2012年09月02日
地震学の敗北?
地震学の敗北?
昨日(9月1日)は「防災の日」
昨日・今日と防災をテーマにした番組が多く、興味有る私はテレビに釘付けになってしまいました。
その番組の中で「地震学の敗北」って言葉に引っかかってしまいました。
私は研究所勤務時代に『地震・津波に依る被害軽減』の研究に長期間従事していたからです。
専門は無線工学の「電波伝搬」・・・「波の伝わり方が専門だったら地震波や津波の伝わり方も判るだろう?」と、研究所の中では専門が一番近い(私は全然違うと思いますが)と、『地震・津波に依る被害軽減』をテーマにした研究の拝命を受けたのでした。
研究所では工学分野の「信頼性工学」を中心とした研究だったので、直接地震を研究する地震学ではなくて、信頼性工学分野でプラントなどの大規模な施設を如何に津波などから守るかがその研究テーマになります。
そのためになる基礎データとして国の研究機関などからデータの提供を受けて、自分で解析することから始めました。
東海・東南海・南海地震が発生した時、研究対象地域には最大3mの津波が来襲する事が判りました。
先ず考えたのが、防波堤の嵩上げ、各施設を取り囲むように建設する防潮堤・・・。
平均海水面より3m高い地盤なので、本来は必要が無いと判断されますが、台風などの高潮時に津波が来たら安全を保証出来ません。
そこで実施されるかどうかは現場の判断に任せるとして、防波堤の嵩上げと新たな防潮堤を各施設の周りに建設する事を報告書に書き込みました。
しかし、国が新しく発表したデータでは、この地点の想定津波の高さは12m・・・。
仮にこの新しいデータの地震が発生したなら、私の研究成果では歯が立たないのが事実です。
そこで施設全体を制御している脳であり神経や目、耳などに相当する計装機器やセンサー、計器類の保全に関する研究を平行して行なっていました。
仮に前出の防波堤や防潮堤が決壊した時に、これらの計装機器がダウンしたら設備機器の制御が出来なくなります。
つまり制御できない施設はどのような二次災害(事故)を起こすか判りません。
その対応策として、重要な計装機器のボックスを想定津波高さより遙かに高い位置で、建家内の強度的に頑丈な箇所に移動します。
そうする事に依り計装機器の保護が可能になります。
これは新しいデータでも被害を受ける事が無いと信じています。
次に平行して研究していたのが、水没する可能性が高い野外の計装機器ボックスです。
この対策として詳しくは書けませんが、水深下10mの水圧にも耐えられる様に「計装機器ボックス」を簡単な方法で改造する事を考え付きました。
本来は加圧水実験装置で実際に計装機器ボックスに水圧を加えてその変形度合いを計測しなければなりません。
そうすると水圧加圧実験では精密な計測は不可能ですし、変形経過を細かく観察するためには私自身がその加圧装置の中に入り測定する必要も・・。
そこでクレーンで計装機器ボックスを吊るし、そのまま海中10mまで沈めて経過を観察・・・。
やはり、この方法でも私自身が海に潜らないと・・・。
実験の為に研究するのが嫌になりかけた時、私はある方法に気が付きました。
10mの水圧は地上の大気圧にプラス1気圧だと・・・。
ここまで書けば、研究者の皆様は「そうか!」と気が付かれたと思います。
要は計装機器ボックスの外板を水圧で外から押すか、それとも大気圧で押すかの違いです。
計装機器ボックス内を真空にすれば、必然的に内部は真空なのでマイナス1気圧・・・。
外部からは1気圧の大気が常にかかっていますので、内部を真空にすると外部から10mの海中に沈めたのと同じ圧力が計装機器ボックスの外板に加わるのです。
こうすることに依って、私は普通の大気圧が1気圧の環境で計装機器ボックスの変形を精密に観測する事が出来ました。
上記の実験は計装機器ボックスの破壊実験です。
つまり、これはなにも津波対策をしていないと想定した時に計装機器ボックスが水圧でどのように破壊されるかを観察する実験です。
津波で破壊されるような計装機器ボックスは、実際の現場では無用の長物ですね?
