2014年9月、世界初のiPS細胞を使った手術が行われました。この手術は、加齢黄斑変性という目の病気を治療するために行われ、患者の皮膚細胞から作られたiPS細胞を網膜色素上皮細胞に変えて移植しました。手術を主導したのは理化学研究所の高橋政代博士で、目的は視力の改善ではなく、安全性の確認でした。1年間の観察で、移植した細胞が生着し、拒絶反応や腫瘍化が見られないことが確認されました。
iPS細胞は、体細胞に特定の遺伝子を導入して多能性を持たせた細胞で、様々な細胞に分化する能力があります。患者自身の細胞を使用するため、移植時の拒絶反応が少なく、倫理的な問題も少ないです。この技術は再生医療や病気の原因解明、新薬の開発に大きな可能性を秘めています。
iPS細胞の歴史は2006年に京都大学の山中伸弥教授が初めて作製したことから始まります。2007年にはヒトの体細胞からも作製に成功し、2012年にはノーベル生理学・医学賞を受賞しました。2014年には世界初のiPS細胞を使った臨床手術が行われました。
iPS細胞は、ES細胞(胚性幹細胞)や体性幹細胞と比較して、倫理的な問題が少なく、多能性を持つ点で優れています。再生医療、新薬の開発、病気のモデル作成など幅広い応用が期待されています。