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2019年07月13日

日本の船は、誰が守るのが本筋だ?  〜当たり前の理由〜

ホルムズ海峡の日本船舶、守るのは有志連合ではない

森 永輔
日経ビジネス副編集長
2019年7月12日

米国のダンフォード統合参謀本部議長が7月9日、ホルムズ海峡の安全確保などを目的とする有志連合を結成すべく、関係国と調整していると明らかにした。日本政府も打診を受けたとされる。 日本はこれにどう対応すべきなのか。安倍晋三首相が取り組むイラン・米国の仲介に影響はないのか。 海上自衛隊で自衛艦隊司令官(海将)を務めた香田洋二氏に聞いた。

(聞き手 森 永輔)


イランとの緊張が高まる中、米国が関係国との連携に動き始めました。

香田:今回の件で、強調しておきたいことが2つあります。1つは、 ホルムズ海峡の周辺を航行する日本の民間船舶を守るのは誰なのか、をしっかり考える必要があること。 日本の船舶に従事する船員の命を誰が守るのか、石油をはじめとするエネルギーの安定供給に誰が責任を持つのか、ということです。これはダンフォード氏に言われて始めるようなことではありません。この点について政府が議論していないとしたら、無責任のそしりを免れ得ません。
2つ目は、今回、 米国が提唱する有志連合は、アフガニスタン戦争やイラク戦争の時に結成されたものとは全く異なる性格のものです。この2つの有志連合は、それぞれの国に攻め込むことを前提にしていました。しかし、今回の有志連合はホルムズ海峡周辺の安全確保と、航行秩序の維持が目的 。武力行使を意図とした有志連合ではありません。 集団的自衛権を持ち出すなど、両者を混同した議論が見受けられます。




軍事行動ではなく、あくまでも安全保障上の「警備行動」であり
集団的自衛権は、関係ないと言う。

軍事行動の可能性は低い

 そもそもの話として、私は、 米国もイランも軍事力に訴える可能性は低いと考えます。 まずイランの側に立って考えてみましょう。 イランにとって最悪なのは、国際社会の中で孤立することです。ホルムズ海峡で過激な行動を取れば、西側諸国などから経済支援を受けられなくなってしまいます。 軍事攻撃を目的とする新たな有志連合の結成に正当な理由を与えることにもなりかねません。イランはそんなことはしないでしょう。

6月13日に日本とノルウェーのタンカーが攻撃される事態がありました。イランが過激な行動を取ったとしても、あの程度がせいぜいでしょう。 私は、あの事件を起こしたのは革命防衛隊などの孫請け組織だと見ています 。場所は、イラン領海の外縁から2カイリほど。イランが厳しく管理をしている海域ですから、イラン関連の組織がやったのは間違いありません。ただし、そのやり方は素人然としたものでした。今のタンカーは二重船体になっています。日本のタンカーへの攻撃は内側のタンクに及ぶものでなく、 火災を発生させることもできなかった。

 さらに、日本のタンカーと意識することなく攻撃したものとみられます。その場にいた、やりやすそうな船を選んだ。安倍首相がイランを訪問していた時ですから、 イラン政府としては孫請け組織が「とんでもないことをしてくれた」と見ていたでしょう。


イランにとって、得することは何もなかったわけだ。

一方、 米国にとっても、今の段階で軍事行動を起こすのは時期尚早です。 イランが核合意を破り、低濃縮ウランの貯蔵量が2015年の核合意で規定した300kgを超えても、濃縮度を合意を上回る4〜5%に上げることがあっても、 核兵器の開発を始めるには、まだいくつものステップが残っています。軍事行動を要する事態には至っていません。

 また、 米国にとって現在の最大の脅威は中国です。 イランに対処するために、北東アジアに置くべき軍事アセットを中東に回すのは考えづらいことです。加えて、軍事行動は一度始めたら、どこまでエスカレートするか分かりません。中東にくぎ付けになる可能性があり、リスクが大きすぎます。


米国が有志連合の結成に向けて、動き始めたのはなぜでしょう。

香田: 米国は、中東地域の安定を国益と考えているからです。 冒頭でお話しした、考えておくべきことの2つ目と関連します。

 シェール革命が起きて、エネルギー供給における中東依存度は下がっています。このため、 米軍が中東に直接関与する必要性は小さくなっている。それでも、この地域の面としての安定を維持し、海上交通の秩序を維持することは依然として重要と見ているのです。 先ほど触れたタンカーへの攻撃のようなイランの冒険を抑止する意図もあるでしょう。

