マーケティングの基礎
【マーケティングとは】:売れる仕組みづくり:商品やサービスを作り出し、顧客に価値を届ける一連のプロセス
・ セリング : 商品があるのが前提 ⇔マーケティングとは違う
・コトラー提唱: 「価値の創造と交換」と「ニーズと欲求を満たすプロセス」
・AMAの定義では: 「マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。」
・ドラッカー: 「マーケティングの究極の目標は、セリングを不要にすることである」
・レビット: 「マーケティングとは、顧客の創造である」
【マーケティング・コンセプト】
● 生産志向:生産効率を向上:需要が供給を上回っている場合の考え
● 製品志向:より良い製品作り(顧客のニーズは考えず:マーケティング・マイオピア(近視眼)):供給が需要に追いついく
● 販売志向:効率的に販売、 セリングを重視 :大量生産、過剰在庫:押し売りの横行
● 顧客志向(マーケティング志向):顧客ニーズから入るマーケット・イン:供給が需要を上回る成熟市場
● 社会志向:企業の社会的責任(CSR):社会の一員として、企業の利益と、顧客満足、および社会の利益を調和させる
〈 ソーシャルマーケティング〉:2 種類の意味で使われることがある
・ 社会志向のマーケティングのこと
・ 非営利組織のマーケティング
〈 ソサイエタル・マーケティング〉
・ 長期的な価値 や顧客以外の人々、あるいは 環境への配慮も含めて社会全体の福祉を向上 させていくマーケティング
〈 コーズ・リレイテッド・マーケティング〉
・売上によって得た利益の一部を社会に貢献する事業を行っている組織などに寄付すること⇒企業イメージやステークホルダーの評価、売上の増加を目指す
〈 共通価値の創造(CSV)〉
・社会的価値と経済的価値の両立をうたうものであり、高い収益性の実現を重視するもの
【 マーケティングの階層】
● マーケティング機能要素別戦略: 4 つの機能から構成
・マーケティングの4P: 製品戦略(Product)、価格戦略(Price)、チャネル戦略(Place)、プロモーション戦略(Promotion)
● マーケティング・マネジメント戦略:マーケティングの4Pを統合する戦略⇒マーケティング・ミックス
● 戦略的マーケティング:一番上の階層:企業全体の方向性を決める企業戦略に近い戦略
【 マーケティングのプロセス】
● マーケティング環境の分析:SWOT 分析では、外部環境の機会と脅威、内部環境の強みと弱みについて分析:マーケティング・リサーチなどを行い、顧客ニーズや消費者行動などを分析
● マーケティング目標の設定:上高や利益額、利益率、シェアなどの数値で目標を設定:企業全体の目標から設定されることが一般的
● 標的市場の選定:環境分析の結果を元に、市場を細分化し、ターゲットとなる市場を選定。どのように差別化するかというポジショニングを決定
● マーケティングミックスの計画と実行:標的市場に対して、どのようにマーケティング・ミックスを組み合わせるかを検討。結果を評価して、計画にフィードバック
消費者行動
【 マーケティング・リサーチ】:マーケティングに必要な情報を収集するための方法
● マーケティング・リサーチのプロセス
?@ 調査の目的を決定:どんな課題や問題があるか⇒どのようなデータが必要なのか:費用と時間がかかる
?A データ収集方法などの計画を作成
・ 2 次データ:国が実施している各種統計やリサーチ会社、コンサルティング会社などが提供しているもの
・1 次データ:マーケティング・リサーチによって入手するデータ
?B 集計したデータから結論を導き出す
●データの収集方法:質問法、観察法、実験法
◎ 質問法 :用意した質問に対して、調査対象者に回答してもらう
・ 面接法:調査員が調査対象者に直接面接して質問
メリット:視覚ツールを活用したり、相手の反応に応じた質問ができる。質問の回答率が高くなる
デメリット:1 人ずつ面接するためコストがかかる。調査員による偏りが生じやすい
・ 集団面接法(グループ・インタビュー):複数の調査対象者を集めて面接を行う方法
メリット:個別の面接法に比べて、コストが安い。集団でお互いの発言によって発言が促される
デメリット:調査担当者の能力によって結果が大きく変わる
・ 電話法:電話で質問をする方法
メリット:短時間で調査できる。面接法に比べて低コスト
デメリット:調査員の顔が見えないため、調査対象者に不信感が生まれやすく、非協力的になりがち
・ 郵送法:調査票を調査対象者に送り、回答を記入してもらい返送してもらう方法
メリット:人件費のコストが安い
デメリット:回収率が低い。対象者の住所のリストを入手することが難しい
