?T.指標予想要点
2017年10月17日17:30に英国物価指標が発表されます。発表される物価指標は「CPI(消費者物価指数)」「RPI(小売物価指数)」「PPI(生産者物価指数)」です。いずれも今回発表は2017年9月分の集計結果です。
本指標発表15分前にBOE総裁の発言が予定されており、これには注意が必要です。直後にGBPが動きやすい物価指標発表を控えて、何を言うつもりかわかりませんが、利上げ有無に関する発言があった場合、以下の分析は関係なくなる可能性があります。
今回の指標予想と前回結果、及び、過去の反応程度と分布は下表の通りです。市場予想は本記事投稿時点(10月15日)の値なので、指標発表1時間前に再確認してください。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 本指標の特徴は、発表項目数が多いため、予め注目しておく項目を絞り込んでおいた方が良いでしょう。注目するなら、CPI前年比>CPI前月比>その他、の順です。
論拠は、2?CPI前月比事後差異+3?CPI前年比事後差異、の解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と、指標発表直後の反応方向の方向一致率が86%となるためです。事後差異とは、発表結果ー市場予想、です。 - 反応は指標結果(CPI)に対して素直でかなり大きくなる傾向(直後1分足跳幅平均31pips)があります。
がしかし、追撃は早期開始して短期に留めるべきです。発表から10分を過ぎると、直後1分足終値よりも反応を伸ばしたことは過去32%しかありません。
いわゆる「抜けたら追う」ポイントは、陰線が△20pips付近、陽線が+30pips付近と見込まれます。直後1分足終値がこれらを抜けた場合、直後11分足終値は直後1分足終値の値幅を削ることはあっても、反転したことがありません。むしろ、その後も大きく値を伸ばしたことが多く、期待値の点で抜けたら追撃徹底です。 - 取引が難しい指標であり、いくつか注意点があります。
まず、直前10-1分足・直前1分足の過去平均跳幅がそれぞれ15pips・9pipsと大きい点です。そして、直前10-1分足が20pips以上跳ねたことは22%、直前1分足が10pips以上跳ねたことは25%と、それぞれ4・5回に1回程度はそういう場面に出くわします。覚えておくことは、直前10-1分足の反応が20pips以上跳ねたときには、直後1分足も同じ方向に反応したことが71%ある点です。
また、直前10-1分足は逆ヒゲが多く、直後1分足や直後11分足の戻り比率(1−跳幅/値幅)は40%前後にも達しています。どの時点であれ、高値(安値)掴みをしやすい動きをしがちなので、気を付ける必要があります。
それらの取引が難しい特徴を有していながら、結果的に、直前10-1分足の陽線率は75%。直前1分足の陰線率は83%と、異常な偏りが見られます。事前差異(市場予想ー前回結果)と直後1分足の方向一致率が71%と、取引参加者は予め指標発表後の反応方向がわかっているような偏りがあります。
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陽線と見込みます。
ヒゲが目立つので、タイミングが合わなければ諦めて、無理にポジションを取る必要はありません。 - 直前1分足は陰線と見込みます。
ヒゲが目立つので、タイミングが合わなければ諦めて、無理にポジションを取る必要はありません。 - 直後1分足は、事前差異判別式符号と同じ方向に指標発表直前にポジションを取得し、発表後の跳ねで利確/損切します。もしも直前10-1分足が20pips以上跳ねたら、その跳ねた方向にポジションを取ることを優先します。
但し、市場予想は発表直前によく確認し、事前差異が変更になっていないか確認しましょう。事前差異判別式は、2?CPI前月比事前差異+3?CPI前年比事前差異+その他項目のI事前差異、です。 - 追撃は、早期開始し発表から1分程度で利確/損切します。
- もし直後1分足終値が△20pipsか+30pipsを抜けたら、追撃は徹底します。抜けなければ、発表から1分を過ぎてから逆張りの機会を狙います。逆張りは、直後1分足終値よりも跳ねているときに行えなければ失敗です。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「?T.調査・分析」に記しています。
?U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
他の主要国では、CPI・RPI・PPIは別々に発表されます。が、英国は一度に発表しています。
CPIは、消費者の製品・サービス購入価格を指数化した指標で、どの国でも最重視されています。英国は年2%のインフレ目標が設定されています。CPIコアは、CPIから価格変動の激しいエネルギー・食品・タバコ・アルコールを除いた数値を指しています。
RPIに含まれてCPIに含まれない対象に住宅費があります。RPIではCPIよりも数値が高くなります。RPIコアは、RPIから価格変動の激しいエネルギー・食品・タバコ・アルコールを除いた数値を指しています。英国では年金給付額が法律によってRPI規準で決定されています。
PPIはあまり大きな反応を生じないように見受けられます。
過去の傾向から言えば、CPI>RPI>PPIの順に反応に寄与し、前年比>前月比の順です。重視するCPI前年比は総合>コアと、コアが軽視(という訳じゃないでしょうけど)される点が特徴です。
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本指標に関する反応推移と相関分布を下図に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は過去平均で31pipsと、かなり大きく反応する指標です。最近は、利上げに絡んで明らかに反応が大きくなっています。
また、直前10-1分足終値(横軸)に対する直後1分足終値(縦軸)には相関がなく、直後1分足終値(横軸)に対する直後11分足終値(縦軸)は相関があることがわかります。直後1分足終値が△20pipsから+30pipsの範囲内では反転の恐れがあり、いわゆる「抜けば追う」の抜くべき閾値がその付近にあることがわかります。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
8月3日に公表されたBOEのインフレ報告では「インフレ率が2017年10月に3%付近でピークと予想」との見通しが示されています。そして、8月9日には「ここ数か月の消費支出は減速し、ポンド安が輸出を支援するものの、英国のインフレはピークに近い可能性」との見解を示しました。ところが、9月12日に発表されたCPI前年比・コアCPI前年比は再上昇し、特にコアCPI前年比は直近の最大値を上抜けて+2.8%に達しました。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が15pipsです。跳幅が20pips以上だったことは過去7回(頻度22%)あります。この7回の直後1分足跳幅は31pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均31pipsと同じです。そして、この7回の直前10-1分足と直後1分足の方向は5回(71%)一致しています。
