけはしないといい続けてきた。それで、毎回以上に長引いて記者会見が予定よりも何時間も遅れて始まることが多いのを揶揄して、実質ロックダウンだけと、ロックダウンといわなくても言いように、どんな別の表現を使うか話し合っているのだろうなんて冗談もとんでいる。
 ここ数週間の新規感染者数の傾向を見ると次のようになっている。週末は検査自体が少なめになるので、患者数も平日よりもはるかに少なくなり、週末でも金曜の残りのある土曜日と比べると日曜日の方がかなり少ない。月曜日は増えるけれども土曜日と近いレベルで火曜日以降ほど多くはなく、日曜と月曜日だけでなく、月曜日と火曜日の間にも大きな差がある。そして火曜日以降は少しずつ増えて金曜日に一週間で最高の数値を記録する。

 今週の月曜日の新規感染者の数は、8000人を越えており、先週の金曜日の数字に比べると少ないとはいえ、月曜日としては過去最高だった。それで急遽政府の話し合いが持たれ、水曜日からマスクの着用が屋外でも義務付けられることになった。そして、月曜日から大きく増えることが予想される火曜日の結果が出る水曜日の朝に、新たな対策、規制を発表することになっていた。
 当初の予定では午前9時半から発表が始まるはずだったのだが、当然その時間が守られることはなく、昼食時にテレビをつけたら12時15分からの予定に変更されていた。これもまた遅れて、実際に発表が始まったのは、12時半を回っていただろうか。バビシュ首相はしばしば長時間仕事をしているという理由で閣僚を称賛し、会議が長いことを自画自賛するけれども、なかなか結論が出ないままずるずる続く会議なんて時間の無駄でしかない。

 ようやく始まった記者会見も、最初にバビシュ首相が話し始めたのだが、正直時間の無駄でしかなかった。決定に至った状況の説明など、最初に結論を言ってからすればいいのに、延々現在の状況やらこれまでの状況やらの説明、昨日までに何度も繰り返したことをさらに繰り返し、唯一新しいことがあったとすれば、それは昨日までしないといっていて申し訳ないという謝罪があったことぐらいである。それも具体的に何をしないと言っていたかまでは言わなかったので、いわゆるロックダウンかなあと推測するほかなかった。
 笑えるのは、いや、ふざけるなと思うのは、このバビシュ首相が延々と言い訳を並べていた時点で、すでにプリムラ厚生大臣がツイッターで新たな規制の内容を発表していたことである。正直、政府の情報をツイッターで垂れ流すような政治家は信用に値しないと思っているのだが、これを規準にするとアメリカのトランプ大統領筆頭に世界は信用に値しない政治家だらけになってしまう。たかだか一企業の提供するプラットフォームを、政治家が情報を垂れ流すことによって優遇するというのは許されるのかね。個人的な感想なり何なりならかまわないと思うけどさ。

 とまれ、プリムラ厚生大臣の発表した明日木曜日の朝から適用される新たな規制は、予想された中でも最も厳しいもので、春の一番規制が厳しかった頃と同等のものとなった。違いは国境の封鎖が行われないことぐらいである。つまりスーパー、食料品店、薬屋、薬局など生きていくため必要なものを取り扱う店を除いてすべての小売店が閉鎖され、不要な外出も禁止される。散歩は可能だが、街をぶらつくのは禁止で公園などに出かける必要があるようだ。
 個人的には、春とは違って職場が出勤を禁じていないので、運動不足解消もかねて、ほぼ毎日行われるオンラインミーティングには職場のPCから参加するつもりである。自宅のインターネットは職場ほど安定しておらず、ズームの画面が固まったりこちらの声が聞こえなかったりすることが多くてストレスがたまるのである。

 バビシュ政権が来年の総選挙で政権を維持できるかどうかは、この規制をクリスマスの準備が始まる11月の終わりまでに解除できるかどうかにかかっているような気もする。チェコの人たちが1年で最も多く買い物をするクリスマス前の時期に、小売店の営業が再開できていなかったら、恐らく廃業が続出してANOの支持者も激減するに違いないと予想しておく。次は海賊党政権かなあ。ちょっと早すぎる気もするけど。
2020年10月22日24時30分。




プリムラ大臣は就任1ヶ月ほどで解任される見通しとなっている。詳細は金曜日の分で。流石チェコだぜと久しぶりに思ってしまった。






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