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2017年05月01日

プラハ駅観光(四月廿八日)





 さて、このプラハ駅の建物が現在の姿になったのは、20世紀初頭のことで、ヨゼフ・ファンタという人の設計に基づいて改築された。そのため、駅の建物のことを、チェコ語で「ファンタの建物」ということがあるし、建物の中には最近改築が済んで再度営業を始めた「ファンタの喫茶店」なんてものもある。
 実は、最初はチェコ語の「ファントバ」は、ファンタから作られた所有形容詞ではなくて、怪人とか幽霊のような意味で使われるファントムから作られた言葉だと思っていた。チェコ語の名詞の中で「us/um/om」なんかで終わる名詞は特別なグループを作っていて、格変化させる際に、「us/um/om」を取っ払ってから活用語尾を付ける場合があるのだ。ただし、すべてではないというのが、外国人に対する嫌がらせだろうといいたくなる所以である。


 一度ここの喫茶店でコーヒーを飲んだことがあるのだけど、通行人が多くて落ち着かなかったのを覚えている。それなら、コーヒーなんぞ飲まずに、セセッション様式に特徴的な装飾を一つ一つ見てまわる方が有意義というものである。確か。壁の装飾にはプラハ市のものを含めて多くの街の紋章が使われていた。プラハの地区の紋章かもしれないけど。

 ファンタの喫茶店から駅舎を出ると、空港行きのバスも走る大通りに出る。この通の名前はウィルソン通というのだが、これはアメリカのウィルソン大統領から取られているようだ。第一次世界大戦時の大統領だったウィルソンが、民族自決という考え方を主張してくれたおかげで、チェコスロバキア第一共和国が独立できたとも言えるのである。その感謝の意味をこめてなのか、プラハの中央駅も独立直後の1919年から1940年にかけてはプラハ・ウィルソン駅と呼ばれていたらしい。この時期には、プラハ・マサリク駅も存在していたから
 ちなみに、中央駅は、以前はオーストリアの皇帝の名前を取って、チェコ語ではフランティシェク・ヨゼフ駅、ドイツ語風にするとフランツ・ヨーゼフ駅と呼ばれていたらしい。この実質的に最後のハプスブルク家の皇帝は、皇太子時代の1848年に起こった革命騒ぎでウィーンからの逃亡を余儀なくされて、オロモウツに逃げてきて、オロモウツの大司教宮殿で戴冠式を行なった人物である。オロモウツにはこの皇帝にちなんで名前の付けられたものは、なかったような気がするのだけど。

 プラハの駅の構内は、初めてのときに比べたら、見違えるほどにきれいになり、店舗も増えた。この駅の改修を請け負ったのが、イタリアの会社である。同時に駅舎を三十年間貸借するという契約で、改修した駅の構内に入っている店のテナント料などイタリアの会社に入るという契約だったようだ。
 しかし、テナントの入る部分の改修は順調に進んだものの、歴史的な建造物に指定されている部分の改修が遅れており、契約が結ばれてから13年たっても終わっていないと言う事実を理由にして、鉄道の路線と駅舎の管理のために設立されたチェコ鉄道から分離された国営企業が、昨年十月にイタリアの会社に対して契約破棄を通告した。2015年の時点でこのままの状態が続けば、契約を破棄するという警告を発していたらしいのだが、改修のペースが早まることはなかったようだ。

 イタリア側としては、当然それを不服として、契約破棄によって生じる損害の賠償を求めて裁判を起こすとか言っていた。チェコの国やら、国営企業やらが発注する公共事業は、こういう契約した外国の会社が、契約条件を満たさず、契約破棄に至ることが多い。その際、契約条件を満たさなかったときのことが事前に決められていないために、裁判を起こされて賠償金を求められてしまう。そして、たいていは企業のしたたかさ、ずるさに負けてしまう。
 EUも、こういう旧東側の国で悪辣なことをやっている旧西側の企業を規制する方向に動かないと、制度上は問題ないとか言っているだけでは、この辺りの反EUの住民感情が高まる一方だと思うんだけどね。
4月30日16時。





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