つまり、直前10-1分足が20pips以上跳ねたときは、直後1分足はそれと同じ方向に反応することを示唆している可能性があります。直後1分足が大きく反応するとは言えません。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は9pipsです。取引中にパッと計算しやすいように、跳幅が10pips以上だったことは過去8回(25%)あります。この8回の直後1分足跳幅の平均は29pipsで、これは過去全平均31pipsとほぼ同じです。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は3回(38%)しか一致していません。
つまり、直前1分足の反応が10pips以上動いたからと言って、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は11pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率35%)です。直後11分足のそれは16pips(戻り比率41%)です。直後11分足の戻り比率が40%を超えており、高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
【3. 定型分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下図に示します。
事前差異と直後1分足の方向一致率は71%です。市場予想がプラスなら直後1分足は陽線、マイナスなら陰線となる期待的中率が71%ということです。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ86%・71%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
次に、反応一致性分析の結果を下図に示します。
直前10-1分足の陽線率が75%、直前1分足の陰線率が83%と、偏りが見受けられます。
そして、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、反応性分析の結果を下図に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は65%と、あまりアテに出来ない数字です。そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは32%しかありません。
この数字では、順張り追撃を勧められません。むしろ、直後1分足終値が付いた時点で逆張りの機会を窺った方が良さそうな数字です。もちろん、逆張りは勧められません。
【4. シナリオ作成】
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陽線と見込みます。
ヒゲが目立つので、タイミングが合わなければ諦めて、無理にポジションを取る必要はありません。 - 直前1分足は陰線と見込みます。
ヒゲが目立つので、タイミングが合わなければ諦めて、無理にポジションを取る必要はありません。 - 直後1分足は、事前差異判別式符号と同じ方向に指標発表直前にポジションを取得し、発表後の跳ねで利確/損切します。もしも直前10-1分足が20pips以上跳ねたら、その跳ねた方向にポジションを取ることを優先します。
但し、市場予想は発表直前によく確認し、事前差異が変更になっていないか確認しましょう。事前差異判別式は、2?CPI前月比事前差異+3?CPI前年比事前差異+その他項目のI事前差異、です。 - 追撃は、早期開始し発表から1分程度で利確/損切します。
- もし直後1分足終値が△20pipsか+30pipsを抜けたら、追撃は徹底します。抜けなければ、発表から1分を過ぎてから逆張りの機会を狙います。逆張りは、直後1分足終値よりも跳ねているときに行えなければ失敗です。
2017年10月17日17:30発表
以下は2017年10月17日20:00頃に追記しています。
?V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は全体的に物価上昇が停滞したものの、高い水準の物価上昇率であることに違いありません。反応は、陰線側に大きく跳ねた後、陽線に転じました。そして、その後は18:00前に149円を上抜いた後、また下降に転じました。
細かく見ていきましょう。
コアCPI前年比は+2.7%で、前回・予想と同値でした。CPIは、前年比が+3.0%と前回より0.1ポイント上昇したものの、前月比は+0.3で予想通りだったものの、前回+0.6%から下降しました。コアRPI・RPIは、前年比・前月比ともに予想を下回ったものの、コアRPI前年比は+4.1%と前月同値の高い水準です。
指標発表直後の陰線は、予想を下回った項目が多かったからと考えられます。そして、内容を見ると、予想を下回ったとは言え、利上げの理由にこそなれ、金融政策を何もしなくて良い数字ではありません。それが、陽線側への反転と考えられます。そして、18:00のZEW発表を控え、EUR買が始まってGBPは下げ始めましたのではないでしょうか。18:30には、英中銀副総裁が「インフレの脅威水準を未だ下回っている」と発言したとの報道をロイターが流したことで、GBP売が決定的となりました。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
直前10-1分足での決済は失敗しました。
ポジション取得は、GBPJPYがすとんと落ちたときに急いでポジション取得し、これは成功でした。がしかし、発表直前まで上昇を続けると見込んで、17:23頃の高値で利確をやめたのです。直前10-1分足の過去平均跳幅は、10pipsを超えているので、まだまだ伸びると考えたのです。
直前1分足は、ポジション取得を諦めました。直前10-1分足を外した結果、次の指標発表時刻を跨いだポジション取得をすべきか否か、決める時間が必要だったためです。
指標発表直後の陰線側への跳ねを除けば、対象期間中はほぼ陽線側に反転する動きでした。にも関わらず、売りばかりで追撃を行っています。幸い2勝1敗ですが、危ない取引方法で反省すべきです。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容には問題ありません。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオには問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
前月までの集計欄に間違いがあったので訂正しています。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上