8 節 型 枠
6.8.1 適用範囲
(a) 鉄筋コンクリート造の建物の出来ばえは躯体コンクリートの精度によって大きく左右され、更に、この躯体は型枠工事の優劣によって決まるといっても過言ではない。このように型枠工事はすべての工事の基本ともなるので綿密な計画と慎重な施工が肝要である。
(b) 型枠は、材料や工法の開発に伴い、合理化、複合化、システム化が進められている。これは、建築工事の大型化・高層化、熟練労働者の不足、工事の機械化、地球環境の保護等の社会状況の変化に対応し、品質の確保、工期の短縮、コスト低減等を目指したものである。
躯体工事において、型枠の占める割合は高く、品質、工期、コストの上で効果の大きいものが多いので、施工者の提案については、設計担当者に要求機能を確認し、実績等を考慮して採用の可否を検討する。
型枠の主な合理化・複合化・システム化工法を適用部位別に整理すると図 6.8.1のようになる。
なお、図 6.8.1 の「打込み型枠」及び「捨型枠」はコンクリート表面の状態を確認できないため、コンクリー トに豆板、空洞、コールドジョイント等が生じないように、調合、打込み、締固め等に留意し、密実なコンクリートとすることが大切である。
(c) 施工者が行う型枠計画は、他の工事との関連、納まり、施工性等を検討したうえで、材料・工法を選択し、施工計画及び施工図を作成する。
(d) 型枠計画は、安全で、かつ、要求品質に見合った精度で施工する工法を採用するという観点でチェックする。
図 6.8.1 適用部位別の合理化・複合化・システム化型枠工法
6.8.2 一般事項
(a) 型枠の構成は、コンクリートに直接接するせき板、せき板を支える支保工及びせき板と支保工を緊結するセパレーター、締付け金物等からなる。せき板には通常、脱型を容易にするためはく離剤が塗り付けられている。 支保工は、床・梁等を支える根太、大引、支柱(パイプサポート)、支保梁、支柱の座屈を防止する水平つなぎ・ブレースのほか、柱、壁等のせき板の位置を保持するとともに転倒を防ぐ内端太、外端太、建入れ直しサポート、チェーン等から構成される。在来工法による一般的な型枠構成例を図6.8.2 に示す。
図6.8.2 一般的な型枠構成例(型枠の設計・施工指針より)
(b) 型枠には、コンクリート自重、打込み時の振動や衝撃による作業荷重、コンクリートの側圧、水平荷重等が作用するので、その荷重に対して安全であることを構造計算によってチェックすることが重要である。 また、必要な仕上り寸法・精度が得られるように型枠剛性についても検討することが必要である。「標仕」6.2.5 では「 部材の位置及び断面寸法の許容差」と「コンクリート表面の仕上り状態(目違い・不陸等及び平たんさ)」が規定されておりこれらを満足するように型枠を設計する。
型枠の構造計算の方法は、 (一社)日本建築学会「型枠の設計・施工指針」に詳しく述べられているので、それを参考にするとよい。
次に型枠の構造計算に関する基本的事項を示す。
(1) 型枠材料の許容応力度等
(i) 型枠の構造計算に用いる材料の許容応力度は、次のとおりとする。
?@ 支保工については、労働安全衛生規則第241条に定められた値
?A 支保工以外のものについては、次の法令又は基準等における長期許容応力度と短期許容応力度の平均値
1) 建築基準法施行令第89 条及び第90 条
2) (-社)日本建築学会「鋼構造設計規準」、同「軽鋼構造設計施工指針」 又は同「木質構造設計規準」
木材の繊維方向の許容曲げ応力、許容圧縮応力及び許容せん断応力の値について、労働安全衛生規則第241条に定められている。
(ii) 型枠支保工に用いる鋼材の許容応力度は、労働安全衛生規則第 241条において次のように定められている。
?@ 鋼材の許容曲げ応力及び許容圧縮応力の値は、当該鋼材の降伏強さの値又は引張強さの値の 4分の3の値のうちいずれか小さい値の 3分の2 の値以下とすること。
?A 鋼材の許容せん断応力の値は、当該鋼材の降伏強さの値又は引張強さの値の 4分の3の値のうちいずれか小さい値の100分の38 の値以下とすること。
?B 鋼材の許容座屈応力の値は、限界細長比に応じて計算を行って得た値以下とすること。
(iii) 型枠合板の断面性能、その他型枠に使用される材料の断面性能、支柱の許容荷重、締付け金物の許容耐力等は、「型枠の設計・施工指針 」、メーカーのカタログ等を参照されたい。
(2) コンクリート打込み時の荷重
