3節 コンクリートブロック帳壁及び塀
8.3.1 一般事項
(1) この節の適用範囲は、鉄筋で補強された非構造部材の帳壁及び高さ2.2m以下の塀としているが、これらは、組積する行為は同じであっても目的や考え方が異なる部分が多いので注意する。特に、地震時や暴風時に転倒・倒壊や破損などが懸念される塀の基礎、控壁等については、5章[鉄筋工事]及び6章[コンクリート工事]によることが重要である。
また、コンクリートブロックの施工に関して、「ブロック建築技能士」の資格制度が設けられている。
(2) 帳壁工事の作業の流れを図8.3.1に示す。
図8.3.1 コンクリートブロック帳壁工事の作業の流れ
(3) 施工計画書の記載事項は概ね次のとおりである。
また、 赤文字 を考慮しながら品質計画を検討する。
?@ 帳壁の位置と主体構造の種別及び寸法
?A 帳壁の主要支点間距離及び主要支持辺の位置
?B 鉄筋の種類、径及び定着・継手の方法・位置
?C コンクリートブロックの種類、形状寸法
?D ブロック割りとその組積パターン(関口部、金物取付け位置を明示)
?E 鉄筋のかぶり厚さ及び鉄筋の間隔・あき
?F 帳壁の施工方法(先積み工法とあと積み工法で、鉄筋の組立順序が異なる)
?G 主体構造との緊結方法(主体構造に対するクリアランスの大きさによる固定緊結又は可動緊結を明示)
?H 鉄筋の継手又は定着方法(溶接の場合は溶接方法)
?I 壁端部又は開口部周囲の補強方法
?J 仕上げの有無と仕上げ材の種類
?K 孔あけ等の位置と寸法
?L 先付け金物の位置と取付け方法
?M 配管位置とその形状寸法
?N 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制,管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(4) コンクリートブロック帳聖(間仕切壁)
(ア) 帳壁とは、柱・梁で構成される主体構造物の中に構築され、建築物にかかる水平荷重及び鉛直荷重を負担させない壁であるが、壁体にかかる地震や風によって生じる面外方向の力に耐える必要がある。組積の時期は主体構造が完成した後であり、あと積み工法になるので主体構造体への鉄筋の緊結が重要になる。また、主体構造物の変形を阻害しないためのスリットを適宜設ける。
(イ) (ー社)日本建築学会「壁式構造関係設計規準集・同解説(メーソンリー編)」に規定されている「コンクリートブロック帳壁構造設計規準」には帳壁の規模について次のように記述されている。
なお、主要支持辺とは帳壁を主として支持する辺をいう。主要支点間とは一方の主要支持辺と他方の主要支持辺との間をいう。主要支点間の方向により、主筋と配力筋の方向が定まるので必ず確認する。
(a) ブロック帳壁は地盤面より20mを超える外壁部分に用いてはならない。これは、厳しい風圧や変形性能の規定に、ブロック帳壁で設計することは不可能ではないが、施工方法等も考慮して20m以内としている。10〜20mの場合でも告示や本規準等を遵守し構造安全性を確保しなければならない。
(b) 一般帳壁の主要支点問距離(L1)は、3.5m以下とする。ただし、地下部分にある階で、当該階の周囲壁面の見付面積が平均して階高の2/3以上地中に埋没している場合は、4.2m以下とする(図8.3.2参照)。
図8.3.2 主要支点間距離
(c) 小壁帳壁の持出し長さ(L2)は、1.6m以下とする。また、スパンが持出し長さの2倍半を超える場合は、小壁帳壁となる(図8.3.3参照)。
図8.3.3 主となる方向の持出し長さ
(ウ) 壁厚は、仕上げの部分を除き表8.3.1に示す数値以上とする。
なお、外壁で地盤面からの高さが10mを超える部分に使用する場合は、告示や日本建築学会規準等を参考にして定める。
表8.3.1 壁 厚
(5) ブロック塀
ブロック塀は工法が比較的簡単であることから管理も安易に行われやすい。しかし、補強コンクリートブロック造やコンクリートブロック帳壁と比較して、直接風雨にさらされ、荷重の支持も主として地盤面の基礎によっていることから、かぶり厚不足による鉄筋の腐食、配筋不良、基礎構造不備等の原因による地震時の倒壊が多い。また、道路側に建てられることも多く、倒壊による人的被害の危険性は極めて高い。したがって、適切な設計と施工を心掛ける必要がある。建築基準法施行令62条の8 には、高さ、壁の厚さ、控壁の設置、配筋など7項目が定められており、確実に順守しなければならない。
なお、基礎の寸法や配筋については特記となっているため、(-社)日本建築学会の「ブロック塀設計規準・同解説」等を参考に、安全な塀とする必要がある。
