原油価格の減速および、インフレによる生活苦が要因らしい。
「アラブの春」再び? 中東で広がる抗議デモの嵐
2019年03月11日(月)19時00分 NEWS WEEKより
・アラブ諸国では生活苦を背景に、「独裁者」への抗議デモが広がっている。
・その構図は2011年の「アラブの春」を思い起こさせる。
・とりわけアルジェリアやスーダンなどでの政治変動は、「テロとの戦い」の文脈からも大きな意味をもつ。
アラブ諸国では政府への抗議デモが各地で発生しており、その背景には生活苦がある。2011年に発生した政治変動「アラブの春」はその後、シリア内戦や「イスラーム国」(IS)台頭を引き起こしたが、今回の各地での抗議デモも地域の不安定化材料になる危険性を抱えている。
国民の生活をないがしろにする支配層がいる国は、
民衆が黙っていないということでしょう。
取り分け、命の危険が迫れば、待ったなしの状況になる。
抗議デモのきっかけは、4月に行われる大統領選挙に、ブーテフリカ氏が出馬を表明したことだった。高齢であるうえ、 健康状態さえ疑わしいブーテフリカ大統領による長期政権 には、とりわけ若い世代からの批判が目立つ。
広がる批判に、ブーテフリカ氏は大統領選挙に立候補するとしながらも、「任期を全うするつもりはない」とも述べ、任期途中で降板することを示唆した。つまり、「すぐ辞めるから5期目の入り口だけは認めてくれ」ということだが、 任期途中で辞める前提で立候補するという支離滅裂 さは、それだけブーテフリカ政権への批判の高まりを象徴する。
言ってることが無茶苦茶ですなあ・・・。
既得権益が、やっぱり大事なんでしょうね。
抗議デモが広がるのはアルジェリアだけではない。
政府への抗議デモは、昨年末あたりから中東・北アフリカの各地で発生しているが、とりわけ 先月からはスーダン、ヨルダン、エジプト、モロッコ などで治安部隊との衝突も相次いでいる。
このうち、エジプトではフランスで発生した「 イエロー・ベスト」の波及を恐れ、昨年末に政府が黄色いベストの販売を禁止している。
やることが、「的外れ」なんだよね。
水漏れ治すのに、元を治さずに、バケツを用意するようなもんです。
アルジェリアの生活苦
こうした デモの広がりの背景には、生活苦がある 。単純化するため、アルジェリアに絞ってみていこう。
アルジェリアはアフリカ大陸有数の産油国 だが、そのGDP成長率は2010年代を通じて緩やかに減少し続け、2018年段階で2.5パーセントだった。この水準は、伸びしろの小さい先進国なら御の字だが、開発途上国としては決して高くない。
「アラブの春」前夜との類似性
こうして広がる抗議デモには、「アラブの春」との類似性が見て取れる。
2011年の「アラブの春」は、2010年末にチュニジアで抗議デモの拡大によってベン・アリ大統領(当時)が失脚したことに端を発し、同様に各国で「独裁者」を打ち倒すことを目指して拡大した。その背景には、アラブ諸国で民主化が遅れていたことなどの政治的要因もあったが、少なくともきっかけになったのは生活の困窮への不満だった。その引き金は、2008年のリーマンショックにあった。
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2014年に資源価格が急落して以来、資源頼みの経済に大きくブレーキがかかる現在の状況は、 「アラブの春」前夜と共通するところが目立つ。
4つのシナリオ
それでは、2010年前後を思い起こさせる国民の大規模な抗議は、中東・北アフリカに何をもたらすのだろうか。「アラブの春」の場合、大規模な抗議デモの行き着いた先は、大きく4つある。
・抗議デモの高まりで「独裁者」が失脚する(チュニジア、エジプト、リビア、イエメンなど)
・大きな政治変動は発生しないが、政府が政治改革を行うことで事態を収拾する(モロッコ、ヨルダンなど)
・政治改革はほぼゼロで、最低賃金の引き上げなどの「アメ」と鎮圧の「ムチ」でデモを抑え込む(アルジェリア、スーダン、サウジアラビアなど)
・「独裁者」が権力を維持したまま反体制派との間で内乱に陥る(シリア)
今回、抗議デモが発生している各国がこれらのどのパターンをたどるかは予断を許さないが、なかでも注目すべきはアルジェリアとスーダンの行方だ。
アルジェリアとスーダンでは「アラブの春」で抗議デモに見舞われた「独裁者」が、「アメとムチ」でこれを抑え込んだ。
その意味で、良くも悪くも政治的に安定してきたといえるが、その両国政府がこれまでになく抗議デモに追い詰められる様子は、 盤石にみえた「独裁者」の支配にほころびが入っていることを示唆 する。
テロとの戦いへの影響
それだけでなく、アルジェリアとスーダンにおける政治変動は、「テロとの戦い」のなかで、それぞれ大きな意味をもつ。
まず、 アルジェリアにはアフリカ屈指のテロ組織「イスラーム・マグレブのアルカイダ」の拠点 があり、ブーテフリカ大統領は国内のイスラーム勢力を「過激派」とみなして弾圧することで、西側先進国とも近い距離を保ってきた。
これが権力を維持したい「独裁者」の方便であることは疑いない。とはいえ、「独裁者」の支配のタガが緩んだことで、それまで抑え込まれていたイスラーム過激派の活動が活発化したリビアの事例をみれば、ブーテフリカ大統領の主張に一片の真実が含まれていることも確かだ。
一方、スーダンはアルジェリアとは対照的に、 アメリカ政府から「テロ支援国家」に指定 され、 バシール大統領は「人道に対する罪」などで国際刑事裁判所(ICC)から国際指名手配 されている。
その意味で、ブーテフリカ大統領と異なり、バシール大統領の失脚は欧米諸国にとって好ましいことだろうが、他方で 大きな混乱がイスラーム過激派の活動を容易にするという意味 では、スーダンとアルジェリアはほぼ共通する。
シリアの二の舞?
もはや多くの人は記憶していないが、 40万人以上の死者を出したシリア内戦は、もともと「アラブの春」のなかで広がった抗議デモをシリア政府が鎮圧するなかで発生した。その混乱は、イスラーム過激派「イスラーム国」(IS)の台頭を促し、560万人以上の難民を生んだ。
そのシリア内戦は、クルド人勢力によるバグズ陥落を目前に控え、終結を迎えつつあるが、そのなかでIS戦闘員の飛散は加速している。IS戦闘員の多くは母国への帰国を目指しているが、なかには新たな戦場を求めて移動する者もある。その一部はフィリピンなどにも流入しているが、 アルジェリアやスーダンでの混乱はIS戦闘員に「シリアの次」を提供しかねない。
「秩序」を強調して自らの支配を正当化する「独裁者」の論理と、その打倒を名目に過激派がテロを重ねる状況は、どちらも 人々の生活を脅かす点では同じ だ。シリア内戦が終結しても、中東・北アフリカの混迷の先はみえないのである。
どうなったにしても、割を食うのは「子供達」なのである。
大人の都合で翻弄される子供たちを、見捨てることは出来ない。
塗り替わる世界秩序 六辻彰二
筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売
BY いいとこどり
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