(i) スラブ型枠設計用荷重 (T.L) は、実状に応じて定めるのが原則であるが、通常のポンプ工法の場合 6.8.1式により算出する。
T.L= D.L + L.L (6.8.1 式)
D.L (固定荷重):
コンクリート、型枠等の自重で、普通コンクリートの場合は 23.5 x d (kN/m 2 ) に型枠の重量として 400N/m 2 を加える。 (d= スラブの厚さ (m))
L.L ( 作業荷重+衝撃荷重):「労働安全衛生規則」 から 1,500N/m 2 以上とする 。
(ii ) 型枠設計用側圧は、JASS5 によればよい。
(3) 曲げを受ける型枠各部材の計算方法
型枠材の計算方法には、定められた基準はないが、一般には次により、構造計算を行い定める。
?@ 合板せき板の場合は、転用等による劣化を考慮し、単純梁として扱う。
?A 合板以外のせき板、根太、大引等は、単純梁と両端固定梁の平均とする。
?B 各部材のたわみは、3mm以下とする。ただし、打放し仕上げの場合は、1〜2 mm程度とすることが望ましい。
なお、構成部材の総たわみ量は、コンクリートの仕上りの平たんさ等を考慮して適切に定める。
?C 部材の応力及びたわみの計算に用いる公式は、「型枠の設計・施工指針」を参考にするとよい。
(4) 水平荷重
型枠支保工の倒壊等を防止するため、型枠支保工の設計に当たっては、労働安全衛生規則第 240 条に基づき、次に示す水平荷重が作用しても安全な構造のものとする。
?@ 鋼管枠を支柱として用いるものであるときは、当該型枠支保工の上端に、設計荷重の 100 分の 2.5 に相当する水平方向の荷重が作用しても安全な構造のものとすること。
?A 鋼管枠以外のものを支柱として用いるものであるときは、当該型枠支保工の上端に、設計荷重の 100 分の 5 に相当する水平方向の荷重が作用しても安全な構造のものとすること。
(c) せき板の継目から水やモルタルが漏れ出すと、豆板や砂じま、空洞等が生じ、コンクリートの品質が低下する。また、型枠の取外しが容易でないと、コンクリートに損傷を与える危険性があるので、型枠は細部まで十分考えられたものが必要である。
(d) コンクリート打放し仕上げ( 仕上塗材、塗装等の仕上げを行う場合を含む。)の場合、外部に面する部分は打増しを行うことがある。 その厚さは特記によるとされている。
(e) コンクリートは乾燥により収縮するので、ひび割れの発生を完全に防止することは極めて困難である。したがって、適切な位置にひび割れ誘発目地を設置し、ひび割れを目地内に発生させて目地をシールするなどして対処するのが一般的である。ひび割れ誘発目地の形状・寸法は特記によることになっている。ここで、「標仕」11.1.3 では、ひび割れ誘発目地の深さは打増したコンクリート厚さとするとされている。
(f ) その他、型枠に要求される品質としては、次のようなものが挙げられる。
(1) 型枠は、その他の工事、特に鉄筋工事と関連して、鉄筋のかぶり厚さを確保できる材料と工法とする。
(2) せき板はコンクリートの硬化を阻害したり、コンクリートのアルカリによってコンクリートに着色したり、木材のむしれを生じるものであってはならない。
(3) コンクリートが打ち込まれてからせき板と支保工が取り除かれるまでの間は、コンクリートにとって初期の養生期間になるので、型枠はコンクリートの養生を阻害するものであってはならない。
6.8.3 材 料
(a) 「標仕」では、せき板の材料は、特記によることとしている。 特記のない場合は、次のように規定されている。
(1) コンクリート打放し仕上げの場合は「標仕」表6.2.4 のコンクリート表面の仕上り程度に見合ったものとしており、打放し仕上げの種別が A 種( 目違い、不陸等の極めて少ない良好な面)の場合は、表面加工品を用いるようにしている。
(2) コンクリート打放し仕上げ以外の場合は、「合板の日本農林規格」の「コンクリート型枠用合板の規格」によるB - C 品又はその他の材料で コンクリートの所要の品質を確保できるものを用いるとしている。ここで、B - C 品とは、表面の品質が B、裏面の品質が C(品質のよい順に A、B、C、D の 4 ランクあり)であるものをいい、現在市販されているコンクリート用型枠合板の主流となっているものである。 合板型枠以外の型枠としては、金属製型枠、樹脂系の型枠(FRP・プラスチック等)、打込み型枠(断熱型枠、簿肉プレキャストコンクリート板、けいカル板、スレート型枠等)、ブロック型枠、ラス型枠等がある。 また、近年環境に配慮した型枠として、再生材樹脂系の型枠が使用されている。これらの材料を用いる場合は、型枠としての性能及び仕上げに対する影響について調査し、設計担当者等と打ち合わせて採否を決める。