「標仕」での適用範囲は、高さ2.2m以下としているが、地盤の特性、基礎の形状、控壁、根入れ深さ、ブロックの厚さ等を検討し、風圧力、地震力に対し安全なブロック塀を構築する必要がある。安全性を確かめるための構造計算の基準は「補強コンクリートブロック造の塀の構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成12年5月23日建設省告示第1355号)に定められている。塀の高さの測り方を図8.3.4に示す。作業の流れは帳壁の図8.3.1を参照する。施工計画書は基礎工事・フェンス工事等を塀全体として作成するとよい。
図8.3.4 塀の高さの測り方(コンクリートブロック塀設計規準・同解説より)
8.3.2 材 料
(1) ブロック
使用するブロックは、「標仕」8.3.2ではJIS A 5406(建築用コンクリートブロック)の規格に適合するもので、種類、圧縮強さ、モデュール呼び寸法及び正味厚さは、特記によるとしている。
なお、一般的には「標仕」表8.3.1に示した空洞ブロックC(16)を用いる。空洞・基本形・化粧無しブロックで10mm目地とし、長さ×高さのモデュール呼び寸法は 400×200(mm)、実寸法は390×190(mm)である。
(a) 帳 壁
ブロックの厚さは、表8.3.1に示すように帳壁の規定に適合していることを確認する。化粧ブロックを用いる場合の厚さとは、実厚さではなく、正味厚さを示すので注意が必要である。
(b) ブロック塀
ブロックの厚さは、「標仕」8.3.2に示すように、特記がなければ塀の高さが2m以下の場合は120mm、2mを超え2.2m以下の場合は150mmとする。建築基準法施行令第62条の8 第二号には「壁の厚さは、15cm(高さ2m以下の塀にあっては、10cm)以上とすること。」と定められているが、厚さ100mmのブロックでは鉄筋のかぶり厚さ等十分な耐久性が確保できない可能性があり、「標仕」や(-社)日本建築学会「コンクリートブロック塀設計規準・解説」では120mm以上としている。転倒等の安全性を考慮すると塀の高さがおおよそ1.2mを超える場合は、厚さ150mmとすることが望ましい。化粧ブロックを用いる場合の厚さとは、実厚さではなく、正味厚さを示すので注意が必要である。
ブロック塀に化粧ブロックを用いる場合は、基本形横筋ブロックのみで構築される場合がほとんどで、また、縦目地と横目地の幅が異なる寸法の化粧ブロックが多くなっている。例えば、長さ× 高さのモデュール呼び寸法が 400 × 200 (mm)の場合で、縦目地が1mm、横目地は10mmの製品では、製品の実寸法は399 x 190(mm)となる。モデュール呼び寸法体系も多種になっているので、長さ× 高さのモデュール呼び寸法、製品寸法や実厚さについてはメーカーのカタログ等を参考にされたい。
なお、控壁は、RC造とするか型枠状ブロック又は空洞ブロックを用いてコンクリートを全充填する。
8.3.3 モルタル及びコンクリートの調合
モルタル及びコンクリートの調合は、基本的に補強コンクリートブロック造に用いるものと同じと考えてよい。ただし、標誰目地幅が10mmと異なるブロックを用いる場合は、監督職員と協議し、既調合モルタルの使用も検討すると良い。
8.3.4 鉄筋の加工及び組立
(1) 加工及び組立一般
壁体に加わる外力で考慮しなければならないのは、主として面外方向の外力である。この外力に抵抗するのは鉄筋であり、鉄筋によって主体構造や基礎に伝達される。この伝達を受け持つのが主筋であり、それと直行方向に配筋されて面材として一体化する役目を持つのが配力筋である。したがって、主筋は、帳壁の場合には主要支点間方向に配置され、主要構造物に十分に緊結されなければならない。塀の場合には、基礎に緊結されなければならない。
(a) 外力は、面外方向の正負両方向に加わるために厚さ方向の中心部に配置する必要から、「標仕」ではブロック空洞部の中心部に配筋するとしている。また、中心部に配筋するためには、鉄筋の位置決め及び床や基礎のコンクリート打設時に移動がないように堅牢な振れ止めを設ける必要がある。
(b) 「標仕」では、壁鉄筋の継手、定着及び末端部の折り曲げ形状は、特記によるとしている。従来は、主筋には継手を設けないとしていたが、帳壁では上下階への定着が困難な場合が多いことや施工性なども考慮して、応力伝達が可能な溶接接合等による継手も認められている。ただし、塀の主筋の場合には、継手は認められていない。
配力筋は、壁端部鉄筋に180度フックによりかぎ掛けすることや、直交壁に定着させる方法などが (-社)日本建築学会の規準に定められている。
「標仕」では、これらについて、特記としており、参考としては (-社)日本建築学会の「壁式構造関係設計基準集・同解説」「壁式構造配筋指針」「JASS 7メーソンリー工事」等の該当部分を用いるとよい。
