冷め始めるブレンドを前に、彼女を待つ。
どうしても、確認しておきたいことがある。
訊いて教えてもらえるものではない。
素振りすら見せないかもしれない。
引っ掛かるのは、あの白い脚とピンヒール、あの晩と同じ。
やはり、ワタシと話した後、彼は彼女と打ち合わせているらしい。
ホテルの正面から二人一緒に出てくる。
悔しいが、絵になる本物のブロンドの美男美女。
知らぬ間に唇を噛む。
ハッとして、一人苦笑する。
彼と彼女が別れて、それぞれ反対の方向に歩き出す。
急いで会計を済ませる。
彼女が反対側の歩道を歩いて、カフェの位置を通り過ぎる。
彼女と充分に距離をとって、カフェから出る。
通りの反対の歩道を、彼女を追って歩く。
視線の先で、彼女の横に黒い車が静かに停まる。
彼女がドアに身を屈め、ウインドウを開けたらしい運転手と何か言葉を交わす。
車は、そのまま発進して去っていく。
再び歩きはじめる彼女。
慎重に後を追うワタシ。
ホテルの敷地の外れ。
彼女が、遊歩道らしき小路に入っていく。
既にあたりは暗く、街灯が点いている。
車のライトの切れ目を縫って、大通りを駆け足で突っ切る。
遊歩道の入口から、前方を覗き見る。
既に数十メートル先を、彼女が振り返りもせず歩いている。
充分な距離をおいて、早足で跡を追う。
不意に、彼女が並木の陰に消える。
追いながら待つが、遊歩道に戻ってこない。
しまった、思って小走りになる。
彼女が視界から消えたあたり、遊歩道の中ほど。
小さな噴水公園になっている。
四方の出入り口以外は、小さな木立が覆っている。
入口に立ち止まって、全身で気配を感じ取る。
顔の前に風、既の所で躱す。
鼻先に紅いピンヒール、透かさず距離をとるように跳ぶ。
公園の街灯の下に入る。
彼女が、ミニのドレスの裾を気にすることなく蹴りだした脚。
スローモーションのように戻す。
股関節まで続く長く白い脚に紅いピンヒール。
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