さて、2017年度のトレンド判断は、
- 6月総選挙でメイ首相の立場がどれぐらい強まるか
- BOEが物価高にいつどの程度の対策を講じるか
- ブリグジット交渉進展内容(1月英最高裁判断・3月英国離脱通告・4月EU側交渉方針開示・第1回交渉・対立内容・9月独総選挙後の進展)
がポイントと捉えています。
【4-4-1. 6月概観】
総選挙の結果は与党が議席を減らしました。英首相は、棚ボタ式に首相になったイメージ払拭を謀り、EU離脱交渉の国内指導力強化を狙っていたものの、その目論見は外れました。前首相のEU離脱国民投票といい、どうもやらなくてもいい選挙を行って、ダメージを負うことが英国では続いています。
ただ、英国にとって良いこともあったと思われます。スコットランドの英国離脱住民投票は、対EU交渉後ということが独立派から表明されたようです。交渉結果を見て有意な方に就く、ということでしょうか。
けれども、欧州には歴史があります。そして苦しくなった旧恩先への裏切が嫌われるのは、洋の東西の問わず同じです。スコットランド独立派が勢いを盛り返すことは、住民の教養面からもEU側の道徳観からも、きっともうないでしょう。独立投票を今回の総選挙と同時期に行えなかったことは、独立派の政治的敗北と捉えています。
GBPJPY月足は、始値142.78円・高値146.54円・安値138.67円・終値146.50円で、値幅372pips・跳幅376pipsの陽線でした。値幅・跳幅がほぼ同じことからわかるように、上昇は月末頃に集中しました。
月足チャートを見る限り、2016年12月・2017年5月の高値である148円前半がレジスタンスとなり、5月安値の141.5円付近がサポートになります。148円後半〜149円台には、20〜24か月移動平均線があるため、もし上昇が続いてもここを上抜けるのは難しそうです。また、GBPJPY・GBPUSD・GBPEURの月足チャートを見比べると、最も馴染の薄いGBPEURの現在値が下降転換した基準線を上抜けたところで、基準線低下に反転・落下しかねない形をしています。
金利は、6月下旬のBOE総裁発言によって関心が高まっているにも関わらず、次回MPCは8月上旬で7月に行われません。このことも7月はGBPを上下に動きにくくしてしまうと考えられます。
【4-4-2. 政策決定指標】
BOEは、そうそう簡単に政策変更しないという話があります。もちろん、これは過去の実績で、BOE総裁もMPC委員も実際には入れ替わっているのだから、こんな話を当てにはできません。
(1) 金融政策
3月MPCでは、昨年7月以来の利上げ主張する委員が現れました。6月MPCでは利上げ主張委員が3名に増えました。昨年6月の国民投票以降のGBP安による物価が急上昇が利上げ派の主要論拠で、賃金上昇への悪影響(景気への悪影響)の懸念が様子見派の主要論拠です。
2017年6月15日、BOEは金融政策の現状維持を決めました。政策金利は0.25%のまま、量的緩和策による英国債保有残高も4350億GBPのまま、です。政策変更にあたっては、EUの新たな貿易協定締結やその移行期間設置の合意など、EU離脱交渉次第という条件が挙げられました。
6月下旬には、BOE総裁が利上げ検討の必要性について言及しました。但し、利上げに当たっては、物価上昇に伴う消費減速を企業投資が補えるかを前提に挙げていました。
(事例) BOE政策金利 (2017年6月15日発表結果検証済)
(2) 景気指標
製造業の景況感が悪化し始めると、サービス業もそれを追いかける、という言い伝えがあります。近年、この法則に当てはまらない事例が多々見受けられます。
7月3日に発表された製造業PMI、7月5日に発表されたサービス業PMIは、ともに2か月連続で前回結果を下回りました。いずれもまだ、50を超えているものの、年末・年始がピークで今後は下がり始めるのではないかと、先行きに不安を感じさせる内容でした。
(事例1) 製造業PMI (2017年7月3日発表結果検証済)
(事例2) サービス業PMI (2017年7月5日17:30発表予定、事前分析済)