帳壁の各部配筋を表8.3.2及び表8.3.3に、配筋例を図8.3.5に示す。
表8.3.2 一般帳壁の壁筋(コンクリートブロック帳壁構造設計規準・同解説より)
表8.3.3 小壁帳壁の配筋(コンクリートブロック帳壁構造設計基準・同解説より)
図8.3.5 ブロック帳壁の種類・鉄筋の名称・主要支点間・主要支持辺等(壁式構造配筋指針より)
(c) 帳壁を土間コンクリート上に設置する場合は、帳壁の鉄筋を土間コンクリート内に定着させるとともに、帳壁下部には補強を行う。
(d) 帳壁工事では、現場作業工程上やむを得ずコンクリート躯体へあと施工アンカーを施工したり、鉄骨躯体へ溶接施工したりして帳壁を緊結させる必要が生じる場合がある。あと施工アンカーの使用は監督職貝の承諾事項である。特に、小壁帳壁のように、曲げ・せん断力が加わる場所に使用する場合は、専門業者による検討や施工も必要である。また、「(-社)日本建築あと施工アンカー協会」等に確認して、適切なものを使用する。
(e) ブロック塀
?@ ブロック塀の配筋は、塀を補強するのみならず、塀と基礎、控壁等と緊結する役目を担っている。地震時の塀の転倒は部材間の連結(継手、定着)不良によるところが多いので、十分施工の確認を行う必要がある。控壁は3.4m以下ごとに設け、鉄筋コンクリート造又は型枠コンクリートブロック造とする。
?A 主筋をブロック中心部に配筋するためには、基礎コンクリート打込み前の主筋の位置決め及びコンクリートの打込み時に移動がないように図8.3.6に示すように堅牢な振れ止めを設ける必要がある。縦筋は継手を設けてはならない。
図8.3.6 縦筋頂部の高さそろえ、振れ止めの例
?B ブロック塀頂上部は、横揺れを生じやすい。横筋は壁頂を一体化し横揺れを防止する役目をもっている。したがって、縦筋は頂上部の横筋にかぎ掛けとするか又は90゜フックで余長10d以上とする。頂上部の横筋に縦筋を正確にかぎ掛けするためには図8.3.6に示すように振れ止めを設ける。さらに、頂部の横筋の端部は控壁に定着するか縦筋に180度フックでかぎ掛けすることが望ましい。しかし、現実には控壁との高さの違いなどによりかぎ掛けが困難な場合があり、この場合は横筋を鉛直に曲げ、縦筋と25d以上の定着を取るようにする(図8.3.7)。塀の重ね継手長さ及び定着長さを表8.3.4に示す。
図8.3.7 ブロック塀の配筋例
表8.3.4 定着及び重ね継手の長さ(コンクリートブロック塀設計規準・同解説より)
(2) 各部の配筋
各部の配筋は、特品によるとしている。各部の配筋は、(-社)日本建築学会「壁式構造配筋指針・同解説」、同「壁式構造関係設計規準集・同解説(メーソンリー編)」を参考にするとよい。帳壁の配筋例を図8.3.8に示す。
図8.3.8 帳壁の配筋例図
8.3.5 縦やり方
塀の縦やり方は、8.2.6による。特に、基礎部分の位置、形状や配筋位置などに合わせた指標として、やり方は小規模工事であっても設けられることが多い。ブロック塀でのやり方の例を図8.3.9に示す。
図8.3.9 コンクリートブロックの組積におけるやり方の例
なお、縦やり方については、電子式の自動式レベル器などが進歩しており、やり方を省略する工事現場が多くなっている。丈夫な基礎の上部に、水平で鉛直な塀の構築が重要である。
8.3.6 ブロック積み等
ブロックの積み方は8.2.7によるほか次による。
(ア) 帳壁
(a) 最上段のブロックと主体構造体との取合い部の一例を図8.3.10に示す。最上段を組積し、溝部分にモルタルを充填する。
(b) 開口部に設けるまぐさは、8.2.7 (ク) と同様に行う。
図8.3.10 最上段の納まり例
(イ) ブロック塀
笠木は、汚れ防止や耐久性向上等の観点から雨水が直接壁面に当たらないようなはね出しのあるものが望ましい。笠木ブロックを用いる場合は、モルタルが充填でき、鉄筋のかぶり厚を十分に確保できる空洞を有し、地震時の脱落防止の対策が考慮されている形状が望ましい。
8.3.7 モルタル及びコンクリートの充填
モルタル及びコンクリートの充填は、8.2.8による。
あと施工の帳壁でスラブ若しくは梁下まで充填する場合は、頂部に投入穴を設ける。部分的であっても、型枠状ブロックを使用する場合には、コンクリートを全充填することを原則とする。
8.3.8 ボルトその他の埋込み
ボルトその他の埋込みは、8.2.9による。
8.3.9 電気配管
電気配管は、8.2.10による。
8.3.10 養生
養生は、8.2.11による。特に、ブロック塀は、屋外工事がほとんどであるため、気象状況に応じた養生に注意する。