■Banseeは小型無人標的機の世界標準たる存在
■最低飛行高度5mで巡航ミサイルも模擬できるBanseeは訓練の高度化をもたらすだろう
先日、Xにて第101無人標的機隊 がBanseeの飛行訓練を実施していることが公開されました。
https://x.com/NA_1AAB_PR/status/1809040720403312693
写真を見ると、この機体はBanshee Jet 80又はその発展型であるJet80+のように見えます。後部から見るとジェットエンジンのノズルらしきものが2つ確認できるので、双発であるBanshee Jet 80シリーズなのは間違いないと思いますが、+か無印かどうかは外観では余り分かりませんでした。+の方は静止推力が無印の40kg x2から、45kg x2へパワーアップされていて速度や航続時間も向上しています。
Banshee Jet 80+(写真はBanshee Jet 80)
https://www.qinetiq.com/en/what-we-do/services-and-products/banshee-jet-80-plus
画像引用元: By MKFI - Own work, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=60041234
管理人のような古い人間はBanseeは各種えい航標的でおなじみのMeggitt社の製品だと思っていたのですが、Meggitt社は2016年に無人標的機部門( Meggitt Target Systems)を英国QinetiQ 社へ売却しており、現在は QinetiQ社の製品のようです。
浅学のため、QinetiQ社という会社は存じ上げなかったのですが、、英国ハンプシャー州ファーンバラに本社を置く多国籍防衛技術企業なんだそうです。まぁ、民間軍事会社みたいなものですかね。
QinetiQ社
https://www.qinetiq.com/en/
管理人はBansheeとは若干の係わりがあり、本邦へ導入されないものかなぁと常々思っておりました。何しろ、この機体はその優秀さから英国本国のみならず世界各国で採用されていますし、値段もCHUKARIII(BQM-74E)なんかと比べてもかなり安いんじゃないでしょうか。
そんな中、第101無人標的機隊がBansheeしかも最新型のBanshee Jet 80を導入したのを知って驚いたと共に、このBansheeはどういう位置づけ何だろうと考える訳です。というのは、第101無人標的機隊は短SAM等ミサイル射撃時用の高速標的機として既に2つの機種を運用しています。
一つはお馴染みの高速標的機 CHUKAR-?V
画像引用元: 第1高射特科団 https://www.mod.go.jp/gsdf/nae/katudou/1aab/butai_syoukai/equipment.html
もう一つは新高速標的機(FB型) 航空事業部のJ/AQM-2の陸上発射版です。
画像引用元: 第1高射特科団 https://www.mod.go.jp/gsdf/nae/katudou/1aab/butai_syoukai/equipment.html
つまり、既に高速標的機が2つも存在しているのに新たに高速標的機を導入しようというのです。
こちらの写真を見ると、翼端に赤外線バーナーのようなものが見えます。ということは、こちらの標的は主に短SAMやMANPADSの標的となるようです。
画像引用元: X 第1高射特科団【公式】@NA_1AAB_PR
さて、新たな高速標的機を導入する理由ですが、以下ではないかと考えています。
●米陸軍がJet 80+を MQM-185Bとして導入している
これが影響した可能性はあるでしょう。(訓練などで相互に融通できる)
QinetiQ to deliver unique Banshee Jet 80+ target system to US Army
https://www.qinetiq.com/en-gb/news/qinetiq-to-deliver-unique-banshee-jet-80
●巡航ミサイルを模擬できる
Banshee Jet 80+の最低飛行高度は5 metres (16ft) ASLであり、また統合GPS、自律航法ポイント・ナビゲーション、デジタル・テレメトリーシステムを搭載している。現状の本邦の無人標的機で巡航ミサイルを模擬できるのはASM-2から派生した巡航ミサイル模擬標的位じゃないでしょうか。
今後、本邦の高射特科には11式短SAMや現在開発中の新近SAMなど、見通し線外射撃能力を持つミサイルが主力となっていくので、超低空で飛行して巡航ミサイルを模擬できるBanshee Jet 80+のような無人標的機は重宝されるでしょう。
また、製品カタログでは以下のように謳われています。
Banshee have been used by customers to test the
effectiveness and operational readiness of weapon systems including:
-Air-to-Air Missiles: Meteor, AMRAAM, Aim-7 Sparrow, Aim-9 Sidewinder, IRIS-T, MICA, Aspide, and R550 Magic Missile
– Ground/MANPAD/Surface-to-Air Missiles: Stinger, AKASH, Sea Wolf, Mistral, Sadral, Rapier/Jernas, HVM,
Simbad, Crotale, Blowpipe, Javelin, Starburst, Starstreak, Sea Sparrow, ESSM, SPYDER, NASAMS, SM1, SM2 Hawk,and Patriot
– Guns/Cannon Systems: Phalanx, Sea Zenith, Seaguard, AHEAD, Goalkeeper, plus a range of large/medium cal naval guns and cannon systems (20mm-155mm)
引用元: Banshee Jet 80+ Product Sheet
陸海空の数多くのタマの訓練に対応できる多用途ぶりです。無人標的機の機種を統一して大量に調達すればコストも下がるでしょう。序に運用は民間へ委託しても良いかもしれません。
最後に気になったのは巨大なラウンチカタパルトです。
画像引用元: X 第1高射特科団【公式】@NA_1AAB_PR
こちらは Robonic Ltd Oy というフィンランドの会社の製品のようです。
ROBONIC KONTIO (MC2555LLR) PNEUMATIC UAV LAUNCHER
https://www.robonic.fi/wp-content/uploads/2012/10/MC2555LLR_RGB.pdf
ハセガワ 1/48 UF-104 スターファイター(J型) 航空自衛隊 硫黄島無人機運用隊 07527スタ-フアイタ-イオウジマムジンキ [07527スタ-フアイタ-イオウジマムジンキ]
価格: 3140円
(2024/7/6 18:13時点)
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コメントありがとうございます。
この無人標的機はKがMPMS用に自社開発した小型ジェットエンジンを何とか活用したいというところから始まっています。
構成的にもエンジンにポッド式を採用せず、内臓式にして、ジェット噴射を両サイドに分けて筐体尾部にルネベルグレンズを設置する辺りは何となくMPMSに類似しているように思われます。
こちらの技報を見ると、この機体はピトー管も電波高度計も装備してないようですから、超低高度を飛ばすのはやや難しそうな感じがします。
https://www.khi.co.jp/rd/magazine/pdf/179/n17905.pdf
価格的にはJ/AQM-1の1/3から1/4位みたいですから、曳航標的運用能力を失った航空事業部には十分にメリットはあったでしょう。陸さんも高価で維持に手が掛かるChukerよりも使い捨ての本機の方が良いかもしれません。
また現在、Sが艦載版を開発中ですが、目標単価である1,500万円には収まらないようです。
と思って調べてみたらJ/AQM-2族は低高度飛行が余り得意ではないみたいですね。
陸自としては高いシースキミング能力を持った標的が欲しかったということでしょうか。