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2021年12月20日

「日本維新の会」は国政でも存在感を示せるか?



「日本維新の会」 は国政でも存在感を示せるか?

砂原庸介×善教将大 消極的支持で躍進した維新分析




12-20-1.png 12/20(月) 6:32配信


12-20-2.jpg

砂原庸介氏(右)×善教将大(左)12-20-2




『中央公論』2022年1月号より抜粋




砂原》 先の衆議院選挙の印象は 「マアこんな感じだろうナア」 と云うものです。特に地殻変動が起きた感じも無く、事前の政党支持率がそのママに出た結果だったなと。メディアの方等から立憲民主党(以下 立民)が負けた理由を問われますが、元々支持率が低かった訳です。

善教》 私の手元に在るデータを見ると、小選挙区と比例で違う政党に入れて居る有権者がこれ迄以上に多い点がポイントだと思います。自民党も立民も比例の得票数は小選挙区より少ないのですが、その差分、零れた票は基本的に日本維新の会(以下 維新)に流れて居ると見て居ます。
 確かに維新は関西圏外の小選挙区で勝てて居ませんが、支持する人は関西圏外でも増えた。これが維新躍進の理由です。 維新は2012年の衆院選でも躍進しましたが、コノ時は橋下徹さんと石原慎太郎さんが共同代表で、イデオロギーの異なる支持層を取り込みつつ、勢いに乗って全国的に支持を伸ばしました。
 それに対して今回は、勢いでは無く得票のメカニズムそのものが変化して居る様に感じます。この辺りはもう少し注視する必要が在ると思って居ます。

砂原》 有権者がメインで考えて居るのは、小選挙区より比例区に見えます。比例代表には政党支持率が反映されます。有権者は 「この政党が好い」 と比例で投票しても、同じ党から出た小選挙区の候補者に必ずしも入れて居ない。詰まり立民は、小選挙区で競ってもコアの支持者以外の浮動票を比例で動員出来無かった。  
 だとすれば、立民の最大の課題は支持者の幅を如何に広げるかだと思います。処が立民は、惜敗したと云う事で小選挙区の勝敗や選挙協力の在り方ばかり議論して居る様に見えます。他の政党との足し算と云う戦術に拘って、政党支持を広げる戦略を打ち出せず、尻尾に全体が振り回されて居ます。

善教》 立民の課題は判り易いのですが、維新はもう少し複雑です。元々日本は、政党支持と投票選択との結び着きが弱い。例えば自民の支持率は40%前後で安定的に推移して居ますが、個人の中では支持と不支持が頻繁に変わる等安定しない。その傾向は1970年代から今日迄大きく変わりません。  
 増してや維新の様な新興政党だと、支持率は自民よりズッと不安定です。10年に渉って大阪に根付いて来た維新ですら、選挙の前後に為ると支持率は乱高下する。普段は無党派と言って居る人が、選挙の直前に維新支持に為り、数ヵ月経つと又無党派に戻る様なサイクルも在ります。維新は普段の支持率だけでは読み難い政党です。

維新躍進の肝は「同日選挙」


12-20-3.jpg

図 主要政党に対する感情温度平均値(2021年11月)12-20-3


砂原》 維新に付いては、大阪と国政を分けて考える必要が在りますね。先ず大阪から見ると、政党として継続的な支持を得て居ます。その原動力に為って居るのが、2011年・15年・19年と3度行われた大阪府知事と大阪市長の同日選挙です。
 誰をリーダーに選ぶか、府と市の在り方を繰り返し問うた事で大阪に置ける維新の存在感が際立った。それが先の衆院選にも影響したとすれば、大阪の人は国政選挙より地方選挙を重視して居るとも取れます。

善教》 同日選挙が最大の肝で在る事は間違い在りません。私は好く 「アジェンダ・セッティング」 と云う言い方をしますが、選挙で選択基準と為る争点を示し、それを有権者に認識させる事が重要です。
 大阪の場合、知事と市長を一緒に選択させる事で〔府市間調整〕を問うと云うアジェンダを設定出来て居ます。この時点で、調整機能に乏しい大阪の自民党は不利に為ります。

砂原》 19年の同日選挙では大阪府議選と市議選も行われました。府議選は小選挙区制に近いので如実に白黒が出て、維新は議席を伸ばして居ます。そしてもう一つ、3度の同日選挙でリーダーを育てられた事が大きい。
 15年時には知名度の低かった吉村洋文さんを大阪市長に出来たのは、橋下徹市長の後継で、尚且つ松井一郎府知事とワンセットで売り込めたからです。 リーダー養成は政党の重要な機能の一つですが、元々自民は得意では在りません。誰かが揉まれて勝手に出て来るだろうと考える。その点、吉村さんは育てられたリーダーだと思います。日本では凄く珍しいタイプじゃないでしょうか。

