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英国GDPの80%弱はサービス部門が占めています。小売業はGDPの30%程度を占めています。金融業もGDPに大きく寄与していると思われますが、その比率は資料によってまちまちでよくわかりません。
鉱工業・製造部門はGDPの10数%を占めているようです(これも資料によって数値が違います)。そして、鉱工業部門と一部重複するものの、エネルギー関係もGDPの10%を占めるとされています。エネルギー関係がGDPの10%も占めるのは、先進国では英国だけです。エネルギー関係も含めた鉱工業・製造業部門は、輸出の80%程度を占めています。そのためか、英国の鉱工業生産指数・製造業生産指数は、他の主要国に比べて非常に大きく反応します。
小売指数も生産指数も、英国の実態指標は他の国のそれよりもかなり大きく反応します。実態指標で指標発表後に50pipsにも及ぶ反応を年に何度も起こすのは英国指標だけです。では、英国経済はそれほど世界に影響を与えるのか。そんな訳ありません。この現象は、それだけGBPが投機対象だということを示しているのでしょう。
こんな指標で取引を繰り返すには、反省と分析を繰り返すだけでは不十分です。その場の流れにうまく乗れないと、分析上手だけでは勝てないのです。取引が難しい指標が多い分野です。
【4-4-2.(1) 経済成長】
少し前までのIMF予想では、英国の2017年経済成長は2.0%となっていました。最新の見通しでは、2017年が1.7%、2018年が1.5%です。対する米国は2017年・2018年ともに2.1%(4月時点で2017年は2.3%)で、EUはともに1.9%・1.7%となっています。
英国との関係が深いEU・米国に成長率が今年抜かれるという点がポイントでした。
現状は先々の成長鈍化が予想されており、問題はどこまで鈍化するのかが見通せないことです。先が見通せないときは、為替レートは頭を押さえられがちです。当面、英国指標への反応は、平均的にGBP高に小さくGBP安に大きくなると思われます。
漠然としたことにも対策は必要です。例えば、指標毎の過去平均反応pipsを見て、GBP高は1割小さくGBP安は3割大きく見込んでおけばどうでしょう。
6月30日に発表された1-3月期GDP確定値は、前期比+0.6%・前年比+2.0%でした。
9月29日に発表された4-6月期GDP確定値は、前期比+0.3%・前年比+1.5%でした。
10月25日に発表された7-9月期GDP速報値は、前期比+0.4%・前年比+1.5%でした。
11月23日に発表された7-9月期GDP改定値は、前期比・前年比ともに速報値と同値でした。
ロイターが伝えるところでは、7-9月期GDP改定値前年比の伸びは過去5年間で最低だそうです。それでも、+1.5%となったのは、家計支出の伸びに助けられた、とのことです。
「ん」って思いませんか?
だって、物価上昇の伸びに比して賃金の上昇が小さい状態が続いていたのが、ここ最近の一貫した英国経済への見方でした。今回の結果は、企業投資の伸びが抑えられて家計消費が大きかったのなら、ここ最近の見解を変えなければいけないかも知れません。
次回、7-9月期GDP確定値は12月22日に予定されています。家計消費がそのままで、EU離脱を睨んだ企業投資低迷が今後のトレンドになるのかに注目しましょう。
(分析事例) 四半期GDP速報値 (2017年10月25日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値 (2017年11月23日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP確定値 (2017年9月29日発表結果検証済)
速報値は、早期参加・追撃徹底に適しています。少なくとも発表から1分足を過ぎて、直後1分足値幅を削ることは27%あっても、直後1分足と逆方向に反転したことは7%しかありません。
一方、改定値の市場予想は、前回発表値(同期速報値)といつも同じです(2013年1-3月期以降、例外は2回)。発表結果も、ほぼ市場予想通りになりがちです(例外6回)。その結果、指標発表後は、直後11分足の戻り比率(1ー値幅/跳幅)が48%にも達し、かなり上下動が大きくなっています。反応は一方向に伸びずに途中反転することも多く、追撃に向いていません。
確報値も市場予想が前回改定値となっていることが多く、また、その市場予想がほぼ当たります。過去17回の確報値発表時の市場予想が前回改定値と異なったことは2回(頻度12%)しかありません。発表結果が市場予想と異なったことは6回(頻度35%)しかありません。その結果、確定値も追撃にはあまり向いていません。