私は水圧で計装機器ボックスが破壊されない方法も研究していました。
外部から加わる水圧=内部の気圧・・・それが可能になる機器を計装機器ボックスに付加すれば、水圧に依る破壊から免れます。
これ以上詳しく書くと、学会で私が必要以上の事を口走って他の研究者にヒントを提供する事と同じ事になります。
と云うか、既に重大なヒントを羅列していますが・・・。
津波の海水で浸水した設備の早期復旧や被害の程度に関する研究もしていました。
実際にモーターやケーブルを海水に浸して、どのような塩害や錆が発生するか・・・。
また、そうなった時に早急にそれらの不具合から早期に機器を回復させるかも研究をしていました。
ここまで書いて自分でも無力感を感じています。
それは東京電力の研究者も東日本大震災の数年前に、私と同じように地震・津波対策の研究を進め、その対策を考案していたのに・・・。
結局、東京電力の上層部に地震・津波対策には膨大な費用も必要だし、だいいちいつ来るか判らない災害にそんな経費は出せないと・・・。
この記事の当初に「地震学の敗北」と書きましたが、これは地震学会だけの問題ではなく、東京電力福島原子力発電所の事故は「信頼性工学会」の「敗北」と言っても良いと思います。
こんな事を書くと学会の教授の方々からお叱りを受けると思っています。
昨日(9月1日)は「防災の日」
昨日・今日と防災をテーマにした番組が多く、興味有る私はテレビに釘付けになってしまいました。
その番組の中で「地震学の敗北」って言葉に引っかかってしまいました。
私は研究所勤務時代に『地震・津波に依る被害軽減』の研究に長期間従事していたからです。
専門は無線工学の「電波伝搬」・・・「波の伝わり方が専門だったら地震波や津波の伝わり方も判るだろう?」と、研究所の中では専門が一番近い(私は全然違うと思いますが)と、『地震・津波に依る被害軽減』をテーマにした研究の拝命を受けたのでした。
研究所では工学分野の「信頼性工学」を中心とした研究だったので、直接地震を研究する地震学ではなくて、信頼性工学分野でプラントなどの大規模な施設を如何に津波などから守るかがその研究テーマになります。
そのためになる基礎データとして国の研究機関などからデータの提供を受けて、自分で解析することから始めました。
東海・東南海・南海地震が発生した時、研究対象地域には最大3mの津波が来襲する事が判りました。
先ず考えたのが、防波堤の嵩上げ、各施設を取り囲むように建設する防潮堤・・・。
平均海水面より3m高い地盤なので、本来は必要が無いと判断されますが、台風などの高潮時に津波が来たら安全を保証出来ません。
そこで実施されるかどうかは現場の判断に任せるとして、防波堤の嵩上げと新たな防潮堤を各施設の周りに建設する事を報告書に書き込みました。
しかし、国が新しく発表したデータでは、この地点の想定津波の高さは12m・・・。
仮にこの新しいデータの地震が発生したなら、私の研究成果では歯が立たないのが事実です。
そこで施設全体を制御している脳であり神経や目、耳などに相当する計装機器やセンサー、計器類の保全に関する研究を平行して行なっていました。
仮に前出の防波堤や防潮堤が決壊した時に、これらの計装機器がダウンしたら設備機器の制御が出来なくなります。
つまり制御できない施設はどのような二次災害(事故)を起こすか判りません。
その対応策として、重要な計装機器のボックスを想定津波高さより遙かに高い位置で、建家内の強度的に頑丈な箇所に移動します。
そうする事に依り計装機器の保護が可能になります。
これは新しいデータでも被害を受ける事が無いと信じています。
次に平行して研究していたのが、水没する可能性が高い野外の計装機器ボックスです。
この対策として詳しくは書けませんが、水深下10mの水圧にも耐えられる様に「計装機器ボックス」を簡単な方法で改造する事を考え付きました。
本来は加圧水実験装置で実際に計装機器ボックスに水圧を加えてその変形度合いを計測しなければなりません。
そうすると水圧加圧実験では精密な計測は不可能ですし、変形経過を細かく観察するためには私自身がその加圧装置の中に入り測定する必要も・・。
そこでクレーンで計装機器ボックスを吊るし、そのまま海中10mまで沈めて経過を観察・・・。
やはり、この方法でも私自身が海に潜らないと・・・。
実験の為に研究するのが嫌になりかけた時、私はある方法に気が付きました。
10mの水圧は地上の大気圧にプラス1気圧だと・・・。
ここまで書けば、研究者の皆様は「そうか!」と気が付かれたと思います。
要は計装機器ボックスの外板を水圧で外から押すか、それとも大気圧で押すかの違いです。
計装機器ボックス内を真空にすれば、必然的に内部は真空なのでマイナス1気圧・・・。
外部からは1気圧の大気が常にかかっていますので、内部を真空にすると外部から10mの海中に沈めたのと同じ圧力が計装機器ボックスの外板に加わるのです。
こうすることに依って、私は普通の大気圧が1気圧の環境で計装機器ボックスの変形を精密に観測する事が出来ました。
上記の実験は計装機器ボックスの破壊実験です。
つまり、これはなにも津波対策をしていないと想定した時に計装機器ボックスが水圧でどのように破壊されるかを観察する実験です。
津波で破壊されるような計装機器ボックスは、実際の現場では無用の長物ですね?
私は水圧で計装機器ボックスが破壊されない方法も研究していました。
外部から加わる水圧=内部の気圧・・・それが可能になる機器を計装機器ボックスに付加すれば、水圧に依る破壊から免れます。
これ以上詳しく書くと、学会で私が必要以上の事を口走って他の研究者にヒントを提供する事と同じ事になります。
と云うか、既に重大なヒントを羅列していますが・・・。
津波の海水で浸水した設備の早期復旧や被害の程度に関する研究もしていました。
実際にモーターやケーブルを海水に浸して、どのような塩害や錆が発生するか・・・。
また、そうなった時に早急にそれらの不具合から早期に機器を回復させるかも研究をしていました。
ここまで書いて自分でも無力感を感じています。
それは東京電力の研究者も東日本大震災の数年前に、私と同じように地震・津波対策の研究を進め、その対策を考案していたのに・・・。
結局、東京電力の上層部に地震・津波対策には膨大な費用も必要だし、だいいちいつ来るか判らない災害にそんな経費は出せないと・・・。
この記事の当初に「地震学の敗北」と書きましたが、これは地震学会だけの問題ではなく、東京電力福島原子力発電所の事故は「信頼性工学会」の「敗北」と言っても良いと思います。
こんな事を書くと学会の教授の方々からお叱りを受けると思っています。
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