『久安に恃(たの)むことなかれ、初難を憚(はばか)ることなかれ』
今の幸せがいつまでも続くことを期待せず、最初の困難を恐れてはいけないと『菜根譚』で語っている。
砕けて言えば『逃げ腰になるな』と言うことである。
工場派遣での話。
人材不足でどこかしら欠員がでるため、1ヶ月置きに職場と勤務時間が変わる。
早番、6:15〜18:15。
遅番、18:15〜3:15。
仕事を覚えたと思ったらアッチに行きコッチに行き…。
さすがに疲れが溜まる。
早く帰って寝たい衝動にも駆られる。
ある日の遅番。
入ってすぐに早番のリーダーに仕事の進み具合を聞く。
「Aさん(リーダー)どんな具合っすか?」
「今やってる納場の分で終わるよ」
「ホンマっすか!?ってことは僕は帰っていいんですね!?」
「なんでそうなるよ!?お前はこれから働くんだよ!!」
どさくさ紛れに帰れるかと思ったけどダメらしい。
チッ…。
「Aさん、この辺の荷物まとめてていいっすよね?」
「入庫する分だら?いいよ、ヤードの方にも少しあるから持って来てやるよ」
「ホンマっすか!?ってことは僕は帰っていいんですね!?」
「なんでそうなるよ!?ってか話が噛み合ってねぇよ!!もういい、お前は昼まで働いとけ!!」
どさくさ紛れに帰れるかと思ったけどダメらしい。
Shit…。
僕を間に挟んで仕事が終わった早番に向かって叫ぶAさん。
「(帰りの)送迎、あと5分ほどで来るでねぇー!!」
「マジっすかぁ———!!!!!」
誰よりも速く、そして激しく反応する僕。
飛んでくるドロップキック。
どさくさ紛れに帰れるかと思ったけどダメらしい。
Fuck…。
どうも僕のささやかなワガママは受け入れてくれそうにない。
が、僕はこの戦いから死んでも逃げ腰にはならない。
そう、初難を恐れてはいけない。
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