01節一般事項
15.1.1 適用範囲
この章は、塗装、仕上塗材仕上げ、壁紙張り等の各種仕上げ工事の下地となるモルタル塗り及びせっこうプラスター塗り、床コンクリートの仕上げ又は下地調整を行う床コンクリート直均し仕上げ及びセルフレベリング材塗り、建築用仕上塗材を用いる仕上塗材仕上げ、マスチック塗材を用いるマスチック塗材塗り、半乾式工法及び乾式工法によるロックウール吹付け等を対象としている。
15.1.2 基本要求品質
(a) 左官工事に使用する材料は、各種仕上材の下地となる場合とそれ自体が仕上げとなる場合があるが、下地の平たんさ、平滑さの確保や美装を施すだけでなく、長期にわたって建築物を保護するものとなる。このため、設計図書ではこれまでの実績に基づいて、必要な品質性能を有する材料としている。これらの材料のうち、JIS規格が定められているものは、一般的な材料と同様に扱えばよい。JISの定められていない材料のうち(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」により評価がなされたものは、この結果を活用するとよい。また、これら以外の材料で、主材料製造所の指定する製品にあっては、その指定によるものとする。
使用材料のうち、モルタル塗り等に使用する細骨材は、粒度等について「標仕」に具体的な数値が規定されているため、工事現場においてふるい分け試験により確認するとよい。
なお、防火材料として内壁下塗り用軽量モルタル、仕上塗材及びロックウールを用いる場合は建築基準法に基づき認定又は指定を受けた材料を使用しなければならない。
(b) 左官工事による仕上げ層は、躯体を外的な劣化要因から保護することによって建築物の耐久性を向上させることが重要な目的の一つであり、そのために「所定の塗厚」が確保されている必要がある。この左官工事による仕上げは、通常下塗り、中塗り、上塗りといった複数の塗り層によって構成されており、その各層ごとに所定の塗厚を確保できるようにする必要がある。具体的には「標仕」に規定されている各塗り層ごとの厚さをどのように確保するか、施工の許容誤差をどの程度とするかなどを含めて品質計画として提案させ、実施させることと考えればよい。
また、仕上り面が「所要の状態である」とは、各塗り層ごとにその上層となる材料との接着性を確保できる状態と考えればよく、最上層にあっては仕上りとして適切である状態と考えればよい。
なお、左官工事による塗り層の仕上り状態を適切なものとするためには、単にその塗り仕上げだけで実現できるものではなく、下地の仕上り精度から総合的に考慮する必要がある。
(c) 左官工事の施工に当たっては、塗付け層の表面状態が適切であり、各層ごとに浮き部分がないように補修を行っていけば、完成状態として仕上げ層に必要な接着性や耐久性は確保される。したがって、「標仕」15.1.2(c)でいう「有害な浮きがないこと」とは、下地の処理を含めて施工のプロセスをいかに管理するかを具体的に「品質計画」で提案させ、これを実施させることと考えればよい。
なお、屋外のタイル張りや届内吹抜け部分等のタイル下地の場合には「標仕」11.1.5によりタイルの打診による確認や接着力試験がモルタル下地を含めて行われることになる。この場合にあっては11.1.2を参照する。
また、同様な部位のモルタル塗りでは、「標仕」11.1.5に準じて打診等による「浮きのないことの確認方法」、「有害量の浮きの判断基準」、「浮きがあった場合の補修方法」等を品質計画として提案させ,これによって管理させるようにする。
15.1.3 見 本
色合、模様等の確認は、事前に設計担当者と打合せを行ったうえで、見本帳又は見本板を提出させて行う。この場合、取り合うほかの材料の見本を一緒に提出させて確認するとよい。
15.1.4 養 生
(a) モルタルは硬化後、各種材質に付着して取り除くことが困難であるだけでなく、アルミサッシに付着した場合等は、セメントのアルカリによってアルミが腐食するおそれがあるので、適切な養生を行う。
(b) 夏期における施工や風の強い場合等、モルタル塗付け後に急激な乾燥が起こると、硬化に必要な水分が失われてセメントが十分に水和せず、強度が発現しないので、適切な措置を講ずる。
(c) 気温が低い場合には、モルタルの硬化時間が長くなり、強度の発現も遅れるため、作業終了後、夜間の気温低下により凍害を受けるおそれがある。寒冷期の施工における注意点を次に示す。
(1) 寒冷期には、暖かい日を選んで施工するか、昼間の比較的気温の高い時期に施工し、早めに作業を切り上げる。塗付け後は適切な養生を行い、凍結防止に努める。
(2) 月間平均気温が5℃以下で、かつ、最低気温が2℃以下となる期間にやむを得ず施工する場合は、工事箇所の周辺を板囲い、帆布シート、ビニルシート等の防寒・防風設備で囲い、その内部をヒーター等の加熱器を用いて保温する。
なお、全国月別平均気温は参考資料の資料3を参照されたい。
(3) 熱源に灯油熱風器を用いる場合は、塗付けモルタルの品質、仕上材との付着性、仕上材の品質等に悪影響を及ぼすことがないような適切な対策を講ずる。
(4) 塗付け作業終了後も所要の硬化状態が確認されるまでは、適切な養生を継続する。
15.1.5 ひび割れ防止
(a) コンクリートの打継ぎ部、せっこうラスボード類の継目等は、熱冷や乾湿の繰返しにより伸縮するために、塗り付けたモルタルは、この部分でひび割れを生じやすく、「標仕」で示されているように適切なひび割れ防止対策を行うことが重要である。
(b) 下地が異なる材料の取合いとなる部分や躯体のひび割れ誘発目地部分は動きが大きく、「標仕」15.1.5 (a)で規定するひび割れ防止措置でもこれを防止することはできない。このため、「標仕」15.1.5(b)では、原則として、目地や見切り縁等を設けることにしている。
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