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2014年11月15日
プルコギ @Seoul
閉店間際の店内はガラガラだった。
その誰もいない店内で待ち合わせていた宿のスタッフが、
見知らぬ男と笑顔で酒を酌み交わしていた。
「あれ〜」
「なにしてんの、ここで」
「それはコッチのセリフでしょうが」
赤ら顔の彼は談笑を止め、突然現れたわたしたちに驚いていた。
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「待ってたんだぜ?」
「え?」
「待ち合わせしたジャン」
みなで矢継ぎ早に詰め寄る。
「あ」
「あ? って?」
「忘れてた…」
アジアン・スタイルという読みはあながちハズレじゃなかった。
「夕方に友達(チング)が尋ねてきてさ、『ご飯行こう』ってことになって、
それでここへ来たんだ」
「おーい、おれたちはキッチンで待ってたんだよ〜〜」
「ごめ〜ん」
「でもなんでここへ?」
「わからない、記憶の片隅に『焼肉行こう』っていうのがあったのかも。
ごめん、ホント、突然、友達が来て、忘れてしまったんだ。ゆるして〜〜」
「もういいよ〜。こうやって食卓囲んでいるから」
これ以上、怒っても文句をいってもしょうがない。
これが「アジアン・スタイル」なのだから。
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「で、彼がチング?」
「そう。白(ペク)さん。釜山の友達なんだ。
就職活動でソウルで面接があったんで、ホステルに立ち寄ったんだよ」
テーブルの向こうのネクタイ姿の彼を紹介してくれた。
「ホステルに泊まるために?」
「違う違う。久しぶりだから、ソウルに来たついでに会いに来てくれたんだ」
「へえ、旧友再会か。じゃあ、彼に免じて許してあげるよ」
「ごめんよお〜〜。ゆるしてくれよお〜〜」
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英語とハングル、日本語がゴチャゴチャになった会話で、友達はポカンとしていた。
彼が事細かに説明すると、ペクさんまでもが「お前が悪い」といい出し、
テーブルは一気に和んだ。
「腹減って死にそうだあ」
「ごめんよお〜〜。ビールも焼酎もあるからさあ」
貸し切り状態の店内に笑い声が響く。
釜山の友達も交え、彼を酒の肴にしながら、焼肉をつついた。
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2014年11月14日
マチアワセ @Seoul
夜は宿のスタッフと待ち合わせていた。
翌日帰ってしまうこともあって、
長期滞在の日本の人と「ハナシしがてら、ご飯にいきましょう」ということになり、
ついでに宿のスタッフにも声をかけた。
昼番と夜番が切り替わる時間、
仕事が上がる時間あら都合がいい、ということで、その時間に約束を交わした。
日が落ち、写真も撮れず、街歩きを終え、宿に戻る。
フロントにいるはずの彼がいなかったので、
キッチンでコーヒーを飲んでくつろいだ。
待ち合わせまでまだ時間があるので、野暮用で出ているのかもしれない。
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「さっきからいないんですよ」
出かける支度を整え、キッチンに下りてきたひとりがいう。
「時間あるからでかけてるのかな」
「まあ、待ってましょう」
と、コーヒーを淹れながら、四方山バナシに花を咲かせた。
ところが約束の時間になっても戻ってくる気配がない。
携帯にかけてもつながらず、話しをしている間に30分が過ぎた。
「なんだろうね?」
「どうしたんだろう、あいつ」
多少の時間のレイジーさはアジアではよくあること。
「アジアン・スタイル」はここ韓国でも似たようなものだ。
日本人の時間に対するシビアさは世界中でも例をみない。
たぶんあの国は「アジア」じゃないのだろう。
一時間が過ぎようとしている頃、さすがにシビレを切らせた。
なにせ携帯電話もつながらないので、どうしようもないのだ。
オナカの具合はアジアン・スタイルとはいってられない。
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「店、閉まっちゃうね」
一人じゃ食べられない焼肉がいい、ということで
このハナシが持ち上がったのだ。
「夕食、食いっぱぐれちゃかなわないから、もう行こう!」
連絡の取れないスタッフはあきらめ、宿を出た。
