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2023年10月28日

マル防は儲からない

■本邦ではマル防からの撤退が相次いでいる

■米国においても2010年から10年間でマル防に従事する中小企業の40%が撤退している

■マル防を維持するためには国有化が必要



以前、ドイツ研究の大家であった篠田 雄次郎先生がご著書で以下のような話をされていました。

ユダヤ人は工作機械をやりたがらないと聞く。何故なら手間暇掛かる割に大当たりが少ないからだ。これは逆に言うと、手間暇惜しまず大当たりを狙わなければ、食いっぱぐれがないということで、これこそドイツ人向けの商売である。

引用元: 日本人とドイツ人—猫背の文化と胸を張る文化 (カッパ・ブックス) 篠田 雄次郎





マル防もこれに似たものがあります。さらに付け加えるなら、

手間暇惜しまず大当たりを狙わず、官側の理不尽な要求を堪え、毎年受注が来るとは限らない

以上のことを受け入れられる度量が必要です。慈善事業じゃないんですから、こんな商売誰もやりたがらないでしょう。実際、本邦においてマル防から撤退する会社が相次いでいます。実は以前はそうでも無かったのです。管理人が禄を食ませて頂いた某マル防関連会社は利益率の高さで有名でした。それが変化したのは一連の過大請求事案以降でしょうか。

マル防撤退で一番著名なのは、装甲車両をやってたコマツさんでしょうが、これがプライムメーカーでなくサブコンやパーツサプライヤレベルになると枚挙にいとまがありません。

先日、えい航標的の記事をアップした際に、長年えい航標的を製造していた国内メーカーが事業撤退するらしいことが分かって驚きましたが、今後も同じような事業撤退は続くのでしょう。

このようなマル防からの事業撤退は本邦だけと思ってましたが、実は米帝でも同様なんだそうです。以下は Defence One 記事です。

As demand for arms booms, lack of modernization stymies weapons production

Some small firms at the heart of the defense industry see little benefit to automation and digitization.

https://www.defenseone.com/business/2023/10/demand-arms-booms-lack-modernization-stymies-weapons-production/391533/

こちらの記事を要約すると、

 ●兵器生産は多くの中小部品サプライヤーに依存している

 ●生産を拡大したいのであれば、これらの小規模工場も生産を拡大する必要がある。

 ●しかしながら近年、このような中小企業の数は減少している。

 ●国防総省の調査によると、2010年から2020年の間に防衛産業に従事する中小企業の数は40パーセント減少し、この傾向が続けば今後10年間で推定1万5000社が廃業するとみられる。

 ●これらの会社には生産増に対応する設備投資を実施する余力はない。また、資金があっても従業員の高齢化により投資意欲が沸かない。

まるで、何処かの某国のことみたいじゃないですか(w

記事では対応策として以下のことを提案しています。

 ●このような中小企業への依存を減らすために、AIを使って兵器を設計しより一般的で入手可能なコンポーネントを使用する。

 ●政府所有の製造業の余剰能力を利用して、政府が小規模の下層メーカーから購入するのと同じ種類の部品を製造する。

つまり、カスタム品ではなく出来るだけCOTS品を使い、代替えが効かないものは国有化しろと言っている訳です。まぁ、何処の国でも同じような結論に達するわけです。

本邦でも防衛産業支援法が成立し、企業の設備の国有化が可能になりました。恐らく、国有化した設備を別の事業者へ貸与して生産を続けることになるのでしょう。将来的には戦前の工廠の復活もあり得るかもしれません。

呉海軍工廠(1945年10月)
1280px-Kure_Naval_Arsenal_Panorama_in_Japan_October_1945.jpg

画像引用元: Asahi Shimbun - Asahi Shimbun - https://www.asahi.com/special/nuclear_peace/gallery/konosekai/019.html, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=138919170 による


2023年10月25日

AAM-5ベースのSAMは何故出てこないのか

■近年のミサイルはASM-1やAAM-4を始めとして、派生型が開発されファミリー化している

■AAM-5と同世代の赤外線誘導AAMは何れもSAMの派生型が開発されている

■AAM-5がSAM化されないのは何故か


以前、会社にいらっしゃった航空事業部のOBの方から以下のような相談を受けたことがあります。

「〇〇くん、AAM-5を拡販するとしたら何処が良い?」(OB氏)

