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2019年11月20日

昨日のできごと(十月十八日)





 トリコロールというと、日本ではフランスの国旗をさすことが多いようだが、本来は三色旗のことなので、チェコの国旗もトリコロールである。日本人には赤、白、青の三色が並んでいればそれでいいような気がするが、国旗にトリコロールを使っている国の人たちにとっては、縦横、色の順番などは、ものすごく重要であるようだ。日本人も日の丸の色が逆になっていたら大騒ぎをするだろうと考えると、同じと言えば同じか。
 こんな話をするのは、このトリコロールでバビシュ首相が失敗をやらかしたらしいからである。首相として朝からテレビに映り続けていたバビシュ氏は、朝のうちはトリコロールのあしらわれたネクタイを締めていた。しかし、午後になるとそのネクタイを外してしまう。ちゃんと確認したわけではないが、そのトリコロールが、チェコのではなく、ロシア、もしくはスロバキアのものであることを指摘されて外すことになったという。


 先日も、サッカーのロシア代用が、ユニフォームを提供する会社の製作した新しいユニフォームの袖の部分のトリコロールの順番が違っているといって着用を拒否したなんてニュースもあったしデリケートな問題ではあるのだろう。トリコロールの本場のフランスでは、シロが真ん中に来ないと許されないのだろうし。

 そんなチェコにとっては誇りであるはずのトリコロールに関して、批判にさらされているのが、サッカーの代表のアウェー用ユニフォームである。一体にチームスポーツのチェコ代表のユニフォームは、青赤白のうちの一色、もしくは二色を使用している。赤+青と白一色というパターンが多いかな。本来個人スポーツであるテニスでも、デビス・カップ、フェドカップのときだけは、代表に選ばれた選手たちは、チェコの国旗に使用されている色をあしらったテニスウェアを身につけている。シュテパーネクなど、国旗と同じデザインのものを着ていたこともあるくらいだ。
 だからというわけでもないのだろうけど、シュテパーネクが最初に、SNSで世界的なデザイナーのデザインと、民族の魂によるデザインの違いを七つ挙げろなんていう皮肉な投稿をしたらしい。それに続いてベルディフが、なんでこんな色にしたんだ、民族のほこりはどこに行ったんだなんてことをコメントしたのかな。テニス選手は、サッカーの選手よりもはるかに代表として活動する機会が少ないから、その分思い入れも大きいのだろうか。

 そのトリコロールを捨てたアウェーユニフォームで、ブルガリアまで遠征したチェコ代表は、あっさり0−1で負けた。勝ち抜けも決まっていたし、イングランドとの直接対決の得失点差で、グループ2位も確定していたから、モチベーションのあげにくい試合ではあった。それでもこのチームの、できのいい日と悪い日の差の大きさは、本大会に向けて大きな問題になりそうだ。現状を考えると出場できただけで御の字というところはあるのだけど、出場するからには上位進出を望みたくなるのがファン心理である。

 試合よりも語るべきはこの試合の観客席の奇妙さだった。イングランドとの試合で人種差別的な言葉が飛んだということで、無観客試合という罰が与えられたのだが、完全に観客ゼロではなかった。最近導入された、無観客試合でも14歳以下の子供たちと引率者だけは入場させてもいいという規定にも度づいて子供たちが招待されていた。ただ、その数が200人ほどというあまりにも少ない数だった。
 チェコテレビのアナウンサーの話によると、現在のブルガリアのサッカーを取り巻く環境は最悪で、試合に関する関心がそれほど高くなく、また大々的に募集をかける余裕もなかったので、使用したスタジアムを本拠地とするチームの子供たちだけが招待されたのだとか。協会長が辞任したとか、監督が解任されたとか、いろいろあったんだったなあ。そんな状況にあるチームに負けてしまったのである。
 それから、チェコ人の観客が数十人いた。一応代表チームに公式に招待された人たちということで入場が許可されていたらしい。よくわからないけどチーム関係者扱いになったのだろうか。とまれブルガリアの子供たちがおとなしかったこともあって、観客席のチェコ語の言葉が中継でも聞くことができたのはなんだか不思議な感じであった。

 最後にもう一つトリコロールに関する話をしておけば、問題発言を連発して市民民主党を追放されたクラウス大統領の息子が、手下達とともに結成した新政党の名前がトリコロールというのだった。世論調査によれば、現時点では国会に議席を確保するのは難しそうだが、何をやっても父親の七光りの域を出ないこんな人物の率いる政党が国会の選挙で全国5パーセントの壁を越えて議席を確保するようだと、チェコの民主主義いよいよ危ういということになる。
2019年11月19日23時。











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