ヒトのDNAは二本鎖DNAは 直線状であるが,大腸菌の二本鎖DNAは 環状である.細胞分裂をしていない通常時( 間期)は,各々の細胞が1セットのDNAを内包している.しかし,ヒトなどの動物の真核生物の細胞内にはミトコンドリアという細胞小器官が複数存在する.各々のミトコンドリアがDNAを内包しているため,ヒトの細胞はヒト由来のDNAと複数のミトコンドリアDNAを持っていると考えられる.現在のところ場合にもよるが, ヒトゲノムといえばヒト由来DNAとミトコンドリア由来のDNAを合わせたものと考えることが一般的ではなかろうか.
ヒトなどの真核生物のDNAは ヒストンというタンパク質に巻きついて存在する.ヒストンは8つのタンパク質(H2A, H2B, H3, H4がそれぞれ2つずつ)からなる 八量体を形成しており形は円筒状となっている.DNAはその円筒に約1周半程度巻きついている.DNAの長さにしておよそ140bpである.このような構造を ヌクレオソームと呼ぶ.
ヒストンには塩基性アミノ酸である リジン(K)や アルギニン(R)が多く含まれており,プラスに電気的な偏りを生じている.一方で,DNAのリン酸ジエステル結合はマイナスに電気的な偏りを生じており互いに引き合っている.
また八量体を形成しているコアヒストンは各ユニットのヒストンタンパク質の N末端側が外側にヌクレオソームの外側に向かって飛び出すような構造となっている.これを ヒストンテールと呼び,様々な 化学修飾を受けることでDNAの働きを調節していることがわかってきている.
真核生物のDNAにはヌクレオソームが複数点在しており,ヌクレオソーム間は線状のDNAが繋いでいると考えられる.この部分のDNAを リンカーDNAと呼ぶ.リンカーDNAはヌクレオソーム間を架橋しいて,更に ヒストンH1がくっついている.
このようにヌクレオソームがDNA上に点在して数珠のような構造になっているのを,例えで beads on a stringと呼んだりする.更に,この構造がらせん状に巻き super-coiled structureや ソレノイドと呼ばれたりする.このように,直線状のDNAは核内で密に畳まれている.近年の研究ではこのような構造をとっているDNAは化学反応が起こりにくかったり損傷を受けにくかったりするのではないかと考えられている.
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