「陸さんのOHやAH用に売り込んだら如何でしょう。いざとなれば陸上目標へも使えますよ」(オラ)

M41戦車へ発射されたAIM-9L
893px-AIM-9L_hits_tank_at_China_Lake_1971.jpg

画像引用元: By U.S. Navy - U.S. Navy National Museum of Naval Aviation photo No. 1996.488.022.024, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11855314

「おーいいね。」(OB氏)

「でも、AAM-5って1発6千万ですよね。陸さんから見たら1発で装甲車1両分飛んでいくことになりますよ。」(オラ)

「だよねー(笑)。」(OB氏)

その後、AAM-5は改良型であるAAM-5(B)が開発されますが(開発主任は良く存じ上げている方です)、SAMなどの派生型は開発されずに今日に至っています。

AAM-5の同世代の海外の赤外線誘導AAMは何れもSAMの派生型が開発されています。

一番有名なのは図らずもAAM-5のそっくりさん(笑)であるドイツのIRIS-Tでしょう。ウクライナにも供与されています。

IRIS-T SL(surface-launched)
1194px-Eldenhet_98_IRIS-T_SLS.png

画像引用元: Matti Blume - File:ILA_2018,_(1X7A6890).jpg, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=111003281 による

AIM-132(ASRAAM)はレーダーシーカーへ変更され、CAMM (Common Anti-Air Modular Missile) として艦載型や陸上型が開発されています。

A Sky Sabre air defence missile system of the Royal Artillery.
1008px-Royal_Artillery_Sky_Sabre_system.jpg

画像引用元: By Ministry of Defence - https://www.defenceimagery.mod.uk/, archived source, OGL v1.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=116190856

勿論、我らがAIM-9も様々な派生型が開発されています。一番有名なのはRIM-116 RAMでしょう。これはAIM-9の弾体とFIM-92のシーカー及びパッシブシーカーを組み合わせ、回転させることによりジャイロの省略し、二本の長さが違うロッドアンテナへコニキャルスキャンをさせるというアイデア一杯のシロモノでした。そのため、開発に手間取り何度も開発中止の危機に陥ったり、本邦のあぶくま型DE艦への装備化が見送られるなどの紆余曲折がありました。

USS Green Bay (LPD-20)から発射されるRAM
1087px-thumbnail.jpg

画像引用元: U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 1st Class Larry S. Carlson - この画像データはアメリカ合衆国海軍が ID 090929-N-2515C-482 で公開しているものです。パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8370861 による

少し世代が違いますが、おフランスのMICAもMICA VLSとして陸上発射型が開発されています。

Lanceur terrestre du missile "VL Mica" Exposition MBDA au salon du Bourget 2015
896px-MBDA_MICA_VL_Lanceur_terrestre_Paris_Air_Show_2015.jpg

画像引用元: Tiraden - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=41070763 による

そして最後はAAM-5のライバルであったイスラエルのPython(XAAM-5開発時に航空事業部へラファエル社から強力な売り込みがあった)です。

SPYDER air defense missile system
908px-SPYDER.jpg

画像引用元: By Ereshkigal1 - Own work, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4793482

以上のように、赤外線誘導AAMは例外無くSAMなどの派生型が開発されています。では、何故AAM-5はSAMなどの派生型が出てこないのでしょうか?

明確な答えは知る由もないのですが、恐らくは、、、、、

短SAMとバッティングするからではないでしょうか。

つまりは業界への仕事の割り振りの問題です。

11式短距離地対空誘導弾
1280px-Type_11_(SAM)_firing,_Japan_GSDF.jpg

画像引用元: 防衛省 - 出典:防衛省ホームページ https://www.flickr.com/photos/90465288@N07/39227773454/in/album-72157632230016328/, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=88146565 による

余り知られてはいませんが、11式短SAMは極めて優秀なシーカーを持ち、個人的にはこのミサイルの存在が地べた事業部がAHを手放す切っ掛けの一つになったと勝手に考えています

そんな状況ですが、近SAMと基地防SAMを統合化することにより 「基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾」 の開発が現在行われており、もしかすると従来の体系に何らかの変化があるかもしれません。今後の展開に期待しましょう。


タグ: SAM AAM-5
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