?T.反応要点
2017年12月5日22:30に米国収支指標「貿易収支」が発表されます。今回発表は2017年10月分の集計結果です。
本指標は毎月第1週に発表されるため、貿易収支単独で発表されるのは数か月に1回です。他の指標と同時発表される場合は、貿易収支の結果は反応に現れません。反応が小さすぎるのです。
今回は、貿易収支単独で発表されるので、本指標の特徴が現れやすいはずです。
前回結果・市場予想と、以下の分析対象期間と、反応分布は次の通りです。下表は、2015年1月分から前月2017年9月分までの33回のうち、火曜と水曜に発表された16回の結果を集計したものです。
木曜は週次新規失業保険申請件数と、金曜は雇用統計と、同時発表されることが多いのです。そのため、本指標の特徴はチャート上に現れない、と考えられます。そこで、火曜と水曜に発表された16回の結果を集計した訳です。
指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足跳幅の平均値は僅か6pipsしかありません。その平均値以下しか反応しなかったことは全体の69%にも達しています。本指標は反応しないのです。がっかりしないように予め。
?U.指標要点
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
貿易収支は経常収支の一部で、経常収支には貿易収支の他にサービス収支・所得収支・経常移転収支があります。一般に他の項目と比べて貿易収支が大きいため、経常収支の中で貿易収支が注目されます。
ところが、注目されると言っても、それはFX参加者についてではありません(そう思います)。前述の通り、本指標は単独で発表されたとき、ほとんど反応がチャート上に現れていないからです。
米貿易収支の増減は、消費財赤字とエネルギー輸入赤字とが、それぞれどう増減するかです。消費財輸入は景気次第、エネルギー輸入は原油価格次第、です。前者が割と単純に増減するのに比べ、後者は少し複雑です。
貿易赤字の3割弱を占める原油輸入は、シェール革命によって一時期減少に向かい、いずれ黒字化するとさえ言われていました。ところが、世界的な原油価格低迷により、シェール油井は採算割れして採掘中止に追い込まれています。直近の原油価格は50ドルまで戻しましたが、70ドル付近まで戻せばシェール油井操業が復活すると言われています。
そういう日が来るまで、本指標への反応は小さいままでしょう。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。ここでは、2015年1月分から前月2017年9月分までの33回のうち、火曜と水曜に発表された16回の結果のみをプロットしています。
【3. 定型分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下図に示します。
前回結果と市場予想と発表結果との間に、大小関係で見るべき偏りはありません。事前差異のマイナス率が63%とやや偏りがあるものの、ばらつきの範囲内でしょう。
直前10-1分足は事後差異との方向一致率が73%となっています。指標発表前に指標発表結果の良し悪しを予見いているかのようです。
事後差異と直後1分足の方向一致率は47%しかなく、市場予想に対する発表結果の良し悪しに反応方向は関係ありません。
実態差異と直後11分足の方向一致率は44%です。前回結果に対する発表結果の良し悪しに反応方向は関係ありません。
次に、反応一致性分析の結果を下図に示します。
直前1分足の陰線率が67%と、やや偏りが見受けられます。
そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率も67%と、あまり高くあまりません。また、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、反応性分析の結果を下図に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は67%です。指標発表直後には、その後も反応が伸び続けると信じるしかありません。67%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは90%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは47%です。よって、早期追撃で得たポジションは、早めに利確の機会を早めに探った方が良さそうです。
【4. シナリオ作成】
本指標の特徴は以下の通りです。
- 本指標は他の指標と同時に発表されることが多く、そのため本指標単独での反応への影響がわかりません。他の指標と同時でなく、本指標単独で発表されるときの直後1分足跳幅は僅か6pipsしかありません。
- 本指標単独で発表されたときには、指標発表後よりも指標発表前の方が、指標の影響が現れているようです。
以上の本指標特徴を踏まえ、本指標では取引を行いません。
以上
2017年12月5日22:30発表
以下は2017年12月9日に追記しています。
?V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は前回・予想を上回る赤字で、反応は陰線でした。
次回発表は2018年1月5日22:30です。取引する予定はありません。
(5-2. 取引結果)
本指標での取引は行いません。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
直後1分足跳幅は2pips未満となっています。本指標が単独で発表されたときの反応は、この程度に過ぎないことが再確認できました。
過去に本指標が単独で発表されたときの直後1分足跳幅平均は6pipsです。この時刻におけるUSDJPYがこの程度動くことは、もともと珍しくありません。そういう意味で、やはり本指標は事前の指標分析に基づく取引に向いていません。
指標一致性分析の結果、直前10-1分足は事後差異との方向一致率が73%となっていました。今回の直前10-1分足は陽線だったにも関わらず貿易収支は悪化したので、直前10-1分足と事後差異の方向は不一致でした。
(6-2. シナリオ検証)
取引予定がない指標なので、シナリオはありません。
下表に、本ブログを始めてからの取引成績を纏めておきます。
幸い、無理にシナリオを用意していた頃の損益がプラスになっていますが、もともと反応が小さい指標なので、毎回1枚の取引で¥678にしかなっていません。ここで(2月と4月の発表時)、本指標での取引を止めたことこそ、意味があると考えています。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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