(b) 「標仕」においては、せき板に合板を用いる場合は、「合板の日本農林規格」の「コンクリート型枠用合板の規格」による表面加工品又はB - C 品を用いることとしている。
なお、合板の厚さは特記によることになっているが、特記がなければ厚さ 12mmのものを使用するとしている。
(c) 床型枠用鋼製デッキプレート(フラットデッキ)について、(一社)公共建築協会では、「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)の一環として、平成 4年の建設省「建設技術評価」に準じて技術評価の基準を定めて評価を行っている。
設計・施工に当たっては「床型枠用鋼製デッキプレート(フラットデッキ) 設計施工指針・同解説」が参考になる。 本設計施工指針では、平成18年版でフラットデッキの材料(鋼材)の機械的性質として引張強さを295N/mm 2 以上(16 年版では270N/ mm 2 以上)と改めている。これは、(一社)日本建築学会「綱構造設計規準 」 (2005)に準拠し,鋼材の降伏点又は耐力と引張強さの70%のうち小さい方の値をもって許容応力度を決定する場合の基準値とする趣旨を満足するようにしたためである。
フラットデッキの施工上の要点を次に示す。
(1) 施工荷重によるたわみを考慮して、フラットデッキには10mm程度のキャンバー(むくり) が付いている。そのため、梁との隙間からのろ漏れ等が生じないように施工する。
(2) RC造・SRC 造の場合のフラットデッキと型枠の接合方法例を図 6.8.3 に示す。フラットデッキは図中の横桟木で受けるため、横桟木で受けた荷重が縦桟木で支持できる型枠設計とする必要がある。
図 6.8.3 型枠との接合方法 (RC・SRC造、スラブ厚300mm以下)
(床型枠用鋼製デッキプレート(フラットデッキ) 設計施工指針・同解説より)
(3) 鉄骨梁とフラットデッキの接合方法の例を図6.8.4に示す。
鉄骨梁継手部や柱取合い部はアングル又はF.B. を溶接留めとし、その上に現場切断したフラットデッキを留め付ける。
図 6.8.4 鉄骨梁との接合方法(S造、スラブ厚300mm以下)
(4) フラットデッキは衝撃に弱く、曲がったりへこんだり変形したりしやすい。そのため、敷設時にはめ込みにくいなどの手戻りが生じるので養生方法、揚重方法、吊り治具等に注意する 。
(5) 設備配管等の貫通口が規則的な場合又は集中している場合は、局部破壊の原因となるので補強する必要がある。
なお、フラットデッキは、リブでコンクリート等の施工荷重を負担しているのでリブを切断する場合等は、デッキ受けを設け荷重を梁や型枠に確実に伝えるようにしなければならない。
(d) 断熱材兼用型枠工法として 建設技術評価規程(昭和53年建設省告示第 976 号)に基づき建設大臣が評価した工法がある。この工法は、鉄筋コンクリート造等の建築物の内断熱施工部分について、在来の型枠用合板の代わりに断熱材を兼用した型枠を使用する工法である。せき板としての性能を有した断熱材を主体とし、支保工と一体となってコンクリート型枠としての性能を発揮するものである(図 6.8.5参照)。型枠の断熱材は、「標仕」19.9.2 (a)に示すもののほか、木毛板の類、磁気テープ廃材等があり、また、その構成板材は単板、複合板、サンドイッチパネル等となっている。 型枠の解体がないため現場内での作業の軽減等の施工合理化が図られること、また、建設廃棄物の発生を抑制することができる。
図6.8.5 断熱材兼用型枠の納まり例
(e) MCR 工法
MCR 工法は外壁タイル張りのはく離防止を図る工法として開発されたものである。
コンクリート型枠に専用のシート(「標仕」6.8.3(e)参照)を取り付けておき、コンクリートを打ち込むことによりコンクリート表面に多数のあり状の穴を設け、躯体コンクリートとモルタルとを機械的にかみ合わせることではく離を防止する工法である (図 6.8.6 参照)。この工法の特徴は、ばらつきが少なく安定した接着強度が得られるとともにかみ合わせ効果により面内方向のせん断応力に対する抵抗性が高いことにある。