【4-4-2.(2) 実態指標】
(2-1) 小売
英国経済に占める個人消費は約40%です。そのほとんど30%程度が小売に依るものです。
日米でそれが70%を占めることを踏まえると、影響は小さい気がします。ところが、です。他国の消費動向指標(小売売上高を含む)に比べると、英国のそれは桁外れに大きく反応します。
消費関連指標として、BRC小売売上高調査と小売売上高指数が発表されます。BRC小売売上高調査は、発表時刻の関係(09:01発表)で反応が小さい上に、東証開場時刻のUSDJPYの動きで反応がよくわかりません。よって、先述の桁外れの反応があるのは、小売売上高指数の方です。
小売売上高指数の前月比・コア前月比は上下動が大きく、予想が困難です。前年比・コア前年比の推移を見ると、2016年末頃から下降基調となっています。一時は前年比7%程度まで売上が増えていたのに、最近では1〜2%付近となっています。マイナス転換が近いことを予感をさせます。
8月17日に発表された7月分結果は前回を下回り、グラフ推移を見ると2016年12月頃を起点とする下降基調がはっきりしてきました。
9月14日に発表された8月分結果は、久しぶりに前年比・コア前年比が+2%以上となりました。結果、100pipsもの陽線で反応しました。
10月19日に発表された9月分結果は、コア前年比が+1.6%へと減少したことを始め、他もどちらかと言えば前月より下がりました。それにも関わらず、この後にBOEは利上げを行いました。驚きです。
GDP計算にはコア指数なんて関係ありません。指数の前月比だけを見てとると、3月集計分を基準1として、4-6月期は+1.7%、7-9月期は+2.2%で、その差+0.5%分だけ7-9月期のGDP前期比にプラス寄与するでしょう。
11月16日に発表された10月分結果と12月14日に発表された11月分結果は、前月比が+0.3%・+1.1%と好調です。但し、前年比はとうとう10月分でマイナス転換しました。前年比は2013年以来の大きな落ち込みだったので、当面は発表前に弱気な動きが続くのではないでしょうか。
(分析事例) 小売売上高指数 (2017年11月16日発表結果検証済)
さて、この小売売上高指数の取引にあたっては、指標発表前に安易にポジションを取るべきではありません。
直前10-1分足が20pips以上のヒゲを形成したことは過去42%もあります。加えて、この42%のヒゲの伸びた方向は、指標発表直後1分足の反応方向と関係ないのです。本指標の直前10-1分足は、跳幅平均21pips・値幅13pipsと、そんじょそこらの指標の発表直後よりも大きく動くのです。
がしかし、直前10-1分足のヒゲではなく、値幅方向ならば指標発表結果の良し悪しを示唆しがちです。
まず、判別式として、前月比事前差異+前年比事前差異+3?コア前月比事前差異+コア前年比事前差異、の解の符号は、直前10-1分足値幅方向との方向一致率が74%です。
直前10-1分足は、74%の期待的中率で市場予想と前回結果からアテにできます。
事後差異判別式は、3?前月比事後差異+1?前年比事後差異+4?コア前月比事後差異+2?コア前年比事後差異、で求まります。この判別式の解の符号と直後1分足は84%の確率で方向一致します。前月比とコア前月比の発表結果の市場予想とのズレが、反応方向に強く影響するということです。
但し、そこまでわかっていても、直後1分足のヒゲの長さ(戻しの大きさ)は、長跳幅の40%にも達しているので、追撃を行うときには高値(安値)掴みに気を付けないといけません。本指標は、過去平均の反応が大きい指標なので、参加者も多く値動きが早くなります。そういう意味で取引が難しい指標です。
通信速度に不安がある出先でのスマホ取引には、あまり向いていませんよね(何度か痛い目に遭いました)。
2017年は、本指標で8回取引きし、4勝4敗で勝率は50%でした。シナリオ単位では17勝9敗(勝率65%)でした。勝ちは大きく、負けは追撃で挽回できており、比較的抑えられています。
ともあれ、反応が大きくヒゲが長い指標では、こうした勝ち方になってしまいます。2018年は、ポジション毎の取引時間をもっと短縮して、利益も損失ももっと小さく抑え、その代わりに勝率向上によってもっと安全な取引を行います。
(2-2) 生産
鉱工業生産指数と製造業生産指数とは同時発表されます。いずれも企業生産高の基準年を100として指数化した経済指標です。他の先進国の鉱工業生産関連指標よりも反応が大きい、という特徴があります。
9月8日に発表された7月分鉱工業生産指数前月比は+0.2%、同月分製造業生産指数前月比は+0.5%でした。
