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2018年07月14日
ワールドカップ雑感2(七月十三日)
それは、サッカーの試合と、ラグビーやハンドボールの試合を見比べたときに、サッカーにフェアプレーなんて言葉は存在しないと感じるからである。相手と当たってもいないのにファールされたふりをしたり、逆にファールしていないふりをするのは日常茶飯事である。ブラジルのネイマルのあれは極端だから、ひどく批判されているだけであって、やっていること自体は他の選手たちも大差ない。
ディフェンスの裏にボールが出ると、オフサイドを取れと言わんばかりに手を挙げるのもみっともないし、ボールが外に出たときに、自分たちのボールだと、明らかに違っていても主張するのも見苦しい。スローインや、コーナーキックの判定が間違っていたときに、自分が最後に触ったと申し出る選手は、それが取り立ててフェアプレーだと賞賛されなければならないほどに少ない。ハンドボールでは、審判が間違うこと自体が少ないけれども、間違っていた場合、そして間違いだと確信がある場合には申し出るのが普通である。
サッカーでは、下手な演技を見せた後自分の望むような判定が出なかったら審判に詰め寄っていちゃもんを付ける。本来キャプテンにしか許されていないはずなのに、数人の選手で審判を取り囲むさまは、借金の取り立てでもしているのかと言いたくなる。審判も審判で、そんなの片っ端からカードを出して退場にしてしまえばいいのだろうけど、試合を壊したと批判されるのを恐れて、カードは出さないことが多い。ルールに基づいて笛を吹いたら袋叩きに遭うのだから、サッカーの審判というのも大変である。こんなスポーツにフェアプレーなんて概念を持ち込む意味はあるのか。
考えてみれば、サッカーほど審判に敬意を払わないスポーツは珍しい。ハンドボールだと判定に不満があっても、審判に抗議することはほとんどなく、抗議をすると大抵はカードが出され、時には監督やコーチが抗議をして、ベンチから退席処分を受けることさえある。まあいわゆるバルカンの笛とか、中東の笛なんかにさらされない限り、相手ホームの試合で、ちょっと相手よりかなという判定はあっても、それは飲み込んでプレーするのがハンドボールなのである。接触プレーに関してはどちらの反則と取ってもおかしくないような場面が多いし、大抵は守備側のファウル扱いに終わるんだけど。
ラグビーの審判への敬意のはらいかたについては、今更言うまでもないほどサッカーの場合とは対照的である。審判と会話してもいいのはキャプテンだけだというルールは厳格に守られているし、審判も判定に関してキャプテンを通して反則を犯した選手に説明するというシステムが見事に機能している。ビデオが導入されたもの早かったけど、ビデオ云々以前に審判に向けられる敬意、審判に対する信頼度の高さが違うのだ。審判の判定は何を言ってもひっくり返らないという意識が身についているから、無駄な抗議に時間やエネルギーを割くぐらいだったら頭を冷やして次のプレーに切り替えたほうがましだと考えるのだろう。
それに対してサッカーの選手たちは、審判を信用しないばかりか、自分のいいように操ろうとしているようにさえ見える。だから、サッカーは、などと批判するつもりはない。それもこれも含めてサッカーであって、何もすべてのスポーツがラグビーになる必要はないのだ。やりすぎなのは鼻につくけれども、審判と選手の駆け引きみたいなものもサッカーの醍醐味の一つだと言ってもいいかもしれない。それこそ、アイスホッケーで選手同士の乱闘が、エンターテイメントの一部になっているのと同じように。
繰り返しになるが、サッカーというスポーツを批判するつもりは毛頭ない。批判したいのは、このスポーツに対して安易にフェアプレーなどという本質からかけ離れた言葉を持ち出して、選手やチームを批判することである。今回の日本代表の件にしても、ネイマルの件にしても、多少極端ではあっても、サッカーの本質から外れるものではないのだから、フェアプレーに反するとか耳ざわりのいい言葉で批判するのはやめて、馬鹿なことをと笑いものにするのが正しい。
日本代表が警告数の少なさでグループステージを勝ち抜けたのも、そういうルールにしたのも批判はしない。批判するのは、それをフェアプレーポイントとかいう名付けてしまう無神経さである。だから警告が少ないのがフェアプレーとは限らないという批判が出てくるのだ。そんなことなどせずに、警告退場数に基づいて決めるとだけルール化しておけば、フェアであろうがなかろうが数字が絶対だということになる。
こんなことを、先日のイングランドとコロンビアの試合、イングランドとクロアチアの試合を見ながら考えてしまった。ラグビーのように審判にマイクを付けて、選手たちが何をわめいているか会場で聞き取れるようにすると、楽しいことになるかもしれない。
2018年7月13日23時5分。