?T.指標予想要点
2017年9月12日17:30に英国物価指標が発表されます。発表される物価指標は「CPI(消費者物価指数)」「RPI(小売物価指数)」「PPI(生産者物価指数)」です。いずれも今回発表は2017年8月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 本指標の特徴は、発表項目数が多いため、予め注目しておく項目を絞り込んでおいた方が良いでしょう。注目するなら、CPI前年比>CPI前月比>その他、の順です。
論拠は、2?CPI前月比事後差異+3?CPI前年比事後差異、の解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と、指標発表直後の反応方向の方向一致率が89%となるためです。事後差異とは、発表結果ー市場予想、です。 - 反応は指標結果(CPI)に対して素直でかなり大きくなる傾向(直後1分足跳幅平均31pips)があります。
がしかし、追撃は早期開始して短期に留めるべきです。発表から10分を過ぎると、直後1分足終値よりも反応を伸ばしたことは過去30%しかありません。 - 取引が難しい指標であり、いくつか注意点があります。
まず、直前10-1分足・直前1分足の過去平均跳幅がそれぞれ15pips・9pipsと大きい点です。そして、直前10-1分足が20pips以上跳ねたことは19%、直前1分足が10pips以上跳ねたことは26%と、それぞれ4・5回に1回程度はそういう場面に出くわします。ところが、直前10-1分足の反応が20pips以上跳ねたり、直前1分足が10pips以上跳ねても、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。
釣られて慌てて追撃すると、痛い目に遭いかねません。
そして、直前10-1分足は逆ヒゲが多く、直後1分足や直後11分足の戻り比率(1−跳幅/値幅)は40%前後にも達しています。
どの時点であれ、高値(安値)掴みをしやすい動きをしがちなので、気を付ける必要があります。
それらの取引が難しい特徴を有していながら、結果的に、直前10-1分足の陽線率は74%。直前1分足の陰線率は82%と、偏りが見られます。また、事前差異(市場予想ー前回結果)と直後1分足の方向一致率が73%となっています。
いずれも決め打ちでポジションを取ってもよい確率となっているものの、外したときの損切も大きい指標です。
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陽線と見込みます。
ヒゲが目立つので、タイミングが合わなければ諦めて、無理にポジションを取る必要はありません。 - 直前1分足は陰線と見込みます。
ヒゲが目立つので、タイミングが合わなければ諦めて、無理にポジションを取る必要はありません。 - 直後1分足は、事前差異判別式符号と同じ方向に指標発表直前にポジションを取得し、発表後の跳ねで利確/損切します。
但し、市場予想は発表直前によく確認し、事前差異が変更になっていないか確認しましょう。事前差異判別式は、2?CPI前月比事前差異+3?CPI前年比事前差異+その他項目のI事前差異、です。 - 追撃は、早期開始し発表から1分程度で利確/損切します。
再度の追撃は、発表から1分を過ぎてから逆張りの機会を狙います。逆張りは、直後1分足終値よりも跳ねているときに行えなければ失敗です。
但し、CPI前年比が3%を超えた場合には、順張り追撃徹底とします。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「?T.調査・分析」に記しています。
?U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
他の主要国では、CPI・RPI・PPIは別々に発表されます。が、英国は一度に発表しています。
CPIは、消費者の製品・サービス購入価格を指数化した指標で、どの国でも最重視されています。英国は年2%のインフレ目標が設定されています。CPIコアは、CPIから価格変動の激しいエネルギー・食品・タバコ・アルコールを除いた数値を指しています。
RPIに含まれてCPIに含まれない対象に住宅費があります。RPIではCPIよりも数値が高くなります。RPIコアは、RPIから価格変動の激しいエネルギー・食品・タバコ・アルコールを除いた数値を指しています。英国では年金給付額が法律によってRPI規準で決定されています。
PPIはあまり大きな反応を生じないように見受けられます。
過去の傾向から言えば、CPI>RPI>PPIの順に反応に寄与し、前年比>前月比の順です。重視するCPI前年比は総合>コアと、コアが軽視(という訳じゃないでしょうけど)される点が特徴です。
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本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は過去平均で31pipsと、かなり大きく反応する指標です。15pips以下しか反応しなかったことは10%しかなく、発表時刻を跨いでポジションを持つことには慎重でなければいけません。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
注目すべき点は、どの項目にせよ前年比が右上がりで推移しています。そして、そろそろその右上がりが頭打ちになっています。
少し前までは、このグラフが右上がりだからこそ、BOEの利上げが近い、と話題に挙がっていました。そして、直近ではその右上がりが頭打ちになって下降に転じた気配があるからこそ、利上げを急がなくても良いのではないか、という話が挙がっています。
8月3日に公表されたBOEのインフレ報告は「インフレ率は2017年10月に3%付近でピークと予想」との見通しを示しています。そして、8月9日には「ここ数か月の消費支出は減速し、ポンド安が輸出を支援するものの、英国のインフレはピークに近い可能性」との見解を示しました。
どっちなんだ、と言う内容で、参考になりません。
前回8月15日の物価指標発表結果は、CPIが横這い、RPIが上昇。PPIが下降でした。まちまちの結果となったものの、それでもCPI前年比は+2.6%でした。
ここからはCPIに限った話です。グラフ推移を見てみましょう。
