これは、『幽霊』と思われるものに家で遭遇した話。
昔のことになるが、家族で晩ご飯を食べていたら、
勝手口から急に着物姿の物凄い顔をした婆さんが訪ねて来た。
しかも、5〜6歳くらいの小さい男の子も一緒に。
その光景に家族みんなは戦慄して、
婆さんが男の子の手を引いて家に上がって来ても
誰も何も言えなかった。
その後、婆さんが黙ったまま奥の座敷の方に消えていってから、
母が涙目で警察を呼ぼうと騒ぎ始めた。
なので、まずは俺と親父で様子を見てくることにした。
椅子を軍船の衝角のように構えて座敷に向かうと、
そこには婆さんと男の子の姿はなかった。
その代わり、
衣冠を身に着けた平安貴族のような人が
怒った顔で座敷に座っていて、
笏で座敷に祀ってある神棚を指しながら
「次も助けてもらえると思うな!」
と怒鳴ってスーっと消えてしまった。
神棚は亡くなった祖父母が設置したもので、
二人がいなくなってからは
誰も面倒見ずに埃まみれになっていた。
ひょっとしたら、
あの平安貴族のような人は神様で、
俺たちをあの婆さんから守ってくれたのかもしれない。
今では神棚を綺麗にして、
毎日供物も捧げるようにしている。
そのおかげか、それ以降は
幽霊のようなものが現れることはない。
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