■仔細に見てみると、従来のSAMに無かった機能が確認できる
■本邦のミサイル開発は変わりつつある
画像引用元: 防衛装備庁 - https://www.mod.go.jp/atla/soubi_system.html, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=113530740 による
夏枯れでネタが無いので、毎度おなじみ 大火力先生(@Military_Hobbys)のところ から最近アップされた仕様書を見させて頂くことにしました。ということで、今回は「03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上」を取り上げることにします。
防衛装備庁試作仕様書 03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上
https://drive.google.com/file/d/1KJMML6cp7JcyrCvxdm9304MhurS8yD91/view?usp=sharing
03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上はwikipediaによると令和5年(2023年)度から令和10年(2028年)度にかけて、新型の短距離弾道ミサイル (SRBM) と極超音速滑空体 (HGV) への対処能力を高めた中SAM改のさらなる改善型を開発する事業だそうです。
契約内容は以下の通りです。
品目 03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上
契約日 2023/04/07
契約相手方 三菱電機
契約額 59,790,390,000 円
中SAM(改)の能力向上の開発で期間は2023年度から2028年度まで。
しかし、仕様書は全体で200頁以上あります。管理人も仕様書のゴーストライターやったことありますが、さすがにこんなには書けないですね(w
開発は既存の改善弾に適用出来るBlock1と、より性能を向上させたBlock2の2つに分かれています。Block1はASM-2B改善弾のように既存品に対して主にソフトウェア改修や付属品の更新による改善弾みたいなものでしょう。
管理人の仕様書を一読しての面白いなと感じたのは以下です。
?@UTDC(Up To Date Command)に拠る近接信管の動作停止機能
?A電子戦対処機能を有すること
?@についてミサイル側が射撃統制装置から、発射後においてもかなり統制されることです。指令自爆機能を持つのは勿論ですが、目新しいのは以下の機能です。
附属書4 誘導弾(B 1 o c k 1)
2 .6 機能 ・性能
2. 6. 1 機 能
b) 誘導制御部
ア.、、、なお、ホーミングヘッドは、 射撃統制装置から発射装置を経由して受信する目標の類別結果に基づいて、近接センサに対して弾頭 の起爆を制御する信号を出力できるものとする。
エ .、、、なお、 近接センサは、ホーミングへツドからの指示に基づき、弾頭を起爆させるための信号を出力しない機能も有すること。
引用元: 4−05−2004−582A−AD−0003
防衛装備庁試作仕様書
03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上
つまり、発射後にUTDCの指令によって近接信管の機能を殺す(=直撃)モードにすることが出来ることになります。これにより、航空機や巡航ミサイルのような目標には近接信管による起爆で弾片をばらまくことでPK率の向上を諮り、弾道弾のような目標には直撃の運動エネルギーをもって目標を確実に破壊するという2つの方式を選択できるようになります。
イスラエル ラファエル社製Iron Domeの発射シーン
Iron Domeは重要目標へ飛来する目標にはSTS(Shoot To Shoot)射撃で連射を行い、そうでないものは単発で対応するそうです。映像をよく見るとSTSで発射した場合、最初の1発目で目標を破壊した際は既に発射された2発目は指令自爆させているように見えます。
この仕様書の中に従来のミサイルの仕様書で余り見かけない文言が出てきます。
附属書6 対空戦闘指揮装置(Blockl) 用 ソフトウェア
2.4 機能・性能
2. 4. 1 機能
イ. 目標変換等幾能
(ア )射撃の禁止機能
発射指令を禁 止し て、目標指定を解除できるこ と。
(イ )射撃の控置機能
発射指令を禁止 して、新たな射撃を行わないよう指令できること。
(ウ) 目標変換機能
交戦を打切り、新たな目標へ交戦の指示ができるこ と。
これはSTS射撃の際に、次弾として待機しているミサイルを一旦発射禁止にして、目標指定を解除し新たな目標へ指向させるということでしょう。STS射撃は確実性が高い反面、無駄弾が出る可能性も高いですから、タマの消費を抑えるという意味で有効だと思われます。
?Aについては以下の文言が出てきます。
附属書7 射撃統制装置(Blockl) 用ソフトウェア
2,4 機能・性 能
2. 4. 1 機能
f)情報収集機能
オ 電子戦対処能
(ア) ES情報及び電子妨害機情報を収集できるこ と。
用語及び定義
32 ES Electronic Supportの略
敵の電子的情報(電波)を分析し、電波諸元等を分析することにより、敵に対する妨害(ECM :Electronic Counter Measure) 又は対妨害(EP)の手段選択の支援のための機能
つまり、相手のレーダーや電子妨害波などの電子戦情報を収集して持ち帰れるようにするということです。戦闘機などに搭載されているRWR(radar Warning Receiver)、例えばF-15Jに搭載されているAPR-4はRECモードがあり、パイロットの操作により受信情報をデータとして持ち帰れるようになっています。F-2はRWRと言わず、わざわざESM(electric Support Measure)と呼んでいることから、もっと広範囲な情報を収集できると思われます。意外なのはC-2輸送機で、海外任務に従事する関係上、RWRを装備してそれなりの電子情報収集機能を持っているそうです。
特に地対空ミサイルシステムの場合は、レーダーを備えている訳ですから、レーダー情報と受信した電波情報の双方を持ち帰ることが出来ることから、より精度が高い情報を持ち帰れることになります。
令和6年度調達予定品目(中央調達分) で艦船用としてSAAB社製電波探知装置CRS−NAVAL、電波探知装置SME−150の導入が伝えられましたが、陸海空の各プラットフォームの電波情報収集機能を強化する動きは注目に値するでしょう。
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