再び「利上げが近い」と思わせるためには、前月比・前年比がともに3%付近まで上昇するとともに、コアCPI前年比の低下も止まる必要がある、と考えられます。一方「もう利上げの可能性は低い」と思わせるためには、前月比・前年比が現状より低下するだけで十分です。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が15pipsです。跳幅が20pips以上だったことは過去6回(頻度19%)あります。この6回の直後1分足跳幅は28pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均31pipsとほぼ同じです。そして、この6回の直前10-1分足と直後1分足の方向は4回(67%)一致しています。
つまり、直前10-1分足の反応が20pips以上動いたからと言って、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は9pipsです。取引中にパッと計算しやすいように、跳幅が10pips以上だったことは過去8回(26%)あります。この8回の直後1分足跳幅の平均は29pipsで、これは過去全平均31pipsとほぼ同じです。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は3回(38%)しか一致していません。
つまり、直前1分足の反応が10pips以上動いたからと言って、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は12pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率39%)です。直後11分足のそれは16pips(戻り比率42%)です。直後11分足の戻り比率が40%を超えており、高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
【3. 定型分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事前差異と直後1分足の方向一致率は73%です。市場予想がプラス/マイナスなら、直後1分足が陽線/陰線側に跳ねる可能性が高い、ということです。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ89%・74%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前10-1分足の陽線率が74%、直前1分足の陰線率が82%と、偏りが見受けられます。
そして、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は63%と、あまりアテに出来ない数字です。そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは30%しかありません。
この数字では、順張り追撃を勧められません。むしろ、直後1分足終値が付いた時点で逆張りした方が良さそうな数字です。もちろん、逆張りは勧められません。
【4. シナリオ作成】
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陽線と見込みます。
ヒゲが目立つので、タイミングが合わなければ諦めて、無理にポジションを取る必要はありません。 - 直前1分足は陰線と見込みます。
ヒゲが目立つので、タイミングが合わなければ諦めて、無理にポジションを取る必要はありません。 - 直後1分足は、事前差異判別式符号と同じ方向に指標発表直前にポジションを取得し、発表後の跳ねで利確/損切します。
但し、市場予想は発表直前によく確認し、事前差異が変更になっていないか確認しましょう。事前差異判別式は、2?CPI前月比事前差異+3?CPI前年比事前差異+その他項目のI事前差異、です。 - 追撃は、早期開始し発表から1分程度で利確/損切します。
再度の追撃は、発表から1分を過ぎてから逆張りの機会を狙います。逆張りは、直後1分足終値よりも跳ねているときに行えなければ失敗です。
但し、CPI前年比が3%を超えた場合には、順張り追撃徹底とします。
以上
2017年9月12日17:30発表
以下は2017年9月12日18:40頃に追記しています。
?V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は巻頭に挙げた全項目で前回結果・市場予想を上回り、反応は陽線でした。
直後1分足跳幅は52pipsで、これは2015年7月分以来の跳幅でした。直後11分足値幅は58pipsで、こちらは2017年1月分以来の値幅でした。反応程度は、2015年以来2・3番目に大きくなりました。
指標の方は、直近ピークである2017年5月分とCPI前年比は同値、コアCPI前年比はそれを上抜けました。コアRPI前年比はとうとう4%を上抜けました。
これでは、反応が大きくなるのも当然です(利上げ期待が高まって)。
がしかし、明日9月13日には雇用統計発表があり、平均所得がこれほどのペースで上がることはないでしょう。よって、今夜のUSDJPYの動きが読めないものの、今夜から明日AMのどこかでGBPJPYは明日の雇用統計を睨んで下がり始める、と思われます。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
問題ありません。
17:26分頃にどんと10pipsぐらい下げて、17:27分頃にどんと20pipsぐらい反発する動きがありました。事前分析に基づき追いかけはしないものの、こんなことがあるから英国指標は危ないのです。他の主要国のほとんどの指標では、往復30pipsの動きなんて、指標発表直後にしか起きません。
逆張り追撃で損切となっていますが、これは分析結果に基づくもので、仕方ありません。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査・分析内容には問題ありません。
但し、発表後1分を過ぎたら反応を伸ばすことよりも、そうならないことの方が多い、とした点は、今回の事例で当たりませんでした。
がしかし、まだ来月もここは見直す必要がないでしょう。今回の結果によって、直後1分足終値よりも直後11分足終値が伸びる確率は32%に改善しました。まだ32%です。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオには問題ありません。来月もそのまま使えるでしょう。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上