宿の前には東大門から鐘路へ抜ける大通りが走っているので、
通り沿いに比較的店が多い。
なかには24時間営業の食事場所もあるが、
ほとんどの店は早めに閉めてしまうので、慌てて、目当ての焼肉店を目指した。
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「まだやってます?」
「片づけはじめちゃってるけど、いいわよ」
おばちゃんの声に導かれながら、焼肉店の中に歩みを進めた。
するとそこには思いがけない事態が待っていた。
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2014年11月13日
ホウカゴ @Seoul
今日も気温が高かった。
宿から清渓川(チョンゲチョン)沿いを歩く。
このあたりは「新設洞市場」というエリアらしく、
路地裏に入ると、問屋や町工場がひしめいている。
カメラを構えるとかなり異質らしく、
おもしろがってポーズする人、照れてはにかむ人など、表情が柔らかい。
普通に仕事をしているのだから、邪魔しないように、が基本。
間を見て、声をかけると笑顔で応えてくれるのがうれしい。
「こんなところ写真に撮ってどうするのさ」
「お前の写真、撮ってるよ」
そんな声が聞こえてくるのも楽しい。
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リニューアルした清渓川もこのあたりまで下ると、
かなりワイルドな姿に変わる。
川を東に進むと、雑草は自由奔放に夏の名残りを楽しんでいるし、
かつてこの川を覆っていた高速道路の橋脚もその姿を残している。
さらに路地裏をさまようと小学校に出くわした。
ちょうど下校時間らしく、
学校前にある駄菓子屋からは、子供たちが出入りを繰り返している。
グランドで駆け回っている子はいるし、
歩道で口喧嘩しながら帰って行く子もいる。
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校門の前では子供たちが群がっていた。
アイス屋さんが店開きしているのだ。
アイスが恋しくなるほど、今日は熱い。
まして下校時となれば、買い食いの誘惑に抗えるわけがない。
「写真撮らせてね」と声をかけ、放課後の時間にお邪魔する。
コーンに乗せられたアイスを受け取ると
うれしそうに駆け出していく子がいる。
なかにはお釣りを受け取るの忘れ、
おばちゃんに大声で呼ばれている子供もいる。
自分の順番が待ち遠いのか、
アイスが入った器を覗き込む子もいる。
子供たちの払っている金額は300wかな。
彼らの放課後を邪魔したくなくて、おばちゃんに金額すら尋ね忘れた。
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大きな子も小さな子も小銭を握り締めて、順番待ち。
一緒になって食べてみるのもよかったが、
カメラを抱えた外国人がアイスを舐めているのは異様だろう。
おまけに180cmもある大の大人が、
子供たちに混ざって、行列するのも悪い気がした。
なにせ放課後の子供たちは次から次にやってくるのだから。
あるいは翌日の教室の話題になるべく、食べるべきだったのかもしれない。
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2014年11月12日
ハンジュンマク @Seoul
汗を流し、リフレッシュしたあと、また街を歩いた。
長風呂自体が得意でなく、
アカスリやマッサージも苦手なので、短い時間で切り上げた。
湯上がりの火照った顔でいると
別のフロアに進む人の流れがあることに気づいた。
そっちには汗蒸幕(ハンジュンマク)のフロアがあった。
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明るくキレイな木張りの床がフロアを覆いつくしている。
キャッチボールかテニスでもできそうなぐらいの広さがある。
床はオンドル式なのだろう、
生きているのか、あるいは息絶えているのかわからなかったが、
サウナ着の上下を着た色合いの揃った男女が相当数、転がっていた。
「転がっている」という失礼な表現がまさしくピッタリで、
築地の市場のように転がっているのだ。
リラックスが目的なので、なにをするわけでなく、
ただ「転がって」いるのだけで、垣間見たこちらとしてはかなり異様な風景なのだ。
マグロの群れの向こうに汗蒸幕(ハンジュンマク)の設備があった。
入口には内部温度が示され、それぞれ好みの温度で調理してくれるようだ。
汗だくのオバハンが開放されて、出てくると、