シートは、表 6.8.1 に示す 3種類がある。型枠の種類、型枠の幅等によって使い分ける必要があるが、600mm幅の合板型枠あるいは表面処理合板型枠であれば両端フラットタイプを使用したほうが、シート間からのセメントペーストの漏出がなく、仕上りはよい。 シートを取り付けた状態の例を図6.8.7 に示す。
シートは、コンクリートの養生のためにせき板を外したのちも極力存置し、モルタル塗りの直前にシートを取り外すようにする。
図 6.8.6 MCR工法の施工手順
表 6.8.1 MCR工法専用シートの種類と特徴
図6.8.7 シートを取り付けた状態
(f) ボルト式型枠緊張材には各種あるが、図 6.8.8 にその代表的なものを挙げる。
図 6.8.8 各種締付け金物の組立例
(g) はく離剤は次の性能を有するものとする。
(1) せき板とコンクリー トのはく離性が良好であること。
(2) せき板あるいはコンクリートの成分と反応し、コンクリートに悪影響を与えないもの。
(3) 木製せき板のように吸水性のあるものはその吸水性を減少することができるもの。
(4) はく離剤自身による汚れをコンクリート面に残さないこと。
(h) 資源の有効活用の面から、型枠は積極的な転用や再使用が望まれる。 転用や再使用する場合は、コンクリー トに接する面をよく清掃し、締付けボルト等の貫通孔あるいは補修箇所を修狸のうえ、必要に応じてはく離剤を塗り付けて用いる。
( i ) スリーブには、鋼管のほか、硬質ポリ塩化ビニル管や紙チューブが用いられるが径が大きくなった場合は、コンクリート打込み時の変形防止のための補強を十分に行う必要がある。
最近では、基礎梁の人通孔等、大口径のスリーブには土木用排水管(樹脂製コルゲート管)が軽量で、変形しにくいため使用される場合も多い。
また、取付けに際しては、コンクリート打込み時にスリーブが浮いて移動しないように、型枠に堅固に留め付ける 。
( j ) スリッ ト材は腰壁や垂れ壁のある建物で、柱が短柱になることを防ぐために腰壁等を柱際で縁を切るために設けるものである(固 6.8.9 参照)。防火区両となる部分に使用する場合は、材質等について注意する。
図 6.8.9 スリット用材料の例
(k) 合板によるコンクリート表面の硬化不良について次に示す。
(1) せき板の中には、木材成分中の糖類、タンニン酸等がコンクリートのアルカリに抽出されて、セメントの硬化を妨げるものがある。
(2) 硬化不良を起こしたコンクリートの表面の状態
(i) コンクリートの打上り面が暗黒色になりざらつく。
(ii) 極端な硬化不良の場合には、表面数mmがまった<硬化しないので、触れると粉状にはく落したり、薄い板状にはく離する 。
(3) 硬化不良を起こしやすいせき板
(i) 取扱い不良等により変質し、抽出物の量が増大したもので、長期間太陽光線(紫外線)の照射を受けた場合に多く、シート等で覆えば防止できる。
また、長時間空気中に暴露された場合や腐朽菌が表面に生じた場合にも硬化不良が生じる。
(ii) 木材の成分によるもので、赤松、米杉等がある。
(iii) 広業樹は針業樹より硬化不良を起こしやすい。
(iv) 硬化不良を起こしやすいせき板を現場で見分けるには、せき板表面にセメントペーストを塗り付け 2〜3日後にはがして、その表面状態を調べるのがよい。
6.8.4 型枠の加工及び組立
(a) コンクリート打込み後、強度発現が不十分な状態で作業を開始すると、その荷重を受けるコンクリートに有害なひび割れやたわみ等の障害が生じるおそれがあるので、注意が必要である。コンクリートが有害な影響を受けない材齢は、直上階の作業に伴う荷重の大きさによって異なり、一概に示せないが、墨出し等の軽微な作業であれば大きな影響はない。また、資材を置く場合は、1 箇所に集中させないなどの配慮が必要である。また、床がモノリシック仕上げの場合、床面を傷つけないように養生期間を確保したり、資材等の仮置き場所に養生を施す。
(b) コンクリート寸法図、型枠の加工及び組立等を次に示す。
(1) コンクリート工事を行うには、必ず各部のコンクリートの形状及び寸法を詳細に表した施工図を作成する。 多くの場合、平面図を中心にし、必要に応じて部分的断面図を補助として記入している。このような施工図をコンクリート寸法図、スケルトン、コンクリート躯体図等と呼んでいる 。
コンクリート寸法図は単にコンクリート型枠作製のためだけでなく、他の関連工事に対しても基本になる施工図であるから、次の事項を十分検討する。
