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2023年09月29日

イスラエルは何故E-2Cに見切りをつけたのか?

■イスラエルはE-2Cを比較的短期間で運用を終了した

■攻勢を旨とするイスラエル軍はE-2Cの鈍足を許容できなかったのではないか

■我が航空事業部も高速なAEWを装備するかもしれない


以前、懇意にさせて頂いたマル防関係商社の社長さんからこんな話を聞いたことがあります。
知り合いのイスラエル人からこう言われたそうです。

第192飛行隊のE-2C ホークアイ
960px-Hatzerim_290110_Hawkeye.jpg
画像引用元; Oren Rozen - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11043572 による

「部品取り用にリタイヤさせるE-2Cを1機丸ごと買わないか。」

今となっては事の真偽は分かりませんが、中々豪気なお話ではあります。

さて、イスラエルは1978年にE-2Cを4機購入して1996年頃まで運用し、2008年から導入されたガルフストリーム G550 CAEWによって更新されています。4機の内の1機は 博物館 に展示され、2002年に残りの3機はアップデート後にメキシコへ売却されています。

シンガポール空軍のG550 CAEW
1084px-RSAF_Gulfstream_IAI_G550_CAEW_(Conformal_Airborne_Early_Warning).jpg
画像引用元: Owen65 - Flickr: RSAF Gulfstream/IAI G550 CAEW (Conformal Airborne Early Warning), CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=22771562 による

本邦にE-2Cが入ってきたのは1983年ですから、ほぼ同時期です。本邦がそれから40年に渡って運用し続けているのに対して、イスラエルでの運用は僅か十数年に留まっています。E-2Cは艦載機だけあって丈夫な機体で、機体のサービスライフは10,000飛行時間と聞いたことがあります。イスラエル空軍で年間どの位飛んでいたのか分かりませんが、後に他国へ売却されたことを考えると、サービスライフは充分に残っていたと思われます。

それでは何故イスラエルはE-2Cを早期に退役させたのでしょうか?

やはり、その理由は速度じゃないでしょうか。

イスラエル空軍は鈍足なE-2Cに満足できなかったと思います。

イスラエルの国土は狭くて縦深性が無いため、出来るだけ自国より遠いところで相手と戦わなければなりません。つまり防御より攻撃を優先するお国柄です。その場合、鈍足のE-2Cでは運用に非常に苦労することになります。何しろ戦闘機に随伴できないので、戦闘機よりもずっと前に離陸して目的地に展開しなくてはなりません。

元々、E-2CはF-14と組み合わせて米帝の空母機動部隊を旧ソ連の爆撃機や潜水艦から発射される対艦ミサイルから守るのが主な任務です。その場合、速度よりも滞空時間や艦載機としての能力が優先されます。本邦の航空事業部のような基本的に防空を主任務とする場合でも非常に適した機体と言えるでしょう。また、意外と知られていませんが、狭い本邦の航空基地では艦載機として翼が折りたためることによるフットプリントの小ささも重宝されています。E-2Cの導入時の経緯を知る方(空幕OB)に聞いたことがありますが、やはり格納庫などの施設面の要因が大きかったと仰っておりました。

E-2 Hawkeye in Formation with F-14 Tomcats
E-2 in Formation with F-14  Tomcats.jpg
画像引用元: National Naval Aviation Museum
https://www.history.navy.mil/content/history/museums/nnam/explore/collections/aircraft/e/e-2c-hawkeye0/e-2-hawkeye-in-formation-with-f-14-tomcats.html


また、E-2Cは巨大なロートドームを背負っておりますが、そのレーダーは航空機用としては異例とも言える非常に低い周波数帯(UHF(400 - 450 MHz))を使用しています。これは小さな目標探知やレイドアセスメント等では不利になりますが、各種クラッター排除や探知距離の延伸には有利であり、またステルス機に対しても一定の効果がある(ステルスが対応する周波数帯から外れているため)との話もあります。あと、細かいことは差し控えますが、鈍足であることはレーダーの信号処理において有利に働くことも申し添えておきます。

以上のように、E-2Cは拠点防空用としては非常に高い能力を発揮します。それ故に航空事業部もE-2Cを使い続け、且つE-2Dを新たに増勢しているのでしょう。

そんな中で、航空事業部はF-35の増勢と共に従来の防空軍から空軍になろうとしています。それは本邦の厳しい防衛環境を反映しているからでしょう。つまり専守防衛から攻勢的な軍事組織に変革しようとしている訳です。そうなると、近い将来には航空事業部もガルフストリーム G550 CAEWのような戦闘機に随伴できる足の速いAEWが装備されるかもしれません。

これをベースにするならせめてエンジンは替えてね(w
1080px-JMSDF_P-1_(4).jpg
画像引用元: 海上自衛隊, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=57291096 による

さて新たなAEWが装備された場合、航空事業部のE-2C/Dはどうなるのでしょう?

