2017年8月1日17:30に英国景気指標「製造業PMI」が発表されます。今回発表は2017年7月分の集計結果です。
本指標発表から30分後(18:00)に、欧州GDPが発表されます。いつもより反応時間が短くなって、欧州GDPに備えた動きに移行することも考えられるので、ご注意ください。
また、今週はMPCが予定されています。先週発表された4-6月期GDP速報値が冴えない結果となり、7月のインフレ率は上昇がやや鈍化しました。金融政策転換をいつ行うのか、どのような内容で行うのか、関心が高まっています。景気指標の結果がそうした思惑に結び付くと、いつもとは異なる反応となる可能性があります。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 本稿は7月31日に記しています。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 反応程度は大きく、反応方向は指標結果の良し悪しに極めて素直に反応します。
- 追撃は早期参加し、発表から1分を経過したら利確の機会を探りましょう。過去の傾向では、指標発表後は大きく脈動しながらも、一方向へと反応を伸ばしがちです。早期参加、複数回に分けて追撃徹底に適しています。
- 指標発表前から他の指標に比べて大きく動きがちです。ときどき、かなり大きく動くこともあるものの、そうした動きは指標発表後の反応方向と無関係です。注意しましょう。
定型分析の結果は以下の通りです。
調査・分析結果は以下の通りです。
- 本指標の過去発表値グラフ形状は、2017年7月をボトムに上昇基調が1年間続いていました。
もし今回、市場予想を下回ると、2017年4月をピークとした下降基調転換の形状となってしまいます。
もし今回、市場予想を上回っても、よほど大きく市場予想を上回らない限り、上昇再開とは言えません。
上への反応が小さく、下への反応が大きくなりそうです。
(1) 過去の市場予想と発表結果を同時プロットしたグラフを見ると、市場予想後追い型のようにも見えます。
がしかし、そうではありません。前回結果と今回結果とで、市場予想と発表結果とが入れ替わったことが48%となっています。入れ替わり頻度が多く、これを根拠に今回も発表結果が市場予想を下回るとは言えません。
(2) 実態指標は景況感よりも遅れて発表されるので、参考になりません。現況判断で比較的アテにできるのは為替レートです。
6・7月のGBPUSDが陽線、EURGBPが陽線で、この間の強弱は、EUR>GBP>USD、の関係がありました。企業輸出にとってはやや有利、生活者物価には不利、な強弱関係でした。製造業PMIでは前者の関係が影響します。
(3) 先行き期待感については、報道内容が一定の影響を与えます。
6月は総選挙での与党議席減、6月末から7月中旬にかけてはEU離脱交渉難航と交渉方針を巡る閣内不一致、7月は4-6月期成長率減速、という見出しが報道で目立ちます。先行きについては肯定的なことより否定的なことが多かった時期だと思われます。 - 過去のローソク足の特徴は以下の通りです。
(1) ときどき(頻度20%)直前10-1分足跳幅がいつもより大きく(22pips以上)動くことがあります。がしかし、慌てて追撃すべきではありません。こうした事例で、直前10-1分足と同じ方向に直後1分足が反応したことは17%しかないのです。むしろ、逆張りのチャンスと捉えた方が良いぐらいです。
(2) ときどき(頻度20%)直前1分足跳幅がいつもより大きく(13pips以上)動くことがあります。がしかし、慌てて追撃すべきではありません。こうした事例で、直後1分足が直前1分足と同じ方向に反応したことは過去50%です。但し、こうした事例では直後1分足の反応が大きくなりがちです。次の方向が不明で大きく反応することを示唆しているのだから、こうした場合は要注意です。
(3) ときどき(頻度20%)直後1分足跳幅が33pips以上となることがあります。こうした事例では直後11分足終値が直後1分足跳幅を超えたことは1回しかありません。直後1分足跳幅が33pips以上のとき、追撃すべきではありません。 - 定型分析の結論は次の通りです。
(1) 直後1分足と直後11分足との方向一致率が高く、直後11分足が直後1分足の跳幅・値幅を超えた確率も高くなっています。早期参加・追撃徹底に適しています。
(2) 直前10-1分足はやや陽線への偏りが見受けられ、直前1分足はやや陰線に偏りが見られます。がしかし、いずれも取引基準の70%には達していません。
(3) 事後差異と直後1分足・直後11分足との方向一致率は各96%・83%に達しています。本指標は発表結果の市場予想に対する良し悪しに極めて素直に反応しています。 - 以上の調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
(1) 大きく脈動しながら一方向に反応を伸ばしがちな特徴に見合うように、指標発表後は早期参加・追撃です。追撃は複数回に分けて徹底します。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「?T.調査・分析」に記しています。
?T.調査・分析
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
PMIは、企業購買担当者に直接調査して算出されるため、景気実態を正確に反映した先行指標と言われています。本指標の意義は、鉱工業生産指数・製造業生産指数の発表に先立ち、それら集計月の企業景況感を知ることができること、です。
一般論として、製造業の材料・部品調達は、数か月先の取引先動向や製品需要から仕入れを行うため先行性がある、と言われています。それよりは先行性が劣るものの、サービス業も販売機会喪失を避けるため、消費者の動向に先んじようと必死です。
但し、この景況感の「先行性」については、以前ほど当てにならないようです。昔とは違って、流通経路が可視化・効率化され、企業購買部門の力量が向上し、国内サービス業を介さずに海外と直接取引を行うことができるから、です。サービス業の仕入れに至っては、今では消費動向とリアルタイムで一致しつつあるのです。
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本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で23pipsです。反応が大きいため、指標発表時刻を跨いでポジションを持つことは慎重でなければいけません。
また上表分布を別の言い方で説明すると、
- 12pips以下だったことは17%
