5節 押出成形セメント板(ECP)
8.5.1 一般事項
(1) 押出成形セメント板を外壁に用いる場合は、一般的に塗装やタイル張り等の仕上げが施される。間仕切壁の場合は、塗装等のほか押出成形セメント板を耐火壁として用い、仕上げに軽量鉄骨下地にボードを張って別に仕上げを行うこともある。
(2) 作業の流れを図8.5.1に示す。
図8.5.1 押出成形セメント板工事の作業の流れ
(3) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。
なお、 赤文字 を考慮しながら品質計画を検討する。
?@ 工程表(施工図の作成、各ブロック別の着工・完了等の時期)
?A パネルの製造所及び施工業者名
?B パネルの種類、耐火性能(認定番号)、使用箇所及び搬入・保管方法
?C パネルの割付け、取付け詳細及び伸縮目地の配置
?D パネルと建具枠等の取合い及び納まりの詳細
?E 仕上材等の種類及び工法
?F シーリング材の種類
?G パネルの養生計画
?H 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
8.5.2 材 料
(1) 押出成形セメント板
(ア) 押出成形セメント板は、セメント、けい酸質原料、繊維質原料及び混和剤を混練し中空を有するバネル状に押出成形したものをオートクレープ養生して製作したものである。
種類として、表面が平滑なフラットパネル、意匠的な凸凹を有するデザインパネルがある。タイル張り用として、モルタルを用いてタイル張りを行うあり足形状を持つもの、有機系接着材を用いてタイル張りを行うフラット状のもの、専用タイルを引っ掛けるためのリブ形状を持つものがある。
押出成形セメント板の寸法は、外壁に用いる場合は厚さ60mm、長さ3,500〜4,500mmが一般的に多く用いられる。
なお、パネル厚さ60mmで非耐力壁耐火1時間、パネル厚さ50mmで非耐力壁耐火30分の認定をパネル製造者が取得している。認定番号については表8.5.1に示す。
表8.5.1 耐火性能
間仕切壁の場合は、厚さ60mmが多く用いられ、長さ5.000mm以下で階高に合わせて設計される。支持間隔は、パネルに面外力が加わらないため一般的には上下端で固定する。また、間仕切壁であってもエレベータシャフト等パネルに外力が加わる場合は、計算により支持間隔を決定する。パネルの支持間隔は、パネルの設計許容曲応力度とたわみ基準により決定される。計算方法については、「JASS 27 乾式外壁工事」に示されているので参考にするとよい。フラットパネルについて、風圧力と支持間隔の関係を図8.5.2に示す。
図8.5.2 風圧力と支持間隔
(イ) 押出成形セメント板には、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (5)参照)で評価された製品があるので参考にするとよい。
(ウ) JIS A 5441(押出成形セメント板(ECP))の抜粋を次に示す。
3. 定義
この規格で用いる主な用語の定義は、次による。
a) 繊維質原料
バルプ.ガラス質繊維など(石綿を使用してはならない)。
b) 押出成形法
形状に合わせた金型を通して、原料を述続して板状に押し出し成形する製法。
c) 働き幅
製品幅に目地幅(目地幅は製造業者ごとに定められている。)を加えた寸法。
4. 種類及び記号
ECPの種類は、表面形状及び充てん材によって表1及び表2のとおり区分する。
a) 表面形状による種類
表面形状による種類の区分は、表1による。
表1 表面形状の種類
b) ロックウール充てんの有無による種類
ロックウール充てんの有無による種類の区分は表2による。
表2 ロックウール充てんの種類
5. 形状及び寸法
5.1 形状
ECPの形状の例を、図1に示す。
5.2 寸法
ECPの寸法及び許容差は、次による。
a) 標準品
標準品の寸法は表3及び寸法の許容差は表4による。
表3 標準品の寸法
b) 特注品
特注品の長さ及び製品幅は、受渡当事者間の協定による。ただし、許容差は、表4による。
図1 形状の例(その1)
図1 形状の例(その2)
図2 製品幅及び厚さの例
図3 タイルベースパネル表面のあり溝形状の例
5.3 寸法の許容差
標準品及び特注品の寸法許容差は、表4による。
表4 寸法の許容差
6. 品質
6.1 性能
性能は、7.によって試験し、表5の規定に適合しなければならない。
表5 性 能
JIS A 5441 : 2003
(2) 金物
(ア) 下地鋼材及び開口補強鋼材等は、JIS G 3101(一般構造用圧延鋼材)のSS400を用いる。
(イ) 取付金物は、原則としてZクリップを用いてパネルの4隅に取り付ける。パネル内のZクリップ取付位置は、長さ方向では端部から80mm以上とする。また、幅方向では、原則として端部から2穴目とするが、パネル幅が400mm未満の場合は端部から1穴目でもよい。金物はパネル製造所が指定するものを用いる。
また、出脹、入隅部等Zクリップにより取り付けられない部分については、パネル製造所が指定する特殊金物を用いる。
パネル取付金物がスラブ等と接する部分となる場合には、この部分の隙間にロックウール等を充填する(層間ふさぎ)。
取付け金物については、ECP(押出成形セメント板)協会「取付金物の認証制度」等を参照するとよい。
(3) 金物の表面処理
取付け金物の表面処理は、電気亜鉛めっき処理(「標仕」表14.2.2のF種)を原則としている。ただし、常に湿度が高い環境や雨水が掛かる屋外に暴露した所に用いる場合は、溶融亜鉛めっき処理等を行う。
(4) 補修に用いる材料
欠け、傷等の補修材は、パネルと補修材との接着性、補修材の物性及び品質安定性が重要である。そのため補修工事は、その品質が確認されているパネル製造所指定の補修材を用いて行う。
(5) シーリング材
シーリング材は、「標仕」9章7節により、特記がなければ、「標仕」表9.7.1による。
なお、プライマーは必ず使用し、シーリング材とプライマーの組合せは各シーリング材製造業者が指定するものを使用する。