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2021年06月27日

映画で旅するカナダ Canada in Cinema

首都オタワの他、カナダ最大の都市 モントリオール、そして第二の都市 トロントがある。中でも自身の出身地であるモントリオールを中心に映画を撮り続けている グザヴィエ・ドラン監督の作品が、近年注目を集めている。
今回は、モントリオールを舞台にしたふたつの映画を紹介します。


★天才グザヴィエ・ドランの、鮮やかで愛しい一本。
『わたしはロランス 
 Laurence Anyways』

(2012/加=仏)グザヴィエ・ドラン監督

♪愛がすべてを変えてくれたらいいのに♪
性同一障害を自覚し、女として生きていくことを決めたロランスと、彼の決意に戸惑いながらも受け入れ、変わらず彼を愛し続ける彼女のフレッド。
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切っても切れない絆

二人の離れられない運命に引きずり込まれた。
降りしきる雪の向こうで向かい合う母と息子。寂しい海辺のリゾートで紫のコートを着た美しいロランスと、青いコートを纏った赤毛のフレッド。再会しても傷つけあってしまう二人が別れていく、枯れ葉の舞い散るラストシーン。鮮やかな色と、コラージュのような画面が何より心を打つ。

登場人物の心の中を移し出すような芸術性溢れる演出。一瞬を切り取る映像の力に脱帽。
離れるたびに求め合うのに、いざふたりになるとどうにもできない溝に気付かされ、傷つけあってしまう男女の関係に自分を重ねてしまうのは、私だけではないだろう。憎むほど愛していたのかと思うような、悲しい絆がこの世には存在する。この世では結ばれなくても、まさに ツインソウルなのだろうな。

グザヴィエ・ドランの恐るべき才能

初めてこの作品を観たとき「この監督、すごい才能だ」と思った。
この作品の前に 『マイ・マザー』(2009)、 『胸騒ぎの恋人』(2010)などの監督・主演もしているのだが、役者としても力量を感じさせる。監督としては、どの映画でも 母親の存在感が圧倒的なのがこの人の個性。彼自身の人生が映画に色濃く反映されている。母親役の ナタリー・バイはフランスの大女優だが、歳をとってもやっぱり綺麗だ。

男とか女とか母親とか父親とか関係なく、人類愛を感じさせるような、 人間は愛し愛されるために生まれてきたのだと思える作品。



IMG_20210111_232333 (1).jpg
★そこまでするか? ー けなげな息子に脱帽!
『みなさん、さようなら 
 Les Invasions Barbares』

(2003/ 加=仏)ドゥニ・アルカン監督

♪偏屈パパの素晴らしき人生♪


美しい湖畔で、家族と友人たちに囲まれて最期の時を過ごす偏屈パパ、レミ。女と書物とワインを愛する日々を謳歌してきたレミの人生の終幕に、彼とは正反対の人生を選んだ息子のセバスチャンはどう対処し、見つめるのか。

死を前に何を思うのか

死を目前にして 「人生で何を成したのか」という問いに満足な答えを見つけられず嘆く老人。インテリほどぶち当たる壁だろう。全てを金で解決しようとする息子が、ガンの痛みに苦しむ父のために合法的に麻薬を手に入れようと自ら警察へ足を運んだりして、どうしようもなくわがままに生きてきた父親の面倒を見る。

なんと幸せな老人だろう。死の前にあれほどの友人や過去の愛人、家族に見守られ大切にされる人などそういない。母を悲しませてきた父親に反発しながらも、父の生き方を徐々に受け入れていき、同じように浮気してしまいそうになる息子に感情移入できる。人生は深いわー。家族映画の傑作です。


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