その答えは、、、、

空母用に海洋事業部へ管理替えするんですよ(w






posted by keenedge1999 at 17:53| Comment(0) | TrackBack(0) | E-2C

2023年09月15日

航空事業部は何故AAM-4を選んだのか

■各国が続々とAIM-120を採用する中、日本は独自開発したAAM-4の装備を選択した

■AAM-4の選択は航空事業部のアクティブホーミング誘導ミサイル化を10年遅らせたとの批判もある

■当時、巡航ミサイルの脅威に晒されていた航空事業部はAIM-120には満足できなかったのであろう




ネット上で文谷先生がAAM-4Bの調達について辛辣に批判しておりました。

防衛省の合理的な説明がつかない、「国産兵器」と「米国製」のダブル購入
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/329118

小松基地で展示されたAAM-4
重量や大きさは従来のAIM-7と同等(投下特性をAIM-7と合わせている)
AAM-4.jpg
画像引用元: 日本語版ウィキペディアのShiftさん - 原版の投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=107674464 による

AAM-4の開発時は、管理人は開発元(GM2室)に近いところにいた訳ですが、AAM-4導入にに当たって、航空事業部から「AAM-4買うんでAIM-120要りません。」と内局へ一筆入れています。つまり、完全に退路を断ってAAM-4導入を邁進した訳です(実際には後に飛行教導隊の運用研究で120発程度のAIM-120を購入している)。

F-16の翼端に搭載されるAIM-120
AAM-4に比べて小型で軽量(約2/3)なAIM-120は写真のようにSRMランチャに搭載可能で汎用性が高い。
900px-AIM-120_AMRAAM.jpg
画像引用元: Staff Sergeant Vince Parker (USAF) - http://www.defenselink.mil/photos/Dec1998/981228-F-6082P-996.jpg, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2130562 による

といことで、航空事業部の非常に強い意志が無ければAAM-4じゃなくてAIM-120装備化の芽もあったことになります。それ程までに航空事業部はAAM-4を推していました。

航空事業部がAAM-4推しだった理由は一体何だったのでしょうか。

参考までに当時(90年代中頃)、開発メーカーが配布していたXAAM-4のパンフレットにはXAAM-4の特徴として以下のように書かれています。

(1)長い射程---攻撃範囲を広げ、先制攻撃を可能とする。

(2)撃ち放し性---母機生存性を高める。

(3)長いスタンドオフレンジ---母機生存性を高める。

(4)多目標同時対処能力---保有航空機の効率的運用を可能とする。

(5)高いECCM性---強度の電子戦環境下でも対処する。

(6)高い被発見性---進行に対する防御が探知されなければより効率的な運用が可能となる。

(7)大きい撃破能力---航空機だけでなくASM等小型目標も撃破する。

(8)超低空目標対処能力---低高度目標についても対処可能である。


引用元:XAAM-4 新中距離空対空誘導弾 開発メーカー配布パンフレット


このパンフに依るとAAM-4は以下だと言ってるわけです。管理人が特に重要と考えるものを赤字にしています。

長射程
・撃ちっ放し性
・多目標同時攻撃
・ECCM能力
・LPI(Low Probability of Intercept、低傍受可能性)

・高い撃破能力(SSKP)
・超低空目標対処


以上の点を鑑みると、航空事業部がこのミサイルに何を期待しているか薄らと見えてくると思います。
そして管理人的に考えて、このミサイルが主に想定した目標は以下じゃないかと思います。

・超低高度を飛翔する低RCSの巡航ミサイル

・高高度を高速で飛翔するASM

・強力なジャマーを伴った敵攻撃機

どうでしょうか。AIM-120は非常に優れたミサイルですが以下の点についてAAM-4は優位性があると考えます。

・高い誘導精度と大きな弾頭重量(AIM-120のほぼ倍)による高い撃破率

・高度な被探知性(AIM-120では発射母機からの指令誘導波を捉えられて早めの回避行動を取られた)

・高いECCM性(AAM-4では特殊な送信方法を用いることにより効率的に妨害成分を排除)