(i) 構造体の形状、寸法、位置関係
?@ 通り心、壁心等の基準線からの構造材の位置
?A 構造材(柱、梁、壁、スラブ、基礎、階段等)の形状、寸法、割付け及び符号
?B 軒高、階高及びGLと 1階床高との関係
?C 梁、スラブその他の基準階高との上下関係
?D 打継ぎ箇所
?E 構造材相互の取合い
(ii) 仕上げ,納まり等の関係
?@ 仕上げ(左官、タイル下地等)と関連して必要な増打ち等のコンクリート寸法図
?A 建具、造作等の納まりによる開口及び周辺の形状寸法
?B タイル、石等の割付けによるコンクリート寸法の増減
?C 躯体に断熱材等を打込みとする場合の寸法
?D インサート、ブロック壁の位置及び差し筋の径並びにピッチ、アンカーボルト、丸環、ルーフドレンその他の取付け金物類の位置
?E 打放しのコンクリート部分(化粧目地、伸縮調整目地、ひび割れ誘発目地)
?F その他特にコンクリートを欠き込む必要のある場合及びコンクリートに打込みとなるもの
(iii) 防水上の納まり
?@ 屋根面の勾配、パラペット回り等の立上り部分、笠木等の防水の納まり
?A 便所、浴室等の防水層の納まり(スラブの高さ、周囲の納まり)
?B 工キスパンションジョイントの納まり
?C 水を使用する部分のスラブ勾配や排水
?D 地階二重壁内の水抜きパイプ
(iv) 設備関係
?@ 梁、壁等の貫通孔(スリーブ等)
?A 便所、洗面所、浴室等の衛生器具用開口
?B ダクト用の開口
?C 設備機器用機械台及び機械吊上げ用フック類
?D 分電盤、端子盤、消火栓、改め口等の開口あるいはプルボックス等のコンクリート打込みとなる箇所
?E マンホールの大きさ及び位置(タラップの位置、ニ重スラブ内に設置するポンプ類の大きさ)
?F 槽類の位置及び総重量
?G エレベーター関係
1) ピット内の幅及び深さ
2) 機械室の床開口
3) 敷居受け用ブラケット
4) ガイドレールの位置と取付けボルト
5) エレベーター据付け用の吊上げフック類
6) インジケー ター、押しボタン穴
?H 二重スラブ内の水抜き及び通気パイプ、集水桝、スラブ勾配
(v) 仮設関係
?@ 材料搬出入口(建物内外への出入口及び上下の運搬用開口)
?A 設備用大型機械の搬入開口部、搬入経路及び総重量
?B パイプシャフトの器材搬入口
?C 切張り支柱用開口
?D タワークレーン用開口
?E 外部足場つなぎ用インサート
(vi) その他コンクリートと関連するもの
(2) 一般に、型枠工事の実施に先だち、型枠材料とその仕様の設計を行う。 これらは型枠工事の品質、コスト、工程に大きく影響するが、コンクリート寸法の標準化が大きな要素となる。 そこで、設計担当者と打合せのうえ、コンクリート寸法をできるだけ標準化する方向で検討するとよい。
(3) 型枠の加工には、現場加工と工場加工がある。 これらは、建物形状、加工場所、工期、輸送方法、組立方法等を検討して決定される。
工場加工には、在来の合板型枠と合理化・システム化型枠の場合がある。 在来の合板型枠の場合は、型枠パネル加工を設備の整った工場で集中的に行うもので、最近は CAD/CAM を利用して効率化した工場もある。
(4) 柱型枠建込み前に柱脚部の清掃水洗い等を行っておく。建込み後には、ごみ・おがくず等が入らない処置をとり、万ー入った時は水洗い、又はとがらせた鉄筋等で除去する。 除去が難しい場合は下部に掃除口を設ける。
(5) 型枠組立の例を次に示す。
( i ) 柱、梁の例を図 6.8.10 に示す。
図 6.8.10 型枠組立の例
(ii) 柱、壁の下部の例を図 6.8.11 に示す。
図 6.8.11 柱、壁の下部組立の例
(iii) 階段型枠の例を図 6.8.12 に示す。
図 6.8.12 階段型枠の組立の例
(iv) 窓及び階段は、図6.8.13 のようにコンクリー トが盛り上がるのを防ぐために端部にふたをする。窓の場合は、外側へ勾配を付ける。また、小さい窓等の下枠は全閉とし、空気穴を設けてコンクリートの充填具合を点検する。
図 6.8.13階段窓及び階段のふたの例
(v) 型枠の建入れ補強の例を図6.8.14 に示す。
図 6.8.14 型枠の建入れ補強の例
(6) 支柱に関する労働安全衛生規則の抜粋を次に示す。
( 昭和47年9月30日労働省令第32号最終改正平成25年6月28日)
(型枠支保工についての措置等)
第242条 事業者は、型枠支保工については、次に定めるところによらなければならない。
