体調が安定せず, 細切れの時間を繋ぎ合わせて証明を考えていた問題である.
問題. $\mathscr{C}$ を任意の圏とする. このとき, $\mathscr{C}$ の射の全体 $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ にも圏の構造が入る. 圏としての $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ を $\mathscr{C}$ の射圏 (arrow category) と呼ぶ.
$\mathscr{C}$ の対象の全体 $\mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ も射圏 $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ の対象 (つまり $\mathscr{C}$ の射の全体) も, 圏において同型であることが同値関係となるので, その同値類を考えることができる.
$\mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ の対象の各同値類から代表となる 1 つの対象を選んでその集まりを $O$ とする. 同様に $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ の射の各同値類から代表となる 1 つの射を選んでその集まりを $A$ とする.
$A$ の各元に対して, そのソースとターゲットとなる $O$ の元, $O$ の各元に対して, その上の恒等射となる $A$ の元, および $A$ 上の部分 2 項演算 "$\circ$" を射の合成として適当に定めることにより, $O$ の元を対象, $A$ の元を射として新たな圏が構成されることを示せ.
このようにして構成された圏を, 圏 $\mathscr{C}$ の骨格 (skeleton) と呼び, $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ と表わす.
この問題は解けたと思っていた.
しかし, その証明が何だかぼんやりしてるなあと感じていて, どうにも気になるのであらためてその証明を見直した.
そうしたらやはり間違いがあった.
圏 $\mathscr{C}$ の骨格となる圏 $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ に入れる射の合成の定義が駄目だった.
今のやり方だと, 骨格の構成がうまくいかない圏の具体例が見つかったのである.
これでは駄目だ. 夜までかけて証明を書き直した. あと一歩のところで疲れて倒れたが.
脳の中の長く使っていなかった部位を本当に久々 (10 年振りくらい?) に動かした感覚があった.
大変だったが懐しいような新鮮なような感じもした.
数学では何かを定義する際に, それが全体の理論の枠組みの中で矛盾を起こさないようにすること (well-defined にすること) が大切で, だから証明もそういったことが起こらないように進めなければいけない.
鬱が悪くなって, こういう繊細な思考を張り巡らせることが非常に難しくなって, ぼんやりとした感じしか持てなくなっていた.
そのぼんやり感を打破できたかも知れない. デリケートな思考の感覚を取り戻せたかも知れない.
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