来週トランプ大統領が初めて訪日することになりました。少し前まで「米国がくしゃみをすると日本は風邪を引く」と言われていた時期がありました。今はグローバル化が更に進み、英国のEU離脱や中国の動向など、海外の様々な国の政治経済が直接・間接的に日本経済に影響を及ぼしています。経済だけでなく、日本の戦後体制の根幹的システムの設計をリードしたのは、戦後7年間日本を占領していた米国GHQです。安全保障等の問題も含めて、米国が日本にとって最も重要な外国のパートナーであることは疑う余地がないでしょう。
かつてと較べようもないグローバル経済の進展とは裏腹に、各国の選挙と政治では反動的な勢力が活発化しています。この動きの先陣を切ったのが、トランプ大統領が提唱する「アメリカ・ファースト」の政治です。今やこのキャッチフレーズがはるか過去の出来事に聞こえるくらい、世界の政治経済は混迷を極めています。そして、内向きの政治姿勢では解決策が見いだせないにもかかわらず、アメリカ・イギリス・オーストリアを始め多くの国々が極めて排他的・保護主義的なな外交・移民、経済政策を主張し、実行しています。
就任してから1年近く経つにもかかわらず、なんら目立った成果を挙げていないトランプ大統領の支持率は歴代最低をマークしています(但し、トランプに投票した人からの支持率は依然高いとの調査結果もありました)。それでも経済・安全保障とも米国と緊密な関係にある日本の政治・経済人はトランプ大統領の政策や動向を注視し、彼がどのような市民や団体に支持され、今後どの方向に進むのか、ビジネス・パーソンにとっては、彼の政策によりどのような便益・リスクを受けるのかを、我々日本人は見極める必要があります。
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私が最後に米国を訪れたのは、2008年にオバマが大統領に選ばれたシカゴでの二つの国際会議です。オバマの出身選挙区はシカゴ市で、当時街はオバマ・フィーバーに沸いていました。また、その年は20世紀初頭のThe City Beautiful Movementを基盤としたシカゴの有名な都市計画策定の100周年記念の年でした。まるで教会のような美しい高層建築と高級ホテルが立ち並ぶシカゴの中心部は、夏には多くの国際会議や見本市が開催され、2008年夏も街は活気に溢れていました。しかしリーマンショックが起こった年だった事もあり、街中にはホームレスも多く、暗くなると街の中心部でもそれなりの緊張を強いられました。また、名門シカゴ大学の周辺にある高層公営住宅(犯罪も多発する貧困地区です)や中流層も徐々に移住してきているインナーシティ地区なども視察に訪れたりしました。この地域も低所得者層が多く住む地区ですが、高層公営住宅が取り壊された後に低層の住宅群に再開発され、様々な所得層の人が住むように地区全体が再設計されていました。
以前から良く知っていたことですが、この時もやはり米国の深い社会的分断をまざまざと見せつけられたことが鮮明に記憶に残っています。今米国の景気は上向きだとは言え、この時見かけた貧困に喘ぐ人々が今の好景気の恩恵を受けているとは思えません。そして、このような社会的分断がトランプが米国の大統領に選ばれた最大の理由です。トランプというジョーカーのような人物がいないだけで、事情は日本でも同様ではないでしょうか?
先日サービス業の米国進出セミナーに参加したのですが、このようなアメリカ社会の様々な側面を知ることが、普段の異文化コミュニュケーションやビジネス・外交交渉に大きく影響してきます。今回の記事には多くの数字が出てきますが、数字の裏にある様々な事象に思いを馳せながら、米国をより深く知りたいと思います。
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