一. 敷角の使用、コンクリートの打設、くいの打込み等支柱の沈下を防止するための措置を講ずること。
二. 支柱の脚部の固定、根がらみの取付け等支柱の脚部の滑動を防止するため措置を措講ずること。
三. 支柱の継手は、突合せ継手又は差込み継手とすること。
四. 鋼材と鋼材との接続部及び交差部は、ボルト、クランプ等の金具を用いて緊結すること。
五. 型枠が曲面のものであるときは、控えの取付け等当該型枠の浮き上がりを防止するための措置を購ずること。
五の二. H 型鋼又は I 型鋼(以下この号において「H 型鋼等」という。)を大引き、敷角等の水平材として用いる場合であって、当該 H型鋼等と支柱、ジャッキ等とが接続する箇所に集中荷重が作用することにより、当該 H型鋼等の断面が変形するおそれがあるときは、当該接続する箇所に補強材を取り付けること 。
六. 鋼管(パイプサポートを除く。以下この条において同じ。)を支柱として用いるものにあっては、当該鋼管の部分について次に定めるところによること。
イ. 高さ 2メートル以内ごとに水平つなぎを 2方向に設け、かつ、水平つなぎの変位を防止すること。
口. はり又は大引きを上端に載せるときは、当該上端に鋼製の端板を取り付け、これをはり又は大引きに固定すること。
七. パイプサポートを支柱として用いるものにあっては、当該パイプサポートの部分について次に定めるところによること。
イ. パイプサポートを 3 以上継いで用いないこと。
ロ. パイプサポートを継いで用いるときは、4 以上のボルト又は専用の金具を用いて継ぐこと。
ハ. 高さが3.5 メートルを超えるときは、前号イに定める措置を講ずること 。
八. 鋼管枠を支柱として用いるものにあっては、当該鋼管枠の部分について次に定めるところによること。
イ. 鋼管枠と鋼管枠との間に交差筋かいを設けること。
ロ. 最上層及び 5層以内ごとの箇所において、型枠支保工の側面並びに枠面の方向及び交差筋かいの方向における 5 枠以内ごとの箇所に、水平つなぎを設け、かつ、水平つなぎの変位を防止すること。
ハ. 最上層及び 5 層以内ごとの箇所において、型枠支保工の枠面の方向における両端及び 5 枠以内ごとの箇所に、交差筋かいの方向に布枠を設けること。
二. 第六号ロに定める措置を講ずること。
九. 組立て鋼柱を支柱として用いるものにあっては、当該組立て鋼柱の部分について次に定めるところによること。
イ. 第六号口に定める措置を講ずること。
ロ. 高さが 4 メートルを超えるときは、高さ 4 メートル以内ごとに水平つなぎを2 方向に設け、かつ、水平つなぎの変位を防止すること。
九の二. H 型鋼を支柱として用いるものにあっては、当該 H 型鋼の部分について第六号ロに定める措置を構ずること。
十. 木材を支柱として用いるものにあっては、当該木材の部分について次に定めるところによること。
イ. 第六号イに定める措置を講ずること。
ロ. 木材を継いで用いるときは、2 個以上の添え物を用いて継ぐこと。
ハ. はり又は大引きを上端に載せるときは、添え物を用いて、当該上端をはり又は大引きに固定すること。
十ー. はりで構成するものにあっては、次に定めるところによること。
イ. はりの両端を支持物に固定することによりはりの滑動及び脱落を防止すること。
口. はりとはりとの間につなぎを設けることにより、はりの横倒れを防止すること。
労働安全衛生規則
(c) ボックス、スリーブ、埋込み金物等を構造躯体に埋め込む場合、コンクリートの打込み時の流れによって位置がずれないよう、堅固に取り付ける。 コンクリートの流れの力は予想以上に大きいので注意が必要である。
(d) 上下階の支柱が同一位置にないと、強度が十分発現していないコンクリートスラブに悪影響を与えることになるので、できるだけ同じ位置に支柱を配置する。また、地盤上に直接支柱を立てる場合には、支柱の下に剛性のある板を敷くなどして、支柱の沈下を防がなくてはならない。
(e) 型枠に、足場や遣方等の仮設物を連結させると、足場等が動いた時に型枠位置がずれたり寸法が狂ったりするおそれがあるので、避けなければならない。
( f ) 監督職員は、施工者が行う型枠の品質管理・検査の報告を受け、必要と思われる事項については確認する。施工者が行う型枠工事の品質管理・検査の例を表 6.8.2に、型枠の計画から取外しまでの作業工程と主要管理項目の例を表6.8.3 に示す。
