8節 壁紙張り
19.8.1 適用範囲
(a) この節はモルタル面、コンクリート面及びボード面に施す各種壁紙張りを対象としている。
(b) 作業の流れを図19.8.1に示す。
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、 赤文字 を考慮しながら品質計画を検討する。
?@ 工程表
?A 製造所名及び施工業者名
?B 材質(ホルムアルデヒド放散量、防火性能)、色柄別に応じた施工箇所
?C 接着剤の材質(ホルムアルデヒド放散量)、配合割合
?D 工法(割付け、見切り部分の納まり等)
?E 施工時及び施工後の換気方法
?F 養生方法(材料の保管方法等)
?G 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
図19.8.1 壁紙張り工事の作業の流れ
(d) 見本品を提出させ、色合、模様。性能等について設計担当者と打ち合わせて決定する。
なお、模様のある材料では、校様の大きさにもよるが一般的には 1m角程度の見本により確認するとよい。
(e) 養生等
(1)材料は整頓して保管するとともに、直射日光を受けないよう、また、塵あいその他による汚れを生じないようにポリエチレンフィルムを掛けるなど適切な養生を行う。
(2) 巻いた材料は、くせが付かないように立てて保管する。
(3) 施工済みの箇所で、その後の作業により汚染や損傷のおそれのある部分には適切な養生を行う必要がある。特に、柱や壁の出隅部や出入口回りは傷つけやすいため注意する。
(4) 施工中及び施工後の養生等については、19.10.7を参照されたい。
19.8.2 材 料
(a) JIS A 6921(壁紙)による壁紙の品質を表19.8.1に示す。
表19.8.1 壁紙の品質(JIS A 6921 : 2003)
(b) 壁紙及び壁紙施工用でん粉系接着剤は、指定建築材料(19.10.3(b)参照)である。
なお、「標仕」ではホルムアルデヒド放散量を、特記がなければF☆☆☆☆としている。また、建築基準法による規制等については10節を参照されたい。
(c) 壁紙のホルムアルデヒド放散量に関する注意事項等には、次のようなものがある。
(1) 表19.8.1に示すように、JIS規格品は放散量がF☆☆☆☆のものである。
(2) JIS規格品以外で、大臣認定(19.10.5(a)参照)を受けている壁紙には、F☆☆☆☆(認定番号MFNー0000)のものとF☆☆☆(認定番号MF3-0000)のものとがあり、認定番号の頭の記号で区分されているので注意する。
(3) 複数の放散量の材料で構成する場合は、最も下位の放散量となるので、下地材、接着剤、壁紙等に、特記によりF☆☆☆☆以外の材料が指定されている場合には、特に注意が必要である。
なお、「標仕」では、下地材等を含めてすべてF☆☆☆☆のものを原則としている。
(d) 壁紙のホルムアルデヒド放散量だけでなく、TVOC放散量等にも配慮を求められる場合は、(-社)日本壁装協会がISM壁紙規格を定めているので、参考にするとよい。ISM壁紙規格の安全規定による基準を表19.8.2に示す。
(e) 内装制限を受けるときは、その場所に応じて品質及び必要な防火性能が定められている。
(f) 防火材料として必要な事項は、次のとおりである。
(1) 防火性能
(i) 防火材料は国土交通大臣の指定又は認定を受けたものとする。国土交通大臣の認定を受けた壁紙は認定番号によって防火性能の識別を行う。
なお、壁紙の防火材料の認定には、施工する下地材料の種類、防火性能及び施工上の条件等が当該認定番号ごとに定められているので、これを認定内の付属書類によって確かめる。
防火性能認定番号の付番方法は次のとおりである。
表19.8.2 ISM壁紙の基準(ISM安全規定による)
(ii) 防火材料の壁紙を張る下地基材については、防火材料認定のための性能評価を行う指定性能評価機関が、「壁紙等の仕上げ材科で、施工現場で基材となる下地材に施工されるものの試験体作成方法について、施工現場での下地材が数種類ある場合は、以下の下地材を標準下地材とする。」として次の各種を定めている。
?@ 金量板を除く数種類の不燃材料を下地材に使用する場合
厚さ12.5mmのせっこうボード(不燃材料)
?A 金属板(鋼板等を含む)及びせっこうボード(不燃材料)を除く数種類の不燃材料を下地材に使用する場合
厚さ10mm以下、比重約0.8の繊維混入けい酸カルシウム板(不燃材料)
?B 金属板(銅板等を含む)を下地材に使用する場合
厚さ0.27mmの亜鉛めっき鋼板
?C 数種類の準不燃材料を基材に使用する場合
厚さ9.5mmのせっこうボード(準不燃材料)
?D 数種類の難燃材料を基材に使用する場合
厚さ5.5mmの難燃合板(難燃材料)
(iii) 防火材科に認定された壁紙の防火性能は、下地材と施工方法との組合せによって決められている。認定された各種壁紙の防火性能(認定番号の例)と下地材及び施工方法との組合せを表19.8.3に示す。
(iv) 張付け工法を「標仕」では、直張りとしている。
ただし、防火材料として認定された壁紙には、下張り工法として、繊維系壁紙で袋張りとべた張りが、塩化ビニル樹脂系整紙でべた張りが認められているものもある((k)参照)。
(v) 壁紙の防火認定は、大臣認定書と同付属書類の写しにより確認する。その際、張り合わせる下地材の防火性能も確認する必要がある。
なお、認定を受けた製品のこん包に、次のような防火製品表示ラベルが張り付けられている。防火製品表示ラベルの例を図19.8.2に示す。