・ 留置法:事前に質問票を調査対象者に配布し、記入を依頼しておき、後日調査員が訪問して回収する方法(日本の国勢調査などはこの方法)
メリット:郵送法と比べて回収率が高く、回収時に調査員が記入漏れなどをチェックできる。記入に時間がかかる調査に向いている
デメリット:調査対象者の家族などの意見が影響する可能性や、調査対象者以外の者が回答する可能性がある
・ その他の調査方法:ファックス調査やインターネット
メリット:低コストで実施
デメリット:ファックスを持っている人や、インターネットの利用者に限定される。目的によっては向かない
◎ 観察法 :調査対象者の行動や反応を、調査員が観察
◎ 実験法 :マーケティングに関するある要因を変化させることで、どのような影響があるかを調査する方法
〈 モチベーションリサーチ〉:消費者の購買行動の深層心理にある動機を探るための調査手法
メリット:定量的な調査方法では得られにくい、人間の深層心理を探れる
デメリット:調査結果の解釈が主観的になりやすく客観性に欠ける。調査に時間やコストがかかる。
● 深層面接法:できるだけ自由に回答してもらい、その際の反応を観察することで深層心理を探る
● 集団面接法(グループ面接法):グループでの会話の中から個人面接では得られない回答を得る。
● 投影法:間接的な質問などをすることで調査対象者の本心を探る方法。
・ 語句連想法:ある単語から連想される語句を答えてもらう
・ 文章完成法:あらかじめ一部が空欄になった文章に、穴埋めをしてもらう。
・ 第三者話法:自分ではなく、他人の例について質問の回答をしてもらう。
〈 マーケティングリサーチ〉
● エコノグラフィーによる調査:顧客の生活に入り込むなどして「観察」を行う調査法:顧客の地域性による文化や生活習慣、価値観による行動様式を理解することにより、企画立案や商品開発に活用しようというもの
●セントラル・ロケーション・テスト:通行人を調査対象として特設会場に誘導し、アンケート調査に協力してもらう手法:実際に商品や試作品を見たり、食べたりすることができ、テスト状況をコントロールできる
● ニューロ・マーケティングによる調査(神経マーケティング):脳科学の観点から消費者の脳の反応を計測することにより、消費者心理や行動の仕組みを解明し、マーケティングに応用しようとする調査
● フォーカス・グループ・インタビュー(集団面接法):座談会形式のインタビュー調査:想定されるターゲット層を集めて、これらの客層の意識や深層心理を把握しようとするもの
【消費者の購買行動】:コトラーは、消費者の購買行動のプロセスを、5 つの段階で考えました。
●購買意思決定プロセス
・ 問題認知:消費者が何かが必要だという問題を認識すること
・ 情報探索:ニーズを満たすものを得るために、様々な情報を得るという段階⇔日用品の様に毎回同じような商品を買う場合は情報収集を行わない。
・ 代替品評価:情報収集によって購入する商品の候補、代替品を評価する段階:比較の基準は人それぞれ異なります。
・ 購買決定:代替品のうち最も高い評価を得たものが、購入される
・ 購買後の行動:期待に合致すれば満足を得ます。期待に合致しなかった場合には不満足となります。こういった購買後の評価は、次の購買に影響。
〇 認知的不協和:購入した後に不満足感や買ってよかったのかという不安感を感じることが多い状態
● 購買決定行動のタイプ:日常的反応行動、限定的問題解決、拡大的問題解決の 3 つに分類
・ 日常的反応行動:製品についてよく知っており、ブランドについてはっきりした選択基準を持っている場合の購買行動:低価格で購買頻度が高い製品、つまり 最寄品 に多い購買行動
・ 限定的問題解決:製品については良く知っているものの、ブランドについてはあまり知らない場合の購買行動:いくつかの製品を比較した上で購入される製品、つまり 買回品 に多い購買行動
・ 拡大的問題解決:製品やブランドのことを良く知らない場合の購買行動:専門的で、価格が高く、購買頻度が低い商品、つまり 専門品 に多い購買行動
● 購買行動の規定要因:人によっても購買行動は異なります。これを表す考え方が、購買行動の規定要因
・ 文化的要因:消費者の属する文化や社会階層を表します。
・ 社会的要因:消費者の属する 準拠集団 や家族などを表します。(友人や職場の同僚など)
・ 個人的要因:消費者の年齢やライフスタイル、職業など個人的な要因
・ 心理的要因:消費者の購買動機や知覚、経験による行動の変化、信念など、消費者の心理的な内面から生まれる影響
〈 準拠集団〉:個人の価値観や態度、行動に対して影響を及ぼす集団:家族や友人、同僚など、その人が 将来属したい集団 であったり、 強く同一化する集団 が準拠集団になっているケースもある
