主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組やテレビの“楽しみ方”をお伝えします。
今期(10〜12月期)の連続テレビドラマで共通点がある。主役よりも断然サブが効いている点だ。私自身、脇役ばかりに目が行くからかもしれないが、主役がピンとこない作品が多い。迫力不足なのか、劇中での役柄が微妙なのか。顕著な2作品を検証してみたい。奇しくも同じ時間帯だしな。
『きょうは会社休みます。』(日本テレビ系)は、アラサー処女でこじらせ女子という役柄の綾瀬はるかがイイ男2匹の間でぐーらぐら、という生ぬるいドラマだ。若いの(福士蒼太)と金持ってるの(玉木宏)が壁ドンしたり、偶然居合わせたり、エレベーターでキスしたりと、こじらせている割にはやりたい放題。これ観るくらいだったら、某レーベルの成人向け映像作品観たほうが健全だ。精神的にも肉体的にも。
たかだか初セックスを社内の若い男としたくらいで会社辞めると言い出す時点で、本当にこじらせている女からは大ブーイング。女をこじらせてようが、長患いしてようが、男日照りが続こうが、干物女と呼ばれようが、このご時世、社会生活だけはきっちり営んで確保するだろ! と。綾瀬のこじらせがひどく甘ちゃんに見えて神経に障るのである。しかも若いのと金持ってるのから迫られるご都合主義。こじらせ業界やこじらせ団体からすれば、「ちっともこじらせてねーじゃん!」となるわけだ。
ただし、後輩の仲里依紗が救世主に。ぐじぐじこじらせているだけでなんの努力もしない綾瀬のような女を「そういう女をゴーマンって言うんですよ!」と言い放ったのである。他力本願ではなく実力行使の仲。この存在が視聴者の溜飲を下げるシステムに。夢見がちの綾瀬を一喝する意味では、親友役の平岩紙も重要だ。このふたりがいなければ、こじらせるという意味がまったく別の解釈になってしまうところだった。
で、もうひとつ。沢尻エリカ主演の『ファーストクラス』(フジテレビ系)。続編だが舞台もキャストも異なる新バージョンとして、異例の早さでつくられた話題作だ。実は、シーズン1の時から薄々気づいていた。エリカ、そんなに演技力あるわけじゃないなと。芝居がかったセリフ回し、いつからこんな芸風に? ハイパーなんちゃらとの騒動の後からか。
周囲から確実に苛められる受け身のおいしい役柄の割に、光るところがほぼない。
このドラマの見どころは役者の演技力よりも滲み出る悪意である。出演する役者陣を見ただけでも、随分と手練れの「悪意ダダモレ面の女優」を集めたもんだと感動した。その中でも、やはり期待を裏切らないのは、木村佳乃・ともさかりえ・倉科カナだろう。
観たことがない人のために解説を入れるとすれば、この作品は「心の声」が肝になる。心の中では理路整然と罵詈雑言を吐く女たち、というのが売りなのだ。個人的には、この心の声の温度と湿度が高すぎて、橋田壽賀子ドラマのようで疲れる、と思っているのだが、これはこれでウケているようだ。特にキツイのは、菜々緒&シシド・カフカの川島姉妹。言語の連係プレーは面白い時もあるが、うがった見方をすれば、「心の声が多い=演技力なくてもOK」ともとれる。で、木村・ともさか・倉科は、おそらく心の声に頼らずとも、迫力と演技力でエリカをこてんぱんに陥れることができる。彼女たちを観るために、私はこれを観続けるといってもいい。特に、ともさかは不幸そうで、余計にそそる。
主役の詰めが甘くても、サブ・脇でがっちりガード。これもドラマの醍醐味と再確認。
出典元:
http://www. excite.co.jp/News/column_g/20141028/Bizjournal_201410_post_6461.html
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