図19.8.2 防火製品表示ラベルの例
表19.8.3 認定された壁紙の防火性能(認定番号の例)と下地材及び施工方法との組合せ例
(2) 施工後の表示
防火材料の認定を受けた壁紙には、施工後、施工責任を明確にし、当該壁紙による施工が認定された条件を遵守して行われた防火性能のある仕上げであることを表す施工管理ラベルを、1区分(1室)ごとに2枚以上張り付けて表示する(「標仕」19.8.3 (g))。
(g) JIS A 6922(壁紙施工用及び建具用でん粉系接着剤)による壁紙施工用でん粉系接着剤の品質を、表19.8.4に示す。
表中の1種はでん粉を主成分としたもの、2種1号は1種に合成樹脂エマルションを配合したもので、施工時に水で希釈して使用するもの、2種2号は2種1号と同じ配合のもので、施工時に希釈しないで使用するものをいう。
なお、かび抵抗性の性能欄の判定0とは、防かび性能があるということを示している。
表 19.8.4 壁紙施工用でん粉系接着剤の品質(JIS A 6922 : 2010)
(h) 壁紙施工用でん粉系接着剤として通常市販されているものは、F☆☆☆☆のJIS規格品又はF☆☆☆☆として大臣認定を受けたものである。大臣認定品は、 F☆☆☆☆のものには MFN-0000の認定番号が付されている。
(i) 接着剤の用い方
(1) 接着剤の配合は、JIS A 6922で規定するでん粉系接着剤(ペースト状)を主体とし、これに酢酸ビニル樹脂エマルション、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション等を添加混合したもの( 2種1号)を、水で希釈して使用する((g)参照)。
接着剤の混合率及び水による希釈は、下地の材質、壁紙の材質、接着剤の塗布方法(手付け・のり付け機)及び作業環境(室温・湿度・風速)により相違があるので、製造所の指定する使用方法による。
(2)「標仕」19.8.2(b)では、接着剤使用量を固型換算量(乾燥質量)30g/m 2 以下と定めているので注意する。
(j) 下地調整材
パテやシーラー等の下地調整材には、防火性能に支障を来すことのないものを使用する。
(k) 下張り紙
防火壁張りに使用する下張り紙は、35g/m 2 程度のもので、JIS A 1322(建築用薄物材料の難燃性試験方法)に規定された試験方法により30秒加熱した場合、防炎2級以上の性能を有するものを用いる。
ただし、「標仕」19.8.3(e)では、壁紙を下地に直接張り付けることになっているので、下張り紙の使用は指定のある場合のみである。
19.8.3 施 工
(a) 「標仕」19.8.2に定められている壁紙は、すべて認定防火材料だけであり、下地に直接張り付けることが定められている。したがって、下地の凹凸、目違い等がそのまま表面の仕上りに影響を与えるので、下地の施工精度を高めておく必要がある。
(b) 下地の乾燥及び処置
(1) モルタル及びプラスタ一面の下地は、「標仕」18.2.5による。
(2) コンクリート及びALCパネル面の下地は、「標仕」表18.2.5により、B種を標準としている。
(3) せっこうボード面の下地は、「標仕」表18.2.7により,B種を標禅としている。
なお、下地がせっこうボードでせっこう系接着材による直張り工法の場合は、接着材の乾燥が遅いので十分な養生時間をとる必要がある(19.7.3(e)(5)参照)。
(4) 「標仕」19.8.3(c)では、下地にシーラーを塗るように定めている。シーラー塗るは、はけ・ローラー等を用いて全面にむらなく塗布する。
なお、シーラー塗るには次の目的がある。
(i) 接着性を向上させる。
(ii) 下地の吸水性の調節と、あく等が表面に浮き出るのを防止する。
(iii) 張起し等、張り作業が容易な下地面をつくる。
(iv) 下地の色違いを修正する。
(v) 張替えの際にはがしやすい下地をつくる。
(c) 模様のある壁紙では継目部分の模様にずれがないようにすることが重要である。また、色むらにより多少の濃淡がある場合は、色合せをして確認し目立たないように配置する。
(d) 壁紙のジョイントは、できるだけ突付け張りとし、やむを得ず重ね裁ちする場合は、下敷きを当てて行い、刃物で下地表面を傷つけることがないように施工する。
(e) ビニル壁紙等で硬いものには、収縮や反りが大きいものがあるため、継目等壁紙の周囲で、はく離を生じやすい。このような場合、壁紙の周囲の接着剤には接着カの強いものが必要である。
(f) 張り終わった箇所ごとに、表面に付いた接着剤や手あか等を直ちにふき取る。特に建具、枠回り、かもい、ジョイント部等は,放置しておくとしみの原因となるので注意する。
19.8.4 施工管理
(a) 施工環境
(1) 寒冷期に室温や下地面が 5℃以下又は接着剤の硬化前に 5℃以下となるおそれのある場合は、採暖等の措置を施す。乾燥不足になると壁紙類ははがれやすくなり、一方乾燥し過ぎると収縮による隙間の発生、ジョイントのはがれ等を生じるので、採暖に当たってはこの点に留意する。
(2) 室内の温度が高い場合には,通風・換気等を施す。
(b) 張上げ後の養生
張上げ後は急激な乾燥を避けるため、直射日光や通風等に対して適当な養生を行い、自然状態で接着剤を十分に乾燥させる。
(c) 張上げ後の検究
張上げ後に検査を行い、問題があれば適切にあと処理を行い仕上げる。注意点としては、下地精度による問題、張り忘れ、切り忘れ、ふき忘れ及び汚れ、ジョイント部のはがれ、隙間等が挙げられる。