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2014年11月28日
カイ・バイ・ボと @Seoul
すっかり日は落ちきり、園内の人々も家路につきはじめた。
たいしたモノはないだろうね、なんて話しをしながら、
「南山韓屋村」に自分たちだったが、
気楽でのびのびした催しをたっぷり満喫していた。
「秋夕」の特別な催しだったことで、
特別な祝日の特別な雰囲気を楽しませてもらったに違いないのだが、
平日の「南山韓屋村」の姿を知らないため、
それがアタリなのかハズレなのかもわからない。
ただ「秋夕」が韓国の人たちにとって特別な日であり、
「特別な日」の過ごし方や家族を垣間見られたのはうれしかった。
「意外と楽しんじゃったね」
「おもしろかった〜」
「結局、韓国人のコイツが一番楽しんでなかったか?」
タイ人の彼が一番仲のいいコリアンをこづく。
「そう思う〜。一番盛り上がってた〜」
「韓国人にとっても、珍しいものが多かったの!
普段こういうのは見られないから〜!」
照れながら、彼が声を荒げる。
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「南山タワーがキレイにライトアップされてる。ここで写真撮りたい」
「みんな一緒の写真も撮ろうよ」
辺りは暗くなっているというのに、みんなまだまだ陽気だ。
「へいへい、ダンナサマ。
専門カメラマンが撮りますダヨ。
あとで一枚10,000wで販売しますダヨ」
「え〜、金取るの?!」
「たかい〜」
くだらない戯言をいいながら、写真を撮り、韓屋村の出口に向かう。
「特別な日」ともお別れだ。
出入口となっている門の外では、
明かりを灯した屋台が帰りの客を狙って、まだ営業を続けていた。
「腹減った〜、なんか食べたい〜」
「へった、ヘッタ」
「さっき、スンドゥブ食ったじゃん」
「あれじゃあ、腹の足しにならなーい」
モンドセレクション最高金賞受賞「リズムハーブS」
「帰って、晩飯食おうぜ」
「それまでもたなーい」
「のしイカが呼んでる〜」
「子供か?」
「OK! カイ・バイ・ボだ!」
有無をいわさず、屋台の前で、カイ! バイ! ボ! の声が響く。
こうなると食べることより、勝負が優先。
掛け声と同時に5人が競って、こぶしを突き出す。
ジャンケンポンとリズムが似ているので、日本人でも気後れしない。
しかも3度目の勝負、やり方は把握した。
「スミマセーン、またゴチソウになります〜」
「え〜、一回も負けてないじゃん、ズルイ〜」
アッサリと勝ちを握り、3連勝を飾る。
「『いいだしたヤツは負ける』って言葉が日本はあるんだ」
「正解だあ、その言葉」
負けたものが嘆きながら、財布を広げた。
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「ほら!」
3連勝勝ち逃げでは悪い気がしたので、
コンビニで買った缶コーヒーをみなに振舞う。
のしイカに缶コーヒーがあうかどうかはわからないが。
ところでみんな、実はジャンケンして遊びたいだけだろ?
スンドゥブと @Seoul
韓屋の中でもさまざまな催しでにぎわっていた。
広い中庭では餅つきや絵付け、旧式のブランコなど、
子供たちが夢中になるものが並んでいる。
ボランティアだろうか、ここではさすがに介添えのスタッフがついていたが、
なんとなく行列していて、なんとなく順番を変わっていて、
なんとなく自主的にみなで楽しんでいる。
軽いコスプレを体験できる民族衣装のコーナーは、
さすがにお金がかかるようだが、
その他の遊びはお金を払わなくても体験できるので、
子供たちも気兼ねなく並んで遊んでいる。
遊び方を間違えたり、並び順でもめたりしないよう、
周りの大人が声をかけたり、見守っているのが微笑ましい。
お金を取ったり、ルールで縛り付ける必要はないのですよね。
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今年、どこかで似たような感覚を覚えたな、と記憶を手繰る。
まったく違う風景だが、5月に訪れたロンドンのフェスが同じ空気感だった。
大勢の人が集まっても、なにかで括りつける必要はないのだ。
昔の韓屋を再現する建物の奥では、かまどに火をくべている。
機織りの音が連なる横で、焚き木の爆ぜる音がする。
日が傾きはじめたこの時間でもアジュマはせわしなく働いている。
「なにか作っているのかな?」
「ちょっと聞いてみますよ」
そういうと彼はかまどに木を放り込んでいるアジュマに話しかけた
この時間になるとかまどが焚き火のようで、恋しく暖かい。
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「スンドゥブ(豆腐)を即製で作るみたいですよ」
「へえ、このカマドで作るんだあ」
「豆をこしたものを茹でて、それでできるみたいです」
「それじゃあ、豆腐にならないよ。ニガリを入れると固まるんだよ」
「スンドゥブの作り方は知りませんでしたよ」
「さっきの餅もおいしそうだったなあ」
「待っていればもうすぐできるわよ」
「よおし、食べさせてもらおう」
「湯気が熱いから、鍋の周りは気をつけてね」
みなで好き勝手なことを語らい、ニギヤカに火を囲んでいると、
知らない間にアジュマも話しの輪に加わっていた。
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「日が落ちると少し冷えるね」
「もう10月だぜ」
「そうですね、中秋でした」
湯気が立つできたての豆腐は、手作りの味が暖かかった。