 ただし、そのための行動のすべてを米国が単独で賄うことはできません。なので、 自国の船を護衛する力のある国は自分でやってほしいということです。


あっちもこっちも、面倒を見る余裕は、今のアメリカにはないと言う事か?
だから、日韓の問題には、関係したくはない訳だ。
緊急性はないと読んでいる。

先ほど、イランに軍事行動を起こす気はないと説明していただきました。そうであれば、米国が中心となって有志連合を結成することが、かえってイランを刺激することになりませんか。

香田:確かに、イランが態度を硬化させる可能性はあるかもしれません。ただし「刺激」はすでにしています。その一方で、毅然とした態度を取ることで、イランを増長させない効果が期待できます。

「刺激」が元でイランが軍事行動を起こすことがあれば、イランにとって虎の子である核関連施設を攻撃される恐れが生じ自殺行為です。 そんなことはしないでしょう。また、刺激しようがしまいが、軍事行動を起こす時は起こすものです。


イランには、それくらいのことは計算する知恵がある。

ダンフォード氏は「 米国が警戒活動を指揮する」と発言しています。具体的には何をするのでしょう。

香田: 民間船舶の運航統制を考えているでしょう 。自国の船を護衛する力のない国の民間船舶が、武装することなくペルシャ湾周辺を航行するのは好ましいことではありません。日本やNATO(北大西洋条約機構)加盟国の民間船舶の間に、こうした国の船を割り当てて航行すれば、これらにも警戒の目を及ぼすことができます。


要は、力のある国で、分担して、安全を守りましょう。
そういうことなんだろうね。

日本は、日本の船を守るのか
日本は有志連合に加わるべきでしょうか。

香田:これは、考えておくべきことの1つ目と関連します。 日本の船を日本の政府や自衛隊が守るべきか否かを決心する必要がある。

 自衛隊を海外に出すことに依然として抵抗があるようです。しかし、 日本の船舶を守るのは日本しかありません。 もちろん、憲法の枠内で行動するのが前提です。

 政治的判断として「守らない」という選択もあり得ます。ただし、その時は船員の生命をどう考えるのか、という問題が生じます。エネルギーの安定供給も保証できません。

日本の船舶を日本政府が護衛するのに、集団的自衛権の議論は必要ありません。 日本政府も自衛隊もイランの現状において集団的自衛権を行使することは考えていないでしょう。やってはいけないことです。

日本の船は日本が守る、と決心した場合、どのような法的根拠で護衛艦を派遣することになるのでしょうか。

香田: まずは海上警備行動。この時、武器の使用については、警察官職務執行法第7条(正当防衛・緊急避難)にのっとることになります。

 場合によっては、特別措置法を制定することになるかもしれません。


「海上警備行動」の発令は、まぬがれない。
これに参加しなければ、日本は、自国の船を守らないと
世界は判断する。

そうなれば、余計、危険が増すことになる。

先ほど、第三国の船舶も護衛対象にする可能性をお話しいただきました。これは、海上警備行動で可能ですか。

自衛隊法 第82条
 防衛大臣は、海上における人命若(も)しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。

香田:無防備の第三国の船舶が、護衛艦の至近距離において武装勢力に襲われるケースですね。こうした事態への対処は事前に決めておく必要があります。憲法違反の疑義があるならば、「助けない」という選択になります。

 ただし、 遭難など、海の上で困っている人がいたらお互いに助け合うという不文律があります。 「海員の常務」と呼ばれるものです。これを適用することは可能です。自力で自国の船舶を守る力を持たない国と外交交渉をし、護衛対象にすることもあり得るでしょう。 人道支援と考えることもできます。


これらの話を聞くと、さすがに、現場を踏んでいる人の話は
説得力がありますね。

落としどころといえるのではないでしょうか?

トランプ氏の「日米安保は、不公平」という発言は、
「自分の国は、自分で守ってくれよ」
「もちろん、困ったら、助けるけど、アメリカだって、助けてくれよ」
という、実に真っ当な言い分でしかない。

だからと言って、日米安保をどうこうする気なんて、
毛頭ないのであろう。  同盟国なんだから。

基地や予算を提供しているから、アメリカを助けなくていい
そんな話は、通用しない。

目の前で困っている人がいれば、どこの国の人であっても
誠心誠意助けてきたのが、日本ではないか。

トルコ然り、ユダヤ然り、イランもまた同様であった。

それが日本の姿なのである。




     BY いいとこどり


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