● 組織による購買行動:組織による購買の特徴は、組織的に購買の意思決定が行われること、長期的な取引関係をベースに行われること、専門性が高いこと
・見積りを取ったり、購買業者と価格の交渉をし、社内での申請や承認を経た後で購買が決定される。
・消費者が購入する製品は消費財、企業が購入する製品は産業財
・産業財では、消費財に比べて 人的販売の比重が高い
【 消費者行動理論】:消費者はなぜ購買をするのか、何を購買するのか、どのように購買するのかと研究
◎ アサエルの購買行動類型:消費者の購買行動を4つのタイプに分類した: 関与水準(その製品にどれぐらいこだわっているの
と ブランド間の知覚差異(その製品のブランドによる違いを、どの程度理解できているのか) という2つの軸
● 情報処理型(関与水準-高、ブランド間の知覚差異-大):製品への関心が高く、各ブランドの差異も把握している場合:比較や検討などを適切に行う:パソコンなど
● バラエティ・シーキング型 (関与水準-低、ブランド間の知覚差異-大):関与水準が低い製品のうち、ブランド間の知覚差異が大きい場合:色々な製品を試すために、頻繁にブランド・スイッチングが行う。
● 不協和低減型(関与水準-高、ブランド間の知覚差異-小):製品への関与は強いが、それぞれのブランドの差異を理解しにくいケース:アフターサポートなどが重要になる:家具や白物家電など
●習慣型(関与水準-低、ブランド間の知覚差異-小):関与水準が低く、ブランド間の知覚差異も小さい商品に対して:いつも購入している製品を選んだり、低価格のものを選んだりする:トイレットペーパーなど
◎ 消費者行動と関与
・関与:ある商品に関して、個人が持つこだわりや関心の度合いを表す:高関与、低関与
● 認知的関与:商品の機能やコストを追求するといった功利的動機に基づく関与
・認知的関与が高い人は、商品に対して豊富な情報を持つ傾向にあり、さらに情報の収集や分析を楽しむ傾向がある
● 感情的関与:商品を使用することで感情的な充足を求めるなど感情的な動機に基づく関与
・感情的関与が高い人は、知識ではなく経験を楽しむ傾向
◎ AIDMA と AISAS
・ AIDMA(アイドマ) : Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動) :定番の消費者行動モデル
・ AISAS:(アイサス) :Attention(注意)、Interest(関心)、 Search(検索) 、Action(行動)、 Share(共有) :
Search(検索):インターネットによって商品を検索したり、商品に関する機能、評判、価格などを調べる。
◎ 精緻化見込みモデル:広告などへの反応についての社会心理学的なモデルが、精緻化見込みモデル
・ 中心ルート:広告の内容について理解し詳細に検討する対応
・ 周辺ルート:広告の詳細な内容より、広告に登場したタレントや音楽、あるいはパッケージの見た目などのイメージによって形成される対応
◎多属性態度理論・多属性意思決定
● 多属性態度理論:製品の価格、デザイン、性能といった複数の属性に対する主観的判断から、消費者の態度をとらえようとする理論
● 多属性意思決定:複数の属性を検討して意思決定する方法
(多属性意思決定種類)
・ 加算型:各製品の全ての属性を評価し、 総合的に評価が高い 製品を選択する方法
・ 連結型:各属性に求める 最低限の水準 を設定し、それらを充たす製品を選択する方法
・ 辞書編纂型:消費者が 一番重視している属性が最も優れている製品 を選択する方法
・ EBA(elimination-by-aspects)型:検討している属性のうち、 1つでも基準を満たさないものがある製品は選択しない 、という方法
・ 感情依拠型:過去の購買経験などの中から、好意的に感じているものを 習慣的に選ぶ 、という意思決定の方法
〈準拠集団〉
● ロジャースの普及理論
・新しい商品に対する購入の早い順: イノベーター(革新者)、アーリー・アダプター(初期採用者)、// アーリー・マジョリティ(前期追随者)、レイト・マジョリティ(後期追随者)、ラガード(遅滞者)
・ 普及率 16%の論理 :イノベーターとアーリー・アダプターの割合を合計した 16%のラインが商品普及のポイント
● ムーアのキャズム理論
・アーリー・アダプターとアーリー・マジョリティとの間には容易に超えられない大きな溝がある
・初期多数派への普及がいかに速やかに行われるかが製品普及の分かれ道である
● 他者や他者集団が消費者行動に与える影響:「準拠集団」以外にも、消費者行動に影響を与える他者や他者集団がある
