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2019年02月25日
baba nebo bába〈私的チェコ語辞典〉(二月廿三日)
よく聞くのが「Ta baba」という表現で、意味としては「あの女」なのだろうけど、もともとの言葉の意味から「あのばばあ」的に響く。日本語でも女性に対する悪口として、若い女性に対しても使われるように、チェコ語でも若い女性のことをこの言葉で指すことがある。いわゆる「nadávka」ほど汚い言葉ではないけれどもあまり気軽に使わないほうがいい言葉の一つである。
女性が、仲間の女性たちに「みんな」という意味で、「baby」なんて呼びかけるのはいいのだろうけど、これを男性がやると起こられそうな気もする。女性がいないところで、男性が「baby」といって女性たちのことを指すことはありそうだけど。男性が、仲間の男たち全員に呼びかけるときには、「kluci」「hoši」というどちらかというと若い男を意味する言葉を使うことが多いのに、女性は若い女の子を指す「d?v?ata」「holky」だけでなく、老婆を指す「baby」をも使う辺りチェコ語の特徴のひとつなのかなあ。
ところで、自分の祖母ではなくても、老婆をさして言うときには、「babi?ka」を使うことが多い。考えてみれば、この「babi?ka」は「baba」の指小形ではないのか。ただ、「d?d/d?da」と指小形の「d?de?ek」は、使う状況に違いがあるとはいえ、どちらも祖父、お祖父さんの意味で使えるのに対して、「baba/bába」を祖母の意味で使うのは聞いたことがない。これも言葉のイメージが悪いほうに偏っている傍証と言っていいか。
それに、「Je?ibaba」なんて派生した言葉もある。これは昔話に出てくる悪い魔女を指す言葉である。魔法使いを指す言葉なら、「?arod?j(男)」「?arod?jnice(女)」という言葉があって、男の場合には悪い魔法使いでも「je?id?da」なんて言葉はなく、「?arod?j」を使うと思うのだけど、女性の魔法使いで特に性格がゆがんでいて見てくれも醜い登場人物を「Je?ibaba」と呼ぶ。ちょっと日本語の「ヤマンバ」とイメージの重なる言葉である。「ヤマンジジ」なんて言葉がないのも重なるしって日本のヤマンバは魔法は使えないんだったか。
この「baba/bába」から造られる形容詞は「babí」で、使用例としては「babí léto」ぐらいしか知らない。これは一般には「小春日和」と訳される表現である。確か坂田靖子の漫画『バジル氏の優雅な生活』に、「貴婦人の夏」とかいうどこぞの言葉で小春日和を意味する表現を題名にした話があった。それは、貴族の夫人が、夫と愛人の間の息子を復讐のために誘惑した挙句に、それをばらして殺させるというなんとも救いのない話だったと記憶する。
それに対して、チェコの小春日和、「Babí léto」は映画である。「babí」と言いながら、最初のうち目立っているのは老夫婦の夫のほう。いい年して詐欺師まがいのいたずらをするのが唯一の人生の楽しみみたいなとんでもない爺さんで、長年連れ添った奥さんに散々迷惑をかけた結果、愛想をつかされて離婚を切り出されてしまう。もちろんこれですんなり離婚したらチェコの映画にはならないわけで、最後には夫のいたずらのない生活の退屈さに気づいた奥さんが戻ってきて、今度は二人で大きないたずらを仕掛けるというお話。二人でお金持ちのふりをして、お城を買いたいと言って仲介の不動産屋に案内させるのだが、これ冒頭で爺さんが一人でやって失敗したいたずらで、それを最後に二人でやろうとするのである。
なんだか、変な方向に話が向かってしまったので、最後にもう一度「bába」に戻ろう。実はこの言葉は名字になっていて、ヤロスラフ・バーバなんて人がいるわけだ。女性形は「Bábová」になるので、「bába」が名字になるのは男性だけ。チェコ語はやっぱりちょっと変な言葉である。
ここ二日更新が遅れているのは土曜日の酒のせい。そろそろ平常運転に戻りたいところである。