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2017年04月29日
プラハ駅前観光(四月廿六日)
体調がよくない原因は、イースター以来の悪天候に体が音を上げたというところだろうか。先週の土曜日にプラハなんぞに出かけたのがとどめをさしたというわけだ。幸い今日は一日仕事に出る必要がなかったので、睡眠を十分以上にとって、最悪の状態からは抜け出せた。だからと言って今書いているものが、昨日、一昨日のものよりもましになるとは限らないのだけど。
さて、何について書こうかと考えて、せっかくプラハに出かけたのだから、プラハでのことを書いてみようという気になった。どうせ次に出かけるのはまた来年である。ここで書いておいても来年のネタを先取りすることにはならないだろうし。
ズブロヨフカとは、チェコの武器製造企業の名前である。共産主義の時代にはいろいろなところの工場がまとめてズブロヨフカになっていて、武器ではなく自動車やトラクター、バイクなんかを作っている工場もあったようだが、ここにお店があるのは、銃を生産販売しているズブロヨフカで、工場はウヘルスキー・ブロトにある。ビロード革命のあとブルノやストラコニツェのズブロヨフカからは離れて独立した企業になったようである。
では、どうしてズブロヨフカで大騒ぎするかというと、八十年代の後半から九十年代の初めにかけて、漫画を熱心に読んでいた方なら、「CZ 75」と言えばわかってもらえるだろう。『パイナップルARMY』で主人公のジェド・豪士が、西側の専門家の間でも最も高く評価されている銃だとか何とか言っていたあれである。『マスター・キートン』にも出てきたかもしれない。東側で生産された銃の象徴のようなものだったのだ。
そんな銃の生産会社がプラハ駅の真ん前に店を出して、販売をしているというのに驚いてしまった。チェコではEUが強引に進めようとしている、民間人の銃の所有に関する厳重な規制に大統領をはじめとして反対の声を挙げている人が多い。その理由の一つが、町の中に当然のように鎮座しているズブロヨフカの銃の販売店なのかもしれない。
ズブロヨフカの近くには、チェコ自動車連盟とでも訳せそうな組織の建物を発見してしまった。日本のものとは違って、四輪だけでなく二輪のレースも管轄している団体である。歯車の中にチェコの獅子の像の描かれたシンボルマークはなかなかのものである。もちろん、レースだけではなく、車を所有し運転する人たちの権利を保護するための活動もしているはずである。確か、誰かがこの団体に入っておくと駐車場が確保しやすくなるとか言っていたような気がする。
チェコ語で「アウトクルプ」と発音するこの団体の存在を知ったのは、会員数の水増し疑惑を伝えるニュースによってだった。どういう事情で問題なったのかは覚えていないが、調査が入った翌年の会員数が激減したことが伝えられていた。この手の民間団体は会員数によって国からもらえる助成金が上下するので、すでに退会してしまった、もしくは会費を払っていない元会員も会員名簿に載せて、人数が減らないようにしていたのではないかということだった。もちろん協会側は否定していたわけだけれども、実際のところは、チェコだからね。
そして、自動車連盟の手前、ズブロヨフカ側には、入り口が別の通りにあるために気づけなかったのだけど、コメンスキーを記念した教育学図書館が入っていた。建物全体が図書館になっているわけではないようなので、入り口で呼び鈴を鳴らす必要があるのか。コメンスキー関連の展示があるわけでもなさそうなのに、面倒だなあ。
コメンスキー記念国立教育学博物館図書館(NMPK)という組織の一部として運営されている図書館のようである。それなら、ブルタバ川の反対側マラー・ストラナのワレンシュタイン通りにあるらしい博物館のほうに行くのが先である。こちらはコメンスキーを中心にチェコの教育に関する展示があるようだから、偏り過ぎたコメンスキーに関する知識を多少補うためにも、機会があれば行ってみようと思わなくはないのだが、プラハに出かける機会がなさそうなのが問題である。うーん、また誰かの尻尾にくっついていこうかな。
プラハの駅前からほとんど進まずに、一日分が終わってしまった。どこに観光があったのかってのは愚問である。あからさまな観光名所よりも、こんな隠されたものを見つけるほうが楽しいって人間もいるのだから。とはいえ、赤瀬川源平がやっていたような「超芸術トマソン」発見なんてところまではいけないのだけど。
4月28日15時。