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2016年10月20日
上院議員選挙決選投票1(十月十七日)
同じように寂しい数字をたたき出すのがEU議会の選挙で、2014年の投票率は18パーセントほどしかなかった。EU議会議員とか偉そうにしているけれども、有権者の五分の一以下しか投票していないのに、国民全体の信任を得ているなんてことが言えるのかね。ついでに言えば、その議会によって担保されているはずのEU委員会以下の組織が、EU加盟国全体の民意を反映しているというには、説得力に欠ける数字である。結局、EUの運営に関して、選挙の結果がどうであっても大きな違いはないという大多数の有権者達の絶望がこの投票率に現れているのだろう。
さて、今回の上院議員の決選投票の結果を見ていたら、面白い結果と名前をいくつか見つけたので紹介してみよう。中には一回目の投票の時には立候補していることに気づかなかったものもある。
最初に全体の結果を概観しておくと、地方議会選挙と上院の第一回選挙では、ANOの圧勝だったのだが、決選投票に進んだ14の選挙区の内、3つの選挙区でしか議席を確保することができなかった。これは、バビシュの言うように既成政党の中で候補者が決選投票に進めなかったところが、ANOの対立候補を支持することにしたからかもしれないし、ANOが勝ちすぎることを有権者が警戒したからかもしれない。
決選投票の勝者は、圧倒的にキリスト教民主同盟で、決選投票に進んだのほとんどが議席を獲得し、単独で擁立した候補と、他の党と共同で擁立した候補を合わせると、9の選挙区で議席を獲得した。連立与党を組んでいる社会民主党とバビシュのANOが対立を深める中、漁夫の利を得たというところだろうか。
まずは、わが地元オロモウツから始めよう。オロモウツを中心とする選挙区では、かつて市長を務めていたテサジーク氏が上院議員を務めていたのだが、今回は社会民主党のオロモウツ地方の知事のスキャンダルなどがあって、市民民主党でも、社会民主党でも大差がないことを示してしまったせいか、第一回選挙で落選してしまった。
決選投票に進んだのは、ANOの候補者と、キリスト教民主同盟の候補者だった。一回目の選挙ではANOのブラーズディル氏が33パーセントの得票率で、二位のキリスト教民主同盟のカントル氏に5パーセント以上の差をつけて勝ったのだが、決選投票では、カントル氏が5パーセントの差をつけて、当選した。
ブラーズディル氏は、消防士か何かの制服を着たポスターが印象に残っている。確認したらヘリで重症の患者の元に向かう救急隊所属の医師だった。半村良の『高層街』でマスコミのいい加減な言葉の使い方の例として出てきた「フライングドクター」ってやつかな。あれ、違ったかな。
一方のカントル氏は、キリスト教民主同盟のシンボルカラーである黄色に塗った自転車を市内の各所に放置するという奇妙な選挙運動をしていた。その黄色い自転車にどんな意味があるのかは理解できなかったけど。カントル氏の本業はオロモウツにあるパラツキー大学医学部付属の大学病院の医師だということだから、この決選投票はお医者さん対決だったというわけだ。
このように専業の政治家、いや政治業者ではなく、自らの専門分野で実績を残した人が政党に入って、あるいは政党の推薦を受けて立候補することが多いのが上院の特徴で、不要論が絶えない中、存続を主張する人が多い所以でもあるのだろう。ただ古参の上院議員によると近年の上院には、悪い意味で下院的な議員が増えているらしい。
政治的に重要な結果が出たのは、うちのの実家のあるホドニーンを中心とする選挙区で、現職の社会民主党の候補者シュクロマフ氏が、決選投票までは進んだものの、ラティシュコビツェという小さな町の町長を務めるフバーチコバー氏に負けてしまった。第一回投票の時点では5パーセントしかなかった差が、二回目の選挙では35パーセントの差に広がったのは、二回目に薦めなかった候補者の支持者が反シュクロマフでフバーチコバー氏に投票したからだろうか。
シュクロマフ氏は、かつて社会民主党の副委員長を務めていたのだが、今回の地方議会選挙の敗者南モラビア地方の前知事ハシェク氏とともに、2013年の下院選挙の後、ゼマン大統領と密会したグループの一員だったので、副委員長を辞任することになった人物である。それで党中央での影響力を失っていたのだが、今回南モラビアで社会民主党が敗戦を喫する一員となるともに、自らもそれに巻き込まれて議席を失ってしまった。
当選したフバーチェク氏は、無所属だけれどもキリスト教民主同盟の推薦を受けて立候補したようだ。上院ではキリスト教民主同盟の議員クラブに入ることになるのだろう。地方の市町村の長として実績を残した人物が立候補しやすいのも、上院議員選挙の特徴で、特に近年は、市長無所属連合(仮訳)という政治団体の台頭に象徴されるように、数が増えている。全国に候補者を立てる必要があるためどうしても大政党が有利になりがちな下院選挙では、政党内でキャリアを積んだ人物が優先されるから、実務に忙しい現職の市長、町長が立候補するのはそれほど多くないようだ。日本人的感覚からすると、自治体の長が地方議会や、国会議員の選挙に現職のまま立候補できるという制度のほうが不思議ではあるけれども。
つい最近も、中央ボヘミア地方のある小さな町の町長が、地方議会の議員だったか、地方の行政組織の高い地位についているかしていて、その町が毎年地方が使用方法を決定する補助金を獲得しているのは、その二重の地位のおかげではないのかというニュースが流れていた。もちろん、本人は助成金をもらうためのプロジェクトがうまくできていたからだと否定するけれども、もちろん、地方の行政庁の高官であるから助成金が獲得できているのである。元厚生大臣のラート氏が知事を勤めていた時期から、この中央ボヘミア地方は助成金に関してはでたらめなのだから。
以下次号。
10月18日23時。