10月10日に発表された8月分鉱工業生産指数前月比は+0.2%、同月分製造業生産指数前月比は+0.4%でした。前月比プラス推移は鉱工業生産指数が3か月連続、製造業生産指数が2か月連続です。
7-9月期GDPは、鉱工業・製造業部門に関しては改善が期待できます。
11月10日に発表された9月分鉱工業生産指数前月比は+0.7%、同月分製造業生産指数前月比も+0.7%でした。予想と乖離がかなり大きかったものの、陽線での反応は過去平均程度でした。前週に発表されたBOE利上げで、当分は上に伸び難い状況になったことを示唆する動きでした。
12月8日に発表された10月分は、前年比が鉱工業・製造業ともに大きく前回を上回りました。もともと、前年比のグラフ推移は、昨年の10月分が鉱工業生産指数・製造業生産指数ともに大きく落ち込んでいたので、指標発表直後の反応はほとんどありませんでした。次回11月分集計結果が発表される来年1月以降は、前年がかなり良い時期だったので、悪い数字が続き始めると予想されます。
(分析事例) 鉱工業生産指数・製造業生産指数 (2017年12月8日発表結果検証済)
本指標発表前は、2?鉱工業生産指数前月比事前差異+2?鉱工業生産指数前年比事前差異+1?製造業生産指数前月比事前差異+1?製造業生産指数前年比事前差異、という判別式を用いると、この判別式の解の符号と直前10-1分足の方向一致率が21%です(不一致率79%)。
市場予想の全体的な良し悪しに対し、指標発表時刻が迫ると逆方向に反応しがちです。この妙な特徴は、指標発表10分前までに一方向に値動きが長く大きいときほどアテになります。発表10分前にポジションが解消されがちなのでしょう。
そして意外なことに、本指標と製造業PMIとは同月集計分の実態差異に相関がありません(方向一致率が50%前後)。念のため、PMIの前月集計分や翌月集計分と本指標の実態差異を比較しても、方向一致率はやはり50%前後です。
PMIをアテにして、本指標結果の良し悪しを予想することは、サイコロを振って決めるのと同じだということです。
指標発表直後の反応は、指標結果に素直な方向に大きく跳ねます。その方向は、3?鉱工業生産指数前月比事後差異+2?鉱工業生産指数前年比事後差異+1?製造業生産指数前月比事後差異、という判別式を用いると、この判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率が79%です。
つまり、鉱工業生産指数の前月比・前年比が市場予想に対しどちらにどれだけズレるかが、本指標分析の目的となります。製造業生産指数は無視しても構わない、とは言えないものの、反応方向への寄与は鉱工業生産指数に及びません。
本指標の際立つ特徴は、直後1分足と直後11分足が同方向だったとき、指標発表後1分以内の跳幅を1分経過後に上回る確率が100%となっている点です。同方向でなかった場合にも、76%の確率で直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が上回っています。
これはありがたい特徴です。指標発表後の初期反応を見てから追撃しても、とりあえず利確しやすいのです。
終値同士を比べても、直後1分足と直後11分足が同方向だった場合、それら終値同士を比較して反応が伸びていたことが3回に2回程度あります。但し、同方向でなく直後11分足が反転した場合を含めると、その確率は50%を僅かに上回る程度に下がってしまいます。
とりあえず、指標発表後は反応を伸ばすと信じて早期追撃を開始し、その後は短期取引で様子を見ながら、しつこい追撃で戦果を拡大できる機会が年に何度かあるでしょう。そのとき大きく稼ぎましょう。
2017年は10回の発表時取引を行い9勝1敗でした。シナリオ単位では28勝10敗(勝率74%)で、毎回の平均取引時間は8分42秒とやや長くなっていました。年間178pipsを稼ぎ、1回の平均利確は18pipsです。これは、本指標直後11分足の平均的な値幅21pipsに対し悪くありません。
(2-3) 住宅
ほぼ反応しないことに加え、現地不動産の情報が入手しずらく、取引は行いません。
主な住宅関連指標には、RICS(王立公認不動産鑑定士協会)住宅価格指数・ライトムーブ住宅価格・ネーションワイド住宅価格・建設業PMI、が挙げられます。
いずれも2017年後半は下降基調になっています。
最も反応が大きい建設業PMIは、住宅だけでなく建設業全般の景気指標です。長期的には下降基調となっており、EU離脱投票が行われた2016年6月分が直近ボトム(46)になっていました。その後はやや戻したものの、2017年9月分では再び50を下回りました(48.1)。10月分(50.8)、11月分(53.1)は持ち直したものの、直近ピークの5月分(56.0)を上抜けることは難しいでしょう。
以上