(3) 物価指標
主要国でCPI(消費者物価指数)・RPI(小売物価指数)・PPI(生産者物価指数)が一度に発表されるのは英国だけです。CPIやRPIの発表結果が揃って改善/悪化すると、驚くほど大きく反応するので注意が必要です。
BOEの目標インフレ率は年2%程度です。既にコアCPIが+2%を上回っています。6月下旬までは、発表結果が市場予想を上回っても、素直に陽線で反応するとは限らない水準に達していました。がしかし、物価上昇を抑え込むために、6月下旬にBOE総裁は利上げ検討開始についてコメントしたのです。
BOE利上げ期待が生じたなかで、英1-3月GDPは+2.0%>米1-3月GDPは+1.4%です。GDPが逆転しない限り、物価上昇はGBP上昇に反応する、と解釈しています。
(事例) 物価指標 (2017年6月13日発表結果検証済)
(4) 雇用指標
多くのFX会社の経済指標カレンダーに示されている失業保険受給者数では反応しません。少なくとも直近の2-3年のデータを整理すると、平均所得(含ボーナス)の市場予想との多寡によって反応方向が決まりがちです。
(事例) 雇用統計 (2017年6月14日発表結果検証済)
【4-4-3. 経済情勢指標】
少し前までのIMF予想では、英国の2017年経済成長は1.5%となっていました。最新の見通しでは、2017年が2.05%、2018年が1.46%です。対する米国は2017年・2018年が各2.31%・2.52%で、EUはともに1.6%台となっています。英国成長率がいずれ急落することが予想されており、この予想が直近のGBP上昇の頭を押さえることに繋がります。
(1) 経済成長
EU離脱国民投票後、一時は成長がマイナスになるという解説記事さえあったものの、2016年はかなり好調でした。それだけに2017年は成長鈍化と見込まれていたものの、その兆しはまだ現れていません。
6月30日、GDP確定値は前期比+0.6%・前年比+2.0%で、改定値と同値でした。+2%の経済成長は米国同期の+1.4%より優位です。政策絡みでもFRBの次政策が「資産規模縮小で利上げでない」一方、BOEは「利上げの検討を向こう数か月以内に始める(6月28日BOE総裁発言)」ですから、GBPUSDはもう少しの上昇余地があると思われます。
(事例1) 四半期GDP速報値 (2017年4月28日発表結果検証済)
(事例2) 四半期GDP改定値 (2017年5月25日発表結果検証済)
(事例3) 四半期GDP確定値 (2017年6月30日発表結果検証済)
(2) 実態指標
他の国の実態指標ではあり得ないほど大きく反応します。先々の成長鈍化が予想される以上、平均的には指標への反応が、上に小さく下に大きくなると思われます。
7月7日発表の鉱工業生産指数は、5月の自動車生産の落ち込みが昨年2月以来の大幅な減少となったことを受けて低下しました。
(事例1) 小売売上高指数 (2017年4月21日発表結果検証済)
(事例2) 鉱工業生産指数 (2017年6月9日17:30発表結果検証済)
以上
もしこの記事が何か参考になったなら、どれか広告バナーをクリックして提携先に興味をお持ち頂けると幸いです。提携先はいずれも良心的なところを選んだつもりです。万が一、購入・登録・合意もしていないのにクリックしただけで勧誘メールが毎日来るようなったなら、 こちら(※9-1-4) までご一報をお願いします。
ーーー以下は広告ですーーー
ネット通販は便利ですが、カードがないと支払いが面倒です。YahooではTポイントを使っての買い物ができます。このカードは、Tポイントをうまく利用するためにも、年会費無料のなので1枚持っておくと便利です。
年会費無料【YJカード】
お買い物100円毎に1ポイントたまるYahoo!ショッピングでのお買い物なら、なんと通常の3倍
https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=2NZHFU+7QNN6+38JK+HVNAR