腰に手を当て、水を飲み、享楽の奇声を発している。
汗蒸幕(ハンジュンマク)も入場料込みなのですね。
日本のように時間制限もないので、
「マグロ化」した人たちはのんびり過ごしているのですな。
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ガマン大会には興味がなかったので、うろうろを再開。
同じフロアにジムはあるし、食堂はあるし、マッサージはあるし、リラックスの宝庫だ。
日本のスーパー銭湯と同じ感覚。
時間制限がないだけ、こちらが上手かな。
入浴したせいか、少し歩いただけで小腹が減ってきた。
こういうときは手っ取り早い屋台が重宝する。
まさに「ファスト・フード」で、ソウルの「ソウル・フード」だ。
他の客の嗜好を眺めていると、どうやら「豚の串焼き」が人気。
塩味版と辛味版が次々、売れていく。
キレイに化粧したOLさんもかぶりついているのが、
日本の女性と違うところかな。
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こちらの興味は「アメリカン・ドッグ」。
あまり日本では見かけなくなったこいつにすっかりハマっている。
揚げたては絶品で、2〜3本は軽くイケそうな気がするが、
まだ試してみてはいない。
一本1,000wだからトライしてみてもいいんだけどね。
通常、屋台だとできあいをオーブンで暖めてくれるだけ。
これでもけっこうイケるのだけど揚げたてにはかなわない。
周りにポテトを貼り付けたバージョンもあるけれど、
コイツは「なにを食っているかわからない」状態に陥ります。
衣にポテトじゃ、バフバフなんですよ。
おばちゃん、揚げたてのそっちのヤツ、1つちょうだい!
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2014年11月11日
チムチルバン @Seoul
カギ付きの下足箱に靴を放り込み、階段を上がる。
男女別に下げられたノレンをくぐると、
広い脱衣所に沿うようにたくさんのロッカーが並んでいた。
渡されたカギの番号を探して、
細長く立ち並ぶロッカーのブロックの前で立ち尽くした。
数が多すぎるのだ。
たくさんの数字に戸惑っていると、スタッフが声をかけてくれた。
腕輪タイプになっているカギを差し出すと、
その番号があるロッカーの場所をあっさりと教えてくれた。
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受付から更衣室までは日本の風呂屋と変わりがない。
変わりがある風景は、といえば、
脱衣所や浴場にいく人たちが、前も隠さず歩いていることだろうか。
誰も彼も「ノーガード戦法」なのだ。
大きな鏡の前でドライヤーを使う人も、
湯上りに身体を拭く人も、
歯磨きをする人も、
押しなべて「ノーガード」なのです。
これは男湯に限ったことなのだろうか。
残念ながら調査の手はここで止まっているので、対岸の情報はわからない。
アカスリやタオルは中央に積まれていて、
どうやら好き勝手に使っていいらしい。
別に前を隠すタオルがないわけではない。
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浴槽は4つも5つもあって、それぞれ温度設定が異なっている。
サウナ、スティーム、ミストもそれぞれの小部屋に分かれ、
反対側では有料のアカスリ用のベッドがしつらえてあった。
http://japanese.visitkorea.or.kr/jpn/TE/TE_JA_7_3_5_13.jsp
寝湯はあるし、打たせ湯はあるし、金額以上に至れるつくせりだ。
おもしろいのはここにも胸ぐらいの深さの浴槽がある。
前回訪れたところにもあったが、
サイズと深さ、水温的にもちょっとしたプールなのだ。
客は20人ぐらいいるだろうか。
平日昼間にも関わらず、けっこ利用者がいることにも驚かされる。
シャンプーやヒゲソリは自販機で売られているので、
手ぶらでやって来ても気楽に利用できるのも大きな利点だろう。
ソウルの旅行ガイド
話によると韓国の人は家ではあまり風呂を使わず、シャワーで済ませ、
週に1〜2度、チムジルバンを訪れるらしい。
それにしても平日昼間からけっこう混んでいるのは、
仕事の合間に充電しに来ているのか、あるいは不定期休の人が多いのだろうか。
「ノーガード」の人たちにインタビューするわけもいかず、熱い湯に沈んだ。
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