表6.8.2 型枠の材料・組立・取外しの品質管理・検査の例 (JASS 5より)
表6.8.3 型枠の計画から取外しまでの作業工程と主要管理項目の例 (JASS 5 より)
6.8.5 型枠の存置期間及び取外し
(a) せき板は、コンクリート形状を決定するだけでなく、若材齢のコンクリートを寒気や外力、乾燥から保護する役割がある。また、支柱は、梁やスラブが自立し、有害なひび割れやたわみが生じなくなるまで支持する役割をもっている。したがって、それぞれ必要な最小存置期間が定められており、その期間を経たのちに型枠を取り外すことになる。
(b) 「 標仕」では、せき板の最小存置期間は「標仕」表6.8.2 に、支柱の最小存置は「標仕」表6.8.3 に定められている。
せき板の最小存置期間は、材齢による場合とコンクリートの圧縮強度による場合とに分けられており、そのどちらかを満足すればよいことになっている。圧縮強度による場合は、若材齢のコンクリートが初期凍害を受けることなく、また、容易に傷つけられない最低限必要な強度として 5 N/mm 2 と定められている。 また、材齢による場合は、存置期間中の平均気温とセメントの種類の組合せにより必要な期間が定められており、これは、上述の 5 N/mm 2 の圧縮強度が得られる期間から定められている。
支柱の最小存置期間もせき板の場合と同様、材齢による場合とコンクリトーの圧縮強度による場合とに分かれている。
圧縮強度による場合は、スラブ下で設計基準強度の85%以上又は 12N/ mm 2 以上、梁下では設計基準強度以上となっている。ここで、「現場打コンクリートの型わく及び支柱の取りはずしに関する基準」(昭和46年 1月 29日 建設省告示第110号、最終改正 昭和 63年 7月 26日)では、梁下の場合「設計基準強度以上又は12N/mm 2 以上」としているが「標仕」において「又は12N/mm 2 以上」が削除されたのは、安易に若材齢(低い強度)での取外しを認めるべきではないとの考え方によっている。 更に、「施工中の荷重及び外力について、構造計算により安全であることが確認されるまで」となっており、施工中の荷重について検討が必要である。ただし、ここでいう構造計算とは、型枠支柱を取り外したのちの施工中の荷重、コンクリートの変形、外力等について行った構造計算であり、設計時の構造計算とは別のものである。
材齢による場合は、せき板と同様、存置期間中の平均気温とセメントの種類の組合せにより必要な期間が定められている。
支柱の存置期間を構造計算によって算定する方法については「型枠の設計・施工指針」等に記載されている。参考として、JASS 5 9節[型枠]における存置期間の考え方の骨子を次に示す。
(1) 支柱は、コンクリートが施工中の荷重にっよて有害なひび割れやたわみを生じることのない圧縮強度以上になるまで取り外さないことを基本とする。
(2) 床スラブが有害なひび割れを起こす可能性のある条件として、施工荷重時の曲げひび割れ強度 0.64√Fc (Fc:設計基準強度に対応した 28日圧縮強度 N/mm 2 )以上となる場合を一つの目安としている。 ただし、梁部材は一般に鉄筋量も多く、部材せいも大きいので、たわみやひび割れへの影響は小さいと考えこの規定から除外する。
(3) 支保工を早期に(設計基準強度未満)取り外すための条件として、上述の 0.64√Fc を安全率 1.25で除した許容曲げ応力 0.51√ Fc を掲げ、施工荷重時の曲げ応力 σ 0 が、この数値以下となることとしている。
(4) 施工荷重は最下階支持スラブ、梁に作用する施工荷重の値を示している。 この場合、コンクリート打込み時、支保工1層受けと2層受け以上でそれぞれ異なる。
(5) 構造体コンクリートの強度発現は、現場水中養生供試体又は現場封かん養生供試体の圧縮強度試験値から推定し、上の条件を滴たすのに必要な強度管理として現場水中養生供試体又は現場封かん養生供試体の試験値を使用する。
すなわち、施工荷重による曲げ応力 σ 0 に対して取外し可能なコンクリートの圧縮強度 F1 を「所要圧縮強度」 と定義し、 F1 = σ 0 2 / 0.51 2 として、圧縮強度試験により管理する。
(c) 片持梁やひさしは静定構造であり、ひび割れが発生すると大きなたわみにつながるおそれがあるので、支柱の存置期間を必要に応じて延長するのがよい。長大スパンの梁、大型スラブ等の型枠を支持する支柱、施工荷重が著しく大きい場合の支柱等も同様である。