- 13-23pipsが43%
- 24-33pipsが20%
- 34pips以上は20%
です。
13pipsから33pipsの跳ねが63%を占めています。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
グラフ形状は、2017年7月をボトムに上昇基調が1年間続いています。もし今回、市場予想を下回ると、2017年4月をピークとした下降基調転換の形状となってしまいます。
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グラフを一見すると、「市場予想後追い型」に見えなくもありません。確認しておきましょう。
調査期間において発表結果と市場予想の大小関係が入れ替わったことは29回中14回(48%)です。一見すると市場予想後追い型のように見えますが、意外に大小関係の入れ替わり頻度が高くなっています。
よって、本指標は現在、市場予想後追い型ではありません。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が15pipsです。跳幅がその1.5倍の22pips以上だったことは過去6回(20%)あります。
この6回の直後1分足跳幅は22pipsで、これは直後1分足の過去全平均23pipsとほぼ同じです。そして、この6回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回(17%)しか一致していません。
つまり、直前10-1分足の反応がいつもより大きくても(22pips以上あっても)、それが直後1分足の反応が大きいことや方向を示唆しているとは言えません。むしろ、直前10-1分足が大きく反応するときは、直後1分足は反対方向に反応する可能性が高い、と言えます。
次に、直前1分足の過去平均跳幅が9pipsです。この跳幅が13pips以上だったことは過去6回(20%)です。
この6回の直後1分足跳幅の平均は31pipsで、これは過去全平均23pipsより8pips大きくなっています。直前1分足がいつもより大きく動いたときには、直後1分足もやや大きく反応している可能性があります。
そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は3回(50%)が一致しています。反応方向を示唆している訳ではないようです。
そして、直後1分足の過去平均跳幅は23pipsです。この跳幅が33pips以上だったことは過去6回(20%)です。
この6回の直後11分足跳幅の平均は57pipsで、これは過去全平均47pipsより10pips大きくなっています。平均値ではこうですが、実際には直後11分足跳幅が10pips以上も直後1分足跳幅を超えたことは1回しかありません。
直後11分足は、過去平均跳幅が35pips、過去平均値幅が24pipsです。
【3. 定型分析】
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。
反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は86%です。そして、その86%の方向一致時に、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えたことは79%となっています。
できれば高値(安値)掴みは避けたいものの、これなら反応方向を確認したら早期参加です。
そして、発表から1分経過時点では、直後11分足値幅が直後1分足値幅を超えたことが57%となっています。他のパターン(直後11分足が、直後1分足の値幅を削ったり、直後1分足と反転したりすること)よりも、かなり高確率で反応を伸ばしています。
これなら利確はじっくりチャンスを待つことができます。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前10-1分足はやや陽線への偏りが見受けられ、直前1分足はやや陰線に偏りが見られます。がしかし、いずれも取引基準の70%には達していません。
最後に、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異と直後1分足・直後11分足との方向一致率は各96%・83%に達しています。本指標は発表結果の市場予想に対する良し悪しに極めて素直に反応しています。
【4. シナリオ作成】
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以上
2017年8月1日17:30発表
以下は2017年8月1日20:00頃に追記しています。
?U. 結果・検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は前回及び予想を上回り、反応は陽線でした。
今回の結果が悪いと、指標結果推移のグラフが下降基調に転じたとの印象を与えるところでした。まだ上昇に復したとは言えないまでも、下降が決定づけられることは避けられました。
改善は、新規輸出が大きく伸びたためです。
反応は1-2秒間始値付近に留まり、それから陽線を伸ばしました。一旦、146.7手前で跳ね返され、これはその付近に1時間足の雲上端があったため、と思われます。その後は145.8付近、146付近で迷ったものの、感触としてはスルスルと抜けた印象があります。
こうした動きとなった理由として、次の18:00に予定されていた欧州GDPで良い結果が期待されていたことが挙げられます。PMIでUSDが売られ、欧州GDP目がけてUSDが売られたようです。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
取引内容には問題ありません。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容を、以下に検証します
- 事前分析では、反応程度が大きく、反応方向は指標結果の良し悪しに極めて素直に反応する、としていました。
問題ありません。 - 事前分析では、追撃に早期参加し、発表から1分を経過したら利確の機会を探った方が良い旨、記しました。過去の傾向では、指標発表後は大きく脈動しながらも、一方向へと反応を伸ばしがちなので、早期参加・複数回に分けて追撃徹底に適している、と記していました。
これも問題ありません。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオは、早期参加・追撃徹底でした。
問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上