・消費者間の弱いつながり:クチコミや SNS など、消費者間ネットワークが、消費者の行動に影響を与える重要なポイントが、消費者間の 弱いつながり です。
・ オピニオンリーダー:特定の集団の中で、他者に対して影響力を持つ人物のことです。
・ アーリー・アダプター(初期採用者) :新商品の購買に影響を発揮するオピニオンリーダー
〈 顧客ロイヤルティ〉
・ 真のロイヤルティ:ブランドや商品に対する好意的態度が高く、反復購買も高い顧客が該当:企業にとって理想的な状態
・ 潜在的ロイヤルティ:好意的態度は高いが、反復購買は低い顧客:買いたいと思っているものの、何らかの理由で購入には結びついていない状態(経済力が足りないなど)
・ 見せかけのロイヤルティ:好意的態度は低いが、反復購買が高い顧客が該当:ブランドや商品に興味はないけど、購入頻度や利用頻度が高い状態:(気に入っているわけでは無いが近いなど)
標的市場の選定
市場のターゲットを絞ってマーケティングを行う方法を、ターゲット・マーケティング:3 つのプロセスがあある
【 セグメンテーション 】:市場をある基準に基づいて、小さい集団に細分化すること
例)年齢層のセグメントには、異なるマーケティング・ミックスでアプローチする方が、単一のマーケティング・ミックスでアプローチするよりも効率的な事が多い
●細分化の基準:市場を細分化する基準
・ 地理的基準(ジオグラフィック):地域や気候、人口などの地理的な基準で細分化を行うもの:地域別の商品を企画したり、特定の国をターゲットとしたマーケティングを開発する場合に使われ
・ 人口統計的基準(デモグラフィック):年齢や性別、家族構成、職業、所得などの人口統計的な基準で細分化を行うもの:消費財のマーケティングで重視されてきた基準
・ 心理的基準(サイコグラフィック):消費者の価値観や ライフスタイルなど、心理的な基準で細分化を行う:ライフススタイルを訴求したプロモーション
・ 行動変数基準:消費者の製品に対する知識や態度、反応などで細分化を行うもの:購買状況や、使用頻度、購買パターン、求めるベネフィットなど: 購買行動の特徴 を捉えてセグメンテーションを行う
●細分化の要件:通常は幾つかの基準を組み合わせて、試行錯誤をしながら意味のある細分化の基準を見つける
・コトラーは、細分化したセグメントが役に立つためには、次の 4 つの要件を満たしている必要があると指摘
・ 測定可能性:細分化したセグメントの規模や購買力が測定できる
・ 到達可能性:細分化したセグメントに、チャネルなどを通じて アプローチ ができる
・ 維持可能性:細分化したセグメントが 十分な利益を上げるぐらい大きい
・ 実行可能性:効果的なマーケティング・プログラムを実行可能
【 ターゲティング 】:標的市場の選定:セグメントを選択するには 3 つのアプローチ
● 無差別型マーケティング:マス・マーケティング:細分化したセグメントを考慮せず、 単一のマーケティング・ミックス を市場全体に投入する方法
・メリット:マーケティング・コストを抑える
・デメリット:様々な消費者ニーズに対応するのが難しい
● 差別型マーケティング:細分化したそれぞれのセグメントに対し、別々のマーケティング・ミックスを投入する方法: フルライン戦略
・メリット:全てのセグメントのニーズに対応するため、売上が最大化される
・デメリット:コストがかかる
● 集中型マーケティング:特定のセグメントにターゲットを絞り込み、そこに全ての経営資源による単一のマーケティング・ミックスを投入する方法
・メリット:限られた経営資源を有効に活用できる
・デメリット:全ての経営資源を 1 つのセグメントに集中するため、リスクが分散できない
【 ポジショニング 】:選択したセグメントで競合他社よりも優位性を築く方法:消費者にその製品の総合的な価値(製品、サービス)が最も高いと判断してもらう必要があ
● ポジショニングマップ(知覚マップ):ポジショニング次第では、同じセグメントでも別のマーケティング・ミックスとなる:有効な差別化をするための軸を見つけること
● 自社内のポジショニング:自社内の製品の位置付けを整理することも重要⇒ カニバリゼーション が発生
〈 PEST 分析〉:経営戦略やマーケティング戦略を策定する際に使われる、外部環境の分析手法
・ 「 政 治 (Politics) 」「 経 済 (Economy) 」「 社 会 (Society) 」「 技 術(Technology)」 の4つの観点から分析
タグ: 企業経営理論
【このカテゴリーの最新記事】
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image