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2019年08月07日
名もなきプラハの掃除人(八月五日)
今回の一件もそんな馬鹿者たちの愚行の一つなのだろうが、問題はこの連中が、経済的な優位、つまり金を持っていることをかさにきて、政治的に立場の弱いチェコでならば何をしてもかまわないと考えているところにある。こういうのを見ると、EUの誇る移動の自由というものが、仮に違法難民の存在がなかったとしても、決して薔薇色のものではないことがわかる。犯罪者とその予備軍にまで移動の自由が与えられるのだから。スロバキアにイタリアのマフィアが食い込んで社会問題になっているのもその一例である。
さて、話を戻そう。最初のニュースはカレル橋の落書きをどうやって消すかというのを問題にしていた。文化財保護局か、そこから仕事を請け負った会社の人が出てきて、化学洗剤とたわしを使って、どの洗剤が一番石材に害を与えずに、スプレーを消せるかというのを確認した上で、本格的な洗浄の作業に入るとか語っていた。このとき試しに洗浄を行ったと思しき部分は完全に色が消えていないようにも見えた。
誰がどのような方法で洗浄したかもわかっていない状態で、こんなことを断言するのは、自分たちが手間と時間がかかると主張していた作業を、わずかな時間でなされて、面子をつぶされたからではないかと思われた。洗浄を請け負った会社には、それなりのお金が流れているはずだし、警察沙汰にするようなことを言って大騒ぎしていたのもアリバイ作りっぽかったし。
そうしたら、更に次の日のニュースでは、警察に自分がやったといって出頭した人物が登場して、自動車の洗車の際にもつかう高圧の水流をぶつけて汚れを洗い流すという、自分が使った洗浄の方法を紹介していた。建築物の表面にはたいていほこりや汚れが膜を作っているから、スプレーなどで色を付けても素材の中まではしみこまない。だから高圧の水流をぶつけて膜ごと押し流してやれば、建築物に傷を付けずにきれいにできるという。汚れが一種の保護膜のような役割を果たしているというのだから皮肉である。
この人は、これまでにも、いくつものスプレー似非芸術家の被害を受けた建物の洗浄を担当したことがあるというから、文化財保護局の言う文化財の専門家ではなくても、スプレーに汚染された文化財の洗浄に関しては経験豊富な専門家だとは言えそうだ。文化財保護局の専門家の調査でも、カレル橋の石材が何らかの形で損傷を受けたという事実は発見されなかったようだし。
その次の日には、ええかっこしいのプラハ市長が横からくちばしを挟んできて、表彰するとか言い出したのを、この人が拒否したというニュースが流れた。本人は、「自分は人殺しで、裁判を受けて服役したとはいえ、それで人の命を奪ったという罪が消えたわけではない。罪を償うためには、自分の仕事を全うする以外に、他人に対する善行を積み上げていかなければならない。このことで表彰されたり謝礼を受け取ったりするのは自分の本意ではない」というようなことを語っていた。
だから、人に知られないようにひそかに洗浄を行った後に、予想以上の大騒ぎになって名乗り出ざるを得なくなったこと自体が本意ではなかったはずだ。もしかしたら、これまでも同じようなことを人知れずやってきたのかもしれない。ということで、ニュースでは名前が出ていたけれども、このブログでは本人の意向をくんで名前は出さないことにする。
さらに今日のニュースでは、あきらめきれないプラハ市長が、「この人は犯罪を犯したとはいえ、服役して罪を償ったのだ。表彰される権利がある。それは犯罪を犯した人の服役後の社会復帰が問題になっている現在重要なことだ」とか何とか語っていた。正論ではあるのだろうけど、他人に認めてもらうためにやったんじゃないという本人の言葉のほうがはるかに重みを感じる。悪行に関しては、責任を取るべきだし報いを受けなければならないけれども、善行を行ったからといって、特に今回は自分の技能を生かして汚れを落としただけなのだから、責任を負う必要はなかろう。
それにしても、チェコには稀な控えめな人物のいい話だったのが、周囲が大騒ぎをしたせいで喜劇になりつつあるのが、何ともチェコ的である。
2019年8月5日23時10分。
タグ: プラハ