かつてツアーを担当していたときにもこういうことはあった。
そちらのグループをビジネスにまわしていいですか」とか、
「そちらのツアーは12名と少ないので、
全員ビジネス・クラスに移動してもらえませんか」とか、
「宝くじ」に当たったようなハッピーなハプニングが起こることがあった。
出発前のカウンターで添乗員が航空会社のスタッフとなにやら談義していると、
ロビーで待っているツアーのお客さんたちは
押しなべて不安な表情をこちらに向ける。
なにかあったのか、トラブルなのか、
お客さんたちの頭の中はネガティブなイメージで埋め尽くされる。
それを知っていて、いつもお客さんにこう告げていた。
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「みなさんのエコノミーの席がなくなってしまいました。
代わりの席はビジネスになってしまいました」
明らかにわけのわからないことをいっている添乗員に対して、
ツアーのお客さんははじめは理解できない表情と困惑の色を向ける。
「席がない」なんて大変なことなのである。
ネガティブに用意された頭には、
ネガティブな単語しか入らないようになってしまっているのだ。
「みなさんは航空会社に頼まれて(これは本当)、
ビジネスクラスに乗ることになりました!」
とネタバラシではないがストレートに説明すると、
戸惑いの笑顔で歓迎してくれる。
実際「ビジネスに変更」というのはありえない概念なので、理解しがたいのだ。
ハッピーなハプニングなので少しばかりの遊び心。
「添乗員さん、ひとが悪いなあ」なんておどけてくれる年配者も多かった。
こういうハプニングはツアーを大いに盛り上げてくれたっけ。
どうやらアシアナへの変更は『早く帰国できる』という一点だけで、
ビジネスに転ぶようなハプニングではないらしい。
アレコレ原因を尋ねると、
このフライトは成田を経由し、LAに向かう便で、
仁川〜成田ではなく、仁川〜LAを通しで利用する客が多いのだとか。
夏休みの前にあたるこの時期、成田〜LAで飛ぶ客は少ないので、
ソウルからスルーの客のシートを確保したかったようだ。
「ビジネスにならないんですか?」
「それはムリです」
引き下がって尋ねてみたが、残念な回答しか出てこなかった。
ラウンジで過ごすことができるので、
フライトを繰り上げてもらうメリットは少なかったが、
まあ、ダラダラと空港にいてもしかたがない。
それに春先からの繰り返しの訪韓で、
アシアナのフライトの快適さを知っていたので、
結局、この申し出は受けることにした。
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ユナイテッドのガサツでアバウトなアメリカナイズされたサービスと
ラップに包まれたサンドウィッチだけの機内食とも今朝はお別れ。
アシアナのアジアらしいホスピタリティとそこそこおいしい機内食が、
ほんのちょっとラッキーかな。
ユナイテッドのヘビーユーザーのクセになにいってんだか。
出国手続き後、ラウンジで朝食を胃袋に放り込むので、
機内食はどうでもよいのだけどね。
アテンダント・スタッフが心地よいのはうれしい処遇。
久々のソウル長逗留は駆け足で逃げ去るかのような結末だった。
毎月ソウル 2009年7月編
—完—
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