(d)「標仕」では、スラブ下及び梁下のせき板は、原則として、支柱を取り外したのちに取り外すことにしているが、施工方法によっては、支柱を取り外すことなくせき板を取り外せる場合がある。その場合は、昭和 46年建設省告示第 110号の第 1 第一号で定めるスラブ下及び梁下のせき板の存置期間の規定を準用し、平均気温による存置日数又はコンクリートの設計基準強度の 50%以上の強度を確認することにより、支柱を取り外す前にせき板を外す方法もある。ただし、この方法は「標仕」6.8.5 (b)で規定する「原則」以外の方法であり、監督職員は、工種別施工計画書(品質計画)に記載された内容を確認して承諾する必要がある。
また、支柱の盛替え作業は、無造作に行われやすく、また、若材齢のコンクリートに荷重が作用することは望ましくないので、「標仕」では支柱の盛替えは行わないこととしている。
6.8.6 型枠締付け金物の頭処理
(a) 型枠緊張材(セパレーター)の主なものは、コーンを使用しないもの (丸セパ C型)とコーンを使用するもの(丸セパ B型)がある。セパレーターの例を表 6.8.4 に示す。
表6.8.4 セパレーターの例
型枠取外し後、丸セパC型の場合はコンクリート表面に座金及び頭(ねじ部分)が露出する。頭はハンマーでたたくことにより、簡単に折れ除去できるが、座金の部分は残る。丸セパ B型の場合はコーンを取り外した穴が残るが、ねじ部分は穴の奥となり穴をモルタル等で埋めれば 表面には何も露出しない。
コーンを使用する目的は、次のように考えられる。
(1) 止水(地下外壁等でセパレーターを伝わってくる水をモルタル防水等で防ぐ。)
(2) 表面の平滑化(防水下地、薄い仕上げ下地等)
(3) 金物を露出させない(打放し仕上げ面、断熱材埋込み面等)。
型枠締付け金物の頭処理に当たっては、これらのことを考慮し、部位別に適切な処理をする。
見え掛りで仕上げがない箇所(設備シャフトの中等)では、丸セパ C型を用いるが、頭を折って除去した跡の座金部分にシアナミド鉛さび止めペイント 2 種 (JIS K 5625) 又は鉛・クロムフリーさび止めペイント 1 種 (JIS K 5674) を塗り付ける。手の届きにくい部分ではスプレーを用いる場合もある。
(b)コーン穴の処理方法の例は次のとおりである。
(1) 漏水のおそれのある地下外壁等では丸セパB型を用い、コーンの跡の穴に防水剤入りのモルタルを充填する。更に、確実な止水が必要な場合は防水工事を施す。
(2) 防水下地や薄い仕上げの下地等の場合は、丸セパB型を用いコンクリー ト面と同一にモルタルを充填する。普通のモルタルでは垂れ下がったり、乾燥収縮するおそれがあるので、水量の少ない硬錬りモルタルを用いることがある。
(3) 打放し仕上げ面等の場合は、丸セパ B 型を用い、穴はコンクリート表面よりわずかに内側にへこませて面内にモルタルを充填する。
コーンの穴埋めは、上記のように左官材料で行う方法と、既製品を用いる場合がある。 主な既製品の例を次に示すが、使用する部位の目的にあったものを使用する。
(i) 埋込みプラグ
プラスティック製のプラグをコーン穴にたたき込んで埋める。
(ii) 接着剤付きコーン(図 6.8.15 参照)
モルタルコーンの先端に接着剤カプセルがセットされており、これをコーン穴に取り付けて指で押し、接着剤カプセルを破壊して接着する。
図 6.8.15 接着剤付きコーン(止水・はく離防止)
(iii) モルタルコーン
モルタルコーンをエポキシ系接着剤を用いて取り付ける。
(iv) 打込み式コーン(図 6.8.16参照)
打込み式コーンは、防水機能をもたせたコーンであり、従来のコーンと異なり廃材が生じないのが特長である。
断熱材の部分では、「標仕」19.9.2[断熱材打込み工法](b)(5)によるとされており、そこでは、コーンの除去跡には断熱材を張り付けるか断熱材を充填するようになっている。
図6.8.16 打込み式コーンの例
(c) インサート類はスラブ下や壁面に設備機器等を取り付けるために、コンクリートに打ち込まれる。 通常は天井等で隠されるため問題ないが、 天井がなく見え掛りとなる部分や薄い仕上げで支障のある場合は、調合ペイント又は錆止め塗料を途り付ける。防錆塗装付きのインサートや目立たない色のプラスチックのみが露出する製品を用いる場合もある。
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