これは母から聞いた話です。
特にスポーツをやっていた訳ではないが、
子供の頃から農作業を手伝っていた所為か腕っ節は強かった。
その叔父さんが結婚したばかりの頃。
夜中の12時頃になると、
訳の判らない事を口走ったり、自分で自分の首をしめたり、
いきなり高いところへ駆け上り跳び下りようとしたり、
奇行が目立つようになっていた。
しかも不思議なことに、30分ほど経つとピタリとおさまり、
その間にやっていた事は全然覚えていなかった。
そのようなことが1〜2週間続き、
周りで取り押さえる方が疲れ始めた。
また、此のまま放って置くと
本当に自殺するのではないかと心配し、
いろいろな所へあったっていると、
或る親戚の一人が
「良いお祓い屋さんがいる」と、
とあるおばちゃんを連れてきた。
おばちゃんは、
特にこれと云って変わった感じは受けなかったが、
叔父さんを見るなり、
「あんた、呪われているよ。心当たりはないですか?」
と聞いてきた。
叔父さんには心当たりが一つだけあった。
最近結婚した奥さんが以前はやくざの女だった。
(相手は本当のやくざではないし、
情婦と言うほどの付き合いでもなかったらしいが)
それを相手のやくざから強引に別れさせ
(無論、今の奥さんに頼まれて)、
それが切っ掛けのような形で結婚したのだ。
呪いをかけられる相手として浮かんだのは
その男しかないと思ったので、そのおばさんにそう答えた。
するとおばさんは、
「そんな男に大きな力はないと思うから、
きっとお金で雇っているのね。
まあ、任せときなさい。今晩お払いしときますから。
一週間ほどしてからまたきますから、
本当に払えていたらその間なにもないはずですから。
お金はその時に準備して置いてくださいね」
そう言って、
1〜2時間ほど不思議なお祈りをして帰っていった。
その夜からピタリと奇行は無くなり、
家族みんなグッスリ眠れるようになった。
やがて一週間が経ち、そのおばちゃんにお金を払い
(母の話だと、普通の人の月給程度)お礼をした。
母は好奇心が強いので、
そのおばちゃんと世間話をしながらいろいろ聞いてみた。
そして、一番気になっていたことを聞いた。
「相手の人が、呪いをかけ直すと言う事はないんですか?」
「ええ、一週間も経っていれば大丈夫です。
私のは、呪いを払ったんじゃなく、返したんですから。
相手は、私と同じような商売の人。
まあ、私もこんな商売していれば、
畳の上では死ねないと思ってますから」
そう云っておばちゃんはにっこり笑った。
母は「人の笑顔がこんなに怖かったのは初めてだった」
と言っていた。
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