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2019年02月02日

ミトコンドリア遺伝

 ミトコンドリアは赤血球など一部の細胞を除いた全ての細胞に存在しおり, 酸化的リン酸化という ATPを介したエネルギー産生を担っていると考えられている.ヒトは母と父それぞれ片方ずつから に存在する相同染色体を引き継いでいるため 二倍体である.相同染色体の同じ遺伝子座に位置する対立遺伝子が同じであればホモ接合体と呼ばれ,異なればヘテロ接合体と呼ばれる.これらは身体の設計図である 遺伝子型(genotype; ジェノタイプ)を表している.実際に遺伝子が働いて身体の機能を果たしている状態を 表現型(phenotype; フェノタイプ)と表している.一般的に遺伝子型が表現型を規定していると考えると分かりやすいが,遺伝子型になんらかの 変異があったとしても表現型に明らかな異常がない場合もある.また,その逆も真である場合がある.

 ヒト由来のDNA(nuclear DNA)はこのように二倍体であり相同染色体を比較することができるが,ミトコンドリアは 細胞小器官として細胞内に10数個程度存在しており,エネルギー需要に応じて増減すると考えられている.また,ミトコンドリア固有のDNAであるミトコンドリアDNA(mtDNA)は一つのミトコンドリアに複数個認められる.このため細胞内のミトコンドリアDNA量を効率よく定量できる方法は未だにないが,細胞の置かれた状態に応じてミトコンドリアDNAの量も増減していると考えられる.また,ミトコンドリアDNAは 細胞分裂にあたって 娘細胞にそれぞれ分配されると考えられているが様式などは未だ不明な点が多い.

 細胞内のすべてのミトコンドリアが同一のDNAを持っている状態をホモプラスミーと呼び,細胞内のミトコンドリアがそれぞれ異なるDNAを持っている状態をヘテロプラスミーと呼ぶ.通常ヘテロプラスミーと呼ぶ場合には 変異を含んだDNAを含んでいることを指している.どの程度の数のミトコンドリアが異なるDNAを持っているかは ヘテロプラスミーの度合いとして捉えられ,この数値が高くなると ミトコンドリア病という疾患を発症しやすくなると考えられている.ミトコンドリアは細胞のエネルギープラントとしての働きを有しており,ヒトの活動の90%以上を担っているという見方もある.これが失活すると様々な症状を呈するが,特に大量のエネルギー需要を有する 中枢神経 筋肉に異常が認められることが多い.ミトコンドリア病は様々な病型として現われてくるが,よく知られたものに 慢性進行性外眼筋麻痺(Chronic progressive external ophthalmoplegia),マーフ(MERRF),メラス( MELAS)がある.

 ミトコンドリアDNAはおよそ16,000bp程度の塩基数しかなく,tRNAなど含めて エネルギー代謝に関わる遺伝子を持っている.しかし,実際ミトコンドリアDNAから得られる遺伝子発現だけではミトコンドリアの活動は十分に保証されない.細胞の核DNAがミトコンドリアに関する遺伝子を多数有しており,それらが遺伝子発現することでミトコンドリアの活動が担保される.ミトコンドリアはエネルギー産生だけでなく,宿主である細胞の発達,分化,化合物合成,代謝など幅広い活動に関与している.

 ミトコンドリアは母系遺伝すると言われている.このため母親がミトコンドリア病に罹患している場合は浸透率100%であったと仮定すると子も必ず疾患を発症する.一方で,父親がミトコンドリア病に罹患している場合は子は疾患を発症しない.父由来の生殖細胞にあるミトコンドリアがオートファジーにより分解されるためと考えられてきたが,近年父親由来のミトコンドリアを持つ子供がいるといった報告が散見されるようになってきている.

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posted by Alice at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 染色体
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