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2020年02月18日
乾いた二月(二月十五日)
そんなアルコール消費大国であるチェコで、アルコールまみれの現状に危機を抱いた人たちが、2013年に始めたのがこの「乾いた二月」というキャンペーンで、毎年一月だけでも酒を飲まない月を作ろうという運動のようである。「渇いた」というのは、「渇いた」でもあり、つまりお酒を飲まないという意味なのである。一時日本で流行った「週に一回休肝日」というのの年間バージョンと言ってもいいかもしれない。
チェコ語では「Suchej únor」となる。正しいチェコ語ならば「suchý」なのだけど、親しみやすさを求めたのか、プラハ方言が採用されている。個人的には定期的に酒を飲む習慣を失って久しいので、あえてこのキャンペーンに参加する必要もないのだが、飲んだくれていた時期であっても、この表記を嫌って二月だから飲むぞとかひねくれていた可能性が高い。とまれ、HPも解説されているので、興味のある方は こちら からどうぞ。
このキャンペーンの存在に気づいたのは今年が初めてなのだが、それはスポーツ界からも賛同の声が上がっていて、参加者がでたというニュースを見たからである。スポーツ新聞のHPの渇いた二月に関する記事には、すでに引退した選手も含めて何人かのスポーツ選手が参加していることが記されている。現役時代から真面目な印象が強くお酒もあまり飲まなさそうなペトル・チェフがこの運動を支持しているのは意外でもなんでもなかったけれども、サッカー界から意外な名前が二つ挙がっていた。
一人は、スパルタですっかり出番をなくしたバーハで、こちらに関しては意外だという以外に特に書くこともないのだが、もう一人のフェニンについては、現役時代を通じて酒がらみの問題を起こし続けた選手である。いや引退してからも、解説の仕事にへべれけに酔っ払って登場して、醜態をさらしたなんてこともあったなあ。
フェニンに関しては最近 こんな記事 を見つけた。日本のメディアに載ったチェコ選手の記事としてはよくできていると思う。ちょっとどうかなあと思うのは、フェニンがおかしくなったのがドイツで監督交代があって出場機会を失ってからと理解できるような書き方がなされているところ。この選手、チェコのテプリツェでプレーしていたころから素行には不安を持たれていた。だから、記事にもある酔っ払ってホテルの窓から転落した事件が起こったときも、驚かなかったとは言わないが、こいつならやりかねないとも思った。
もう一つ、こちらは完全な不満だが、フェニンを「チェコの天才」と記しているところである。たしかにチェコでも才能のある選手として大きな期待を寄せられていた。しかし、天才と呼ばれていたかというと、疑問が残る。誰かがプレーを、天才的と書いたことはあるかもしれないが、誰もが天才と評価することを認めるような存在ではなかった。
チェコのサッカー界で誰もが認める天才と言えば、トマーシュ・ロシツキー以外には存在しないのである。フェニン同様に若くしてドイツに移籍して、アルコールと賭け事で身を持ち崩したシマークなら、U21代表の中心で活躍したころには、天才と呼ばれていたかもしれないけど、フェニンが、ポジションは違うとはいえ、シマーク以上に高く評価されていたとは思えない。
そもそも、チェコリーグでちょっと活躍した後に、世代別代表の国際大会で大活躍して、外国に移籍した選手で大成した選手はほとんどいない。最近だとチェコで行なわれたU21のヨーロッパ選手権で得点王になるという大活躍をしてドイツのチームに買われていったクリメントも今はどこで何をしているのやらだし、チェコリーグで出場する前に、さらに若い世代の代表での活躍が国外移籍につながったペクハルトも結局A代表の中心になることはなかった。ペクハルトなんてフェニン以上に期待されていたはずなんだけけどねえ。そんなこともあってロシツキー以外を天才というのには、違和感しか感じないのである。
話を戻そう。アルコールの消費量の過大なチェコで、「乾いた二月」のようなキャンペーンが行なわれるのは、いいことなのだろう。ただ、できればスポーツ選手だけでなく、政治家たちにも参加してほしいところだ。特にゼマン大統領には、最近めっきり衰えが目立っているし、任期を全うするために一月といわず、前面的な禁酒が必要な気もする。
最後に、このチェコのキャンペーンがイギリスで行なわれているらしい「乾いた一月」に触発されたものだという話を付け加えておこう。一月は大晦日からの流れで飲酒してしまって完全に飲まないのは無理だから、二月に移したのかな。
2020年2月16日11時。