善教》 最大のターニングポイントは、19年の同日選。松井府知事と吉村市長がクロス選を仕掛けた時でしょう。恐らく維新は、吉村さんをリーダーに育て上げる為に、吉村さんを目立たせ、成長させる戦略を取ったのだと思います。或る種の賭けに出た訳です。  
その後、吉村さんはコロナ対応で再び注目されました。批判もされましたが、大阪府は東京等と違ってそもそもリソースが無い。批判は在れども、限られたリソースの中で何が出来るのかを府民は見て居たのではないでしょうか。何れにせよ結果的に、リーダーを育てると云う政党の機能が発揮された訳です。

砂原》 松井市長は23年の任期満了で引退すると表明して居ます。維新としては、次の市長選挙で新しい候補者を立て、吉村さんの人気で当選させたいでしょうね。次代のリーダーを育成出来るので。
 只問題は、国政のリーダーを如何に作って行くか。仮に今回当選した若手で有望な国会議員が居たとして、その人物を松井さんの後継として大阪市長に持って来るか、それとも国政のリーダーとして育てて行くかは結構悩ましい問題だと思います。  
 国政を見ると、過去の衆院選で、大阪以外の地域での維新の戦略は、皆の党や希望の党等と連合を組むと云うものでした。しかし先の衆院選では、維新の存在感が際立ち、維新が主導する形で都市部で候補者を立てて行った。そして、都市部の比較的若い人を中心に、無党派も含めて維新に流れた訳です。これは大きな違いです。
 だとすれば、旗印に為る様な国政のリーダーを育てる事も急務ではないかと。吉村さんの様なカードを国政でも用意出来るかが大きな課題だと思います。

善教》 政党に対する有権者の意識を測る指標の一つに 〔感情温度〕 が在ります。好嫌度を0度から100度迄の数字で回答して貰う訳ですが、私が幾つかの調査結果を確認した限り、2014年以降の維新の平均値は大体30〜35度。決して高く無い。
 処が先の選挙の後、急に50度を超えて最も温度が高い政党に為りました。有権者の維新を見る目は変わった。しかし、維新自体が国政を何処迄真剣に考えて居るのかは未だ判りません。次の大阪市長選や府知事選を如何戦うか等がメインで、国政は二の次なのかも知れません。


砂原》 反維新の観点では維新を右翼政党と見勝ちですが、支持層からは、経済優先・自己責任の「ネオリベ」では在れ、ナショナリズム・国家論を掲げる右の政党とは受け止められて居ないと思います。
 ソコに維新支持者と反維新の人の見方のズレを感じますし、国政で扱われる時には反維新的な見方がフレームアップされて居る気がします。

構成 島田栄昭


◆砂原庸介〔すなはらようすけ〕 1978年大阪府生まれ 2001年東京大学教養学部卒業 06年同大学大学院総合文化研究科博士後期課程単位取得退学 博士(学術)著書に『地方政府の民主主義』『大阪』(サントリー学芸賞) 『分裂と統合の日本政治』(大佛次郎論壇賞)等

◆善教将大〔ぜんきょうまさひろ〕 1982年広島県生まれ 2006年立命館大学政策科学部卒業 11年同大学大学院博士課程後期課程修了 博士(政策科学) 著書に『日本における政治への信頼と不信』『維新支持の分析』(サントリー学芸賞) 『大阪の選択』編著に『市民社会論』等




【管理人のひとこと】

 維新関係を地元の学識・有識者に語って貰う・・・と云う趣旨なのだろう。今回の衆参国会の予算委員会に選挙後の各党の幹部が勢揃いした様だ。立民も維新も相変わらずだが、維新の政調会長に若手で元都議の音喜多氏が就任したのに驚いた。彼の歯切れ良い質問には好感が広がった事だろう。
 彼等の様な年代がドンドン政治に乗り出して欲しいのだが、音喜多氏も恐らく、政治に無関心な若者の中では異端視された過去も在ったのだろうと推測される。〔変わった奴だ〕と揶揄されても都議から国会議員に為るのには大変な努力もされたのだ。今後の活躍を祈る・・・大阪維新の悪い処は批判し若く新たな息吹を吹き込んで頂きたいものである。






















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