以上から、AAM-4は航空事業部が求めていた能力を具現化したものだったと言えます。

F-35の導入により航空事業部の空軍化が推進され、空対空ミサイルに求められる能力も変わってくると思われます。その場合は各国が保有し、アップデートも早く、より汎用性が高いAIM-120の方が重視されてくるかもしれません。ただ、AAM-4は中SAM改や新艦対空誘導弾、次期中距離空対空誘導弾にしっかりと遺伝子は残しました。そこは強調しておきたいと思います。

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タグ: AIM-120 AAM-4

2023年09月06日

GCS-1の制御系

■令和6年度概算要求が発表された

■新地対艦・地対地精密誘導弾とはKの新SSMのことだった

■GCS-1は投下前から制御翼が制御開始しているという話


令和6年度概算要求が発表されましたね。中々のボリュームで読むのに苦労しました(w

防衛力抜本的強化の進捗と予算
https://www.mod.go.jp/j/budget/yosan_gaiyo/2024/yosan_20230831.pdf

一時期、すわXGCS-2復活かと世間を騒がせた新地対艦・地対地精密誘導弾も実はKの新SSMだっというオチもついておりました(w

勝手に姉妹サイト ペンギン先生のサイト
精密誘導弾ってなんやろなあ?【防衛省】』

新型普通爆弾ことXGCS-2
GCS-1のように後付けの爆弾用誘導キットではなく、弾体や信管も新規開発の意欲作で、電動で展開する大きな翼が特徴。だが研究のみで終了し、開発へと移行しなかった。開発へ移行しなかったのは予算の問題、また技術的な課題もあったとの話がある。
E59BB3EFBC92E38080XGCS-2-b5e71.png

画像引用元: https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11339364/www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/16/jigo/sankou/11.pdf

XGCS-2の話が盛り上がってくると、前作であるGCS-1(91式爆弾用誘導装置)の話題もちらほらと出てました。GCS-1は管理人にとっても大変思い出深い装備で、色々と勉強させて頂きました。ただ、GCS-1の技術試験・実用試験は昭和62年〜昭和63年に実施されており、古の昭和の装備なんですね(ああ歳がばれる)。

gcs-1 - コピー.jpg
管理人撮影

先日、とあるサイトを見ていたら気になる記述がありました。

操舵翼と揚力翼と太い弾体があいまって、きれいに母機から分離させることが大仕事。弾が後を向いたり、主翼と尾翼の間を跳び抜けていくこともありましたが、分離前に操舵翼を制御開始させることで対応できました。

引用元: 爆弾用誘導装置XGCS-1の技術試験・実用試験
http://ryusunryusun.seesaa.net/article/a53171945.html


何故、この表現が目を引いたかというと、制式要綱の内容とは明らかに異なるためです。

3.主要機能

3.1 誘導装置 誘導装置の主要機能は,次のとおりである。

(1) 投  弾  誘導爆弾は,搭載母機から投弾される。

(2) 初  期  誘導爆弾は,投弾後に安定翼が展開し,操だ翼のロックが解除され,ウィンドベーン状態になり,非制御状態で落下する。

(3) 中  期  誘導爆弾は,姿勢安定後に制御を開始し,ピッチ系及びヨー系は0G指令の加速度制御を,ロール系は一定レートのロール制御を行い,目標に接近する。この間に,誘導部は目標の捜索を行う。

(4) 終末期   誘導爆弾は,目標から放射される赤外線を誘導部の視野内に捕らえると,ホーミング誘導を開始し,目標へ誘導される。

引用元: 制式要綱 91式爆弾用誘導装置 P5001


制式要綱上ではタマの制御は投弾後の飛翔中期となっています。これは当然の話で、投弾前に操舵翼を制御するとすれば、タマが活性化されてなければなりません。これはどういうことかというと、投弾前に電源と操舵翼の制御用のガスサーボ装置が起動しなくてはなりません。

ということは、機体とタマはアンビリカルケーブル等で接続されており、

?@機体からタマに対して今から投弾するから起動せよという指令が伝わる
?A電源(熱電池?)が活性化され、又はMIL-STD-1760のように機体から誘導制御部内に必要な電力を供給される。
?Bガスサーボ装置が活性化され内蔵のガス発生器からのホットガスを発生して操舵翼を制御する。

ことになります。

上記はちょっと考え難く(特にbomb rackを噛ました場合)、どういうことかと考えていたのですが、このブログ上で仰られているタマはJM117(340kg爆弾)ベースの91式爆弾用誘導装置?U型のことじゃないかと思います。

?U型の場合はパイロン直付けになる訳ですから、機体とのインターフェイスも容易で且つ投下特性もシビアであり、タマ側で何とかしなくてはならないのも分かる気がします。

次回も